機能性月経困難症の原因と症状 | つらい生理痛、どうすれば?

機能性月経困難症とは、子宮や卵巣に病気がないにも関わらず、生理期間中に起こるつらい痛みのことを指します。多くの女性が生理痛に悩んでいますが、特に日常生活に支障をきたすほどの痛みがある場合、月経困難症と診断されることがあります。その中でも、明らかな原因となる病気(子宮内膜症、子宮筋腫など)が見つからないものが機能性月経困難症です。この記事では、機能性月経困難症の詳しい原因や症状、診断方法、そして様々な治療法について解説します。つらい生理痛にお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。

機能性月経困難症とは?

生理痛は多くの女性にとって身近な悩みですが、その痛みの背景にはいくつかの種類があります。機能性月経困難症は、その中でも特に若い世代に多く見られるタイプです。

機能性月経困難症の定義と特徴

機能性月経困難症は、内診や超音波検査などで子宮や卵巣に病気(子宮内膜症や子宮筋腫など)が見つからないにも関わらず、生理期間中に強い下腹部痛や腰痛などの症状が現れる状態を指します。

主な特徴としては以下の点が挙げられます。

  • 好発年齢: 思春期から20代の若い女性に多く見られます。
  • 痛みのピーク: 生理が始まった日かその翌日(生理の1〜2日目)に痛みが最も強くなる傾向があります。
  • 痛みの性状: 周期的な、陣痛のような痛みとして感じることが多いです。
  • 原因: 子宮を収縮させる物質であるプロスタグランジンの分泌量が多いことなどが主な原因と考えられています。
  • 経過: 出産を経験したり、年齢を重ねたりすることで症状が軽快することがあります。

器質性月経困難症との違い

月経困難症は、その原因によって大きく機能性月経困難症器質性月経困難症の2つに分けられます。

項目 機能性月経困難症 器質性月経困難症
原因 子宮や卵巣に明らかな病気がない 子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、骨盤内炎症性疾患などの病気がある
好発年齢 思春期〜20代の若い女性に多い 30代以降に多く見られる
痛みの特徴 生理開始〜1〜2日目がピーク、周期的な痛み 生理前から始まり、生理期間中続き、生理終了後も続くことがある。痛みがだんだん悪化する傾向。
経過 出産や加齢で軽快することがある 原因疾患の進行とともに悪化することが多い
治療 痛み止め、低用量ピル、漢方薬、生活習慣の改善など 原因疾患の治療(手術、薬物療法など)+対症療法

機能性月経困難症は「原因となる病気がない生理痛」、器質性月経困難症は「病気が原因の生理痛」と理解すると分かりやすいでしょう。特に30代以降で生理痛がひどくなったり、生理期間以外の痛みや出血がある場合は、器質性月経困難症の可能性を疑い、早めに婦人科を受診することが重要です。

機能性月経困難症の主な原因

機能性月経困難症の主な原因は、生理中に子宮内で過剰に分泌されるある物質にあると考えられています。

プロスタグランジンの影響

生理中、子宮内膜からは「プロスタグランジン」という生理活性物質が分泌されます。このプロスタグランジンには、子宮を収縮させて剥がれ落ちた子宮内膜を体の外へ押し出す働きがあります。生理中に感じる下腹部痛や腰痛は、この子宮の収縮によって引き起こされるものです。

機能性月経困難症の場合、このプロスタグランジンが過剰に分泌されることが痛みの主な原因と考えられています。プロスタグランジンの量が多いと、子宮が強く収縮しすぎたり、収縮する回数が増えたりするため、痛みが強くなります。また、プロスタグランジンは血管を収縮させる作用もあるため、子宮への血流が悪くなり、痛みをさらに悪化させることもあります。

なぜプロスタグランジンが過剰に分泌されるのかは、個人の体質や、子宮の出口が狭い(特に若い女性)、体の冷え、ストレスなどが影響していると考えられています。特に思春期から20代前半の女性は、まだ子宮が十分に成熟しておらず、子宮の出口が狭い傾向があるため、子宮を収縮させる力がより強く働きやすく、プロスタグランジンも多めに分泌されがちであると言われています。

機能性月経困難症の症状

機能性月経困難症の症状は、単に下腹部痛や腰痛だけにとどまらず、全身に様々な不調を伴うことがあります。

よくある症状の種類

機能性月経困難症で最も一般的に見られる症状は、生理期間中の下腹部痛腰痛です。これらの痛みは、生理が始まった頃から始まり、生理のピークである1日目または2日目に最も強くなり、その後徐々に軽くなっていく傾向があります。痛み方は、ズキズキ、キリキリ、または重だるい感じなど、個人によって異なります。

しかし、機能性月経困難症の症状はこれだけではありません。プロスタグランジンの影響は全身に及ぶため、以下のような様々な症状を伴うことがあります。

  • 消化器系の症状: 吐き気、嘔吐、下痢、便秘
  • 神経系の症状: 頭痛、めまい
  • 精神的な症状: イライラ、憂鬱な気分、不安感
  • その他の症状: 疲労感、倦怠感、むくみ、食欲不振、手足の冷え

これらの症状の組み合わせや程度は個人差が大きく、毎月同じ症状が出る人もいれば、月によって症状が異なる人もいます。

生理痛の重さレベル

生理痛のつらさは、痛みの程度によって大きく異なります。一般的に、日常生活への影響度合いで重さを判断することが多いです。

  • 軽度: 痛みはあるが、市販の痛み止めを飲む必要がない、または飲めば十分に和らぐ程度。日常生活に大きな支障はない。
  • 中等度: 市販の痛み止めを飲んでも痛みが完全に消えない、または痛みが強く、集中力が低下したり、普段通りの活動が難しくなったりする程度。学校や仕事を休むほどではないが、つらいと感じることが多い。
  • 重度: 痛みが非常に強く、市販の痛み止めが全く効かない、またはほとんど効果がない。動くのがつらく、寝込んでしまう。学校や仕事を休まざるを得ない。吐き気や嘔吐などの全身症状も強く出る場合がある。

機能性月経困難症の場合、この中等度から重度の痛みに悩まされることが少なくありません。痛みが重度で日常生活に支障が出ている場合は、我慢せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが非常に重要です。

機能性月経困難症の診断方法

機能性月経困難症と診断するためには、まず器質性月経困難症(病気が原因の生理痛)ではないことを確認する必要があります。

診断のための検査

機能性月経困難症の診断は、主に以下のステップで行われます。

  1. 問診:
    医師が患者さんの症状について詳しく聞き取ります。
    • 生理痛がいつから始まったか
    • 痛みの強さや種類(ズキズキ、重だるいなど)
    • 痛む場所(下腹部、腰など)
    • 痛みの持続期間(生理の前から、生理中だけ、生理後も続くか)
    • 痛みが日常生活(学校、仕事)にどの程度影響しているか
    • 市販薬の効果
    • 月経周期、経血量、不正出血の有無
    • 生理痛以外の症状(吐き気、頭痛、疲労感など)
    • 既往歴やアレルギーの有無
    • 性経験の有無(内診方法に関わるため)
  2. 内診・経腟超音波検査:
    性経験がある場合は、経腟超音波(エコー)検査を行います。性経験がない場合は、お腹の上からの超音波検査や直腸診(お尻からの内診)を行うこともあります。
    この検査の主な目的は、子宮や卵巣に病気がないかを確認することです。子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、卵巣嚢腫などの器質性疾患がないかを詳しく調べます。機能性月経困難症は、これらの明らかな病変が認められない場合に診断されます。
  3. その他の検査(必要に応じて):
    問診や超音波検査の結果、器質性疾患が疑われる場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合は、追加の検査を行うことがあります。
    • 血液検査: 炎症の程度や貧血の有無などを調べる。
    • MRI検査: より詳細な子宮や卵巣の状態、骨盤内の病変を調べる。

これらの検査の結果、器質性疾患が認められず、周期的な強い生理痛の症状がある場合に、機能性月経困難症と診断されます。つまり、機能性月経困難症は「消去法の診断」と言える側面もあります。

機能性月経困難症の治療法

機能性月経困難症の治療の主な目的は、痛みを和らげ、生理期間中の生活の質(QOL)を改善することです。様々な方法があり、症状の程度やライフスタイルに合わせて治療法を選択します。

薬による治療(痛み止め、ピル、漢方薬)

医療機関では、以下のような薬が処方されます。

  • 痛み止め(鎮痛剤):
    プロスタグランジンの生成を抑えることで痛みを和らげる効果があります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がよく使われます。市販薬でも購入できますが、症状が重い場合や、胃腸への負担が心配な場合は、医師から処方される薬の方が効果が高かったり、胃薬と合わせて処方されたりすることがあります。
    痛みがひどくなってから飲むよりも、痛みが始まる前、または痛みが軽いうちに服用する方が、プロスタグランジンが大量に作られるのを抑えられるため、より効果的です。
  • 低用量ピル(LEP製剤):
    機能性月経困難症の最も効果的な治療法の一つと考えられています。低用量の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲスチン)が含まれており、毎日服用することで排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑えます。子宮内膜が厚くならないため、生理の際の剥がれ落ちる子宮内膜の量が減り、それに伴ってプロスタグランジンの分泌量も減少します。これにより、生理痛が軽減されるだけでなく、生理の量も減るため、貧血の改善にもつながることがあります。
    避妊効果も期待できますが、保険診療で処方されるLEP製剤は月経困難症や子宮内膜症の治療を目的としたものです。副作用として、飲み始めに吐き気、頭痛、不正出血などが起こることがありますが、通常は数ヶ月で落ち着きます。また、まれに血栓症のリスクがわずかに上昇することが知られています。医師とよく相談して、自分の体質やリスクを理解した上で服用することが重要です。
  • 漢方薬:
    体のバランスを整え、体質改善を目指すことで生理痛を和らげることを目的とします。効果が現れるまでには時間がかかることがありますが、副作用が比較的少ないというメリットがあります。
    機能性月経困難症によく用いられる漢方薬としては、血行を促進し体を温める効果のある当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や、イライラなどの精神症状を和らげる加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがあります。個人の体質や症状に合わせて処方される漢方薬は異なります。
  • その他のホルモン療法:
    低用量ピル以外にも、黄体ホルモン製剤(ディナゲストなど)やGnRHアゴニスト/アンタゴニスト製剤などが使用されることがありますが、これらは主に子宮内膜症などの器質性疾患の治療に用いられることが多く、機能性月経困難症の第一選択薬となることは少ないです。

日常生活でできるケア

薬物療法と並行して、日常生活でのケアも生理痛の軽減に役立ちます。

  • 体を温める:
    特に下腹部や腰を温めることで、血行が促進され、痛みが和らぎやすくなります。使い捨てカイロをお腹や腰に貼ったり、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったりするのがおすすめです。冷たい飲食物や薄着は避けましょう。
  • 適度な運動やストレッチ:
    生理期間中でない時に、軽い運動やストレッチを習慣にすることで、骨盤内の血行が改善される可能性があります。また、リラックス効果も期待できます。生理期間中は無理のない範囲で過ごしましょう。
  • バランスの取れた食事:
    栄養バランスの偏った食事は、体の不調につながることがあります。特にカルシウムやマグネシウムなどのミネラル、ビタミンB群などを意識して摂るのが良いとされています。カフェインやアルコールは血管を収縮させる可能性があるため、生理痛がひどい時期は控える方が良いかもしれません。
  • ストレスを溜めない工夫:
    ストレスはホルモンバランスや痛みの感じ方に影響を与えることがあります。自分なりのリラックス方法を見つけ、心身の緊張を和らげることが大切です。十分な睡眠時間を確保することも重要です。

これらの日常生活ケアは、薬物療法ほどの即効性はありませんが、継続することで体質改善につながり、痛みの軽減に役立つ可能性があります。

機能性月経困難症になりやすい年齢と経過

機能性月経困難症は、特定の年齢層に多く見られる傾向があります。

好発年齢について

機能性月経困難症は、主に思春期から20代前半の若い女性に多く発症します。

この時期に機能性月経困難症が多い理由としては、いくつかの要因が考えられます。

  • 子宮の発達: 思春期はまだ子宮が十分に成熟しておらず、子宮の出口(子宮頸管)が狭い傾向があります。生理の際に子宮内膜をスムーズに排出するために、子宮がより強く収縮する必要があり、それが強い痛みを引き起こすことがあります。
  • ホルモンバランス: ホルモン分泌が安定しない時期であり、プロスタグランジンが過剰に分泌されやすい体質である場合があります。
  • 子宮後屈: 若い女性に多い子宮の向き(子宮後屈)が、経血の排出を妨げ、痛みを悪化させる可能性も指摘されています。

生理痛は、出産を経験したり、年齢を重ねるにつれて軽くなる人が少なくありません。これは、出産によって子宮頸管が広がり、経血がスムーズに排出されやすくなることや、ホルモンバランスが変化することが関係していると考えられています。

しかし、すべての人に当てはまるわけではありません。逆に、30代以降になってから生理痛が始まった、あるいは今まで軽かった生理痛がだんだんひどくなってきたという場合は、機能性月経困難症ではなく、子宮内膜症や子宮筋腫などの器質性月経困難症の可能性が高くなります。このような場合は、必ず婦人科を受診し、原因を特定するための検査を受けることが重要です。

機能性月経困難症で受診すべき目安

「生理痛くらいで病院に行くのは大げさかな?」とためらってしまう方もいるかもしれません。しかし、日常生活に支障が出ているようなつらい生理痛は、我慢せずに医療機関を受診することが大切です。

どんな症状が出たら受診?

以下のような症状がある場合は、機能性月経困難症を含め、適切な診断と治療のために医療機関を受診することを強くおすすめします。

  • 市販の痛み止めが効かない、または効果が十分に得られない
  • 生理痛がひどく、毎月のように学校や仕事を休まざるを得ない
  • 痛みがだんだんひどくなってきた、または痛みの期間が長くなってきた
  • 生理痛だけでなく、生理期間以外の腹痛や腰痛がある
  • 生理痛と一緒に、不正出血がある
  • 経血量が異常に多い(多い日の昼でも夜用ナプキンが必要、レバーのような塊が出るなど)
  • 性交時に痛みを感じる
  • 30代以降になってから生理痛が始まった、または急にひどくなった
  • 吐き気、嘔吐、めまい、冷や汗など、痛みに伴う全身症状が強い

これらの症状は、単なる生理痛ではなく、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性も示唆しています。早期に発見し、適切な治療を受けることが、症状の改善だけでなく、将来的な妊娠への影響を防ぐためにも重要です。

何科を受診するべき?

つらい生理痛や月経に関する悩みがある場合は、迷わず婦人科を受診しましょう。

婦人科医は、月経困難症の原因を正確に診断し、一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法を提案してくれます。内診や超音波検査など、必要な検査を受けることで、機能性月経困難症なのか、それとも器質性月経困難症なのかを区別することができます。

「若いから」「まだ性経験がないから」といって受診をためらう必要はありません。性経験がない方でも、お腹の上からの超音波検査など、痛みを伴わない方法で診察や検査を受けることができます。生理痛を我慢せず、専門家である婦人科医に相談することが、つらい症状から解放されるための第一歩です。

機能性月経困難症を放置するリスク

「生理痛だから仕方ない」「みんなもこんなものかな」と、つらい痛みを我慢して放置している人も少なくありません。しかし、機能性月経困難症を放置することにはいくつかのリスクが伴います。

まず、最も直接的なリスクは、毎月のつらい痛みを我慢し続けることによる心身への負担です。生理痛があまりにひどいと、集中力が低下し、学業や仕事の効率が悪くなります。趣味や友人との約束をキャンセルしたり、外出をためらったりするなど、日常生活の質(QOL)が著しく低下してしまいます。また、毎月来る生理に対する不安や恐怖心、痛みに耐えることによる精神的なストレスも無視できません。このような状態が長く続くと、心身ともに疲弊してしまいます。

次に、機能性月経困難症の診断は「器質性疾患がないこと」を確認して行われます。しかし、これはあくまで現時点での検査で明らかな病変が見つからなかったということを意味します。痛みを放置している間に、子宮内膜症や子宮筋腫などの器質性疾患が進行してしまうリスクも考えられます。特に、最初は機能性月経困難症だったとしても、時間の経過とともに子宮内膜症などが発症・進行し、痛みの原因が変わることもあります。定期的な婦人科検診や、症状の変化に気づいた時点での受診が、器質性疾患の早期発見につながります。

不妊など妊娠への影響

機能性月経困難症そのものが、直接的な不妊の原因になることはありません。機能性月経困難症は、プロスタグランジンの過剰分泌などが原因であり、排卵機能や受精・着床のメカニズムに直接的な影響を与えるものではないからです。

しかし、機能性月経困難症を放置することで、以下のような間接的な影響が考えられます。

  • QOL低下による妊娠への消極化: 毎月の痛みがひどく、心身ともに疲弊していると、「この状態で妊娠・出産できるのだろうか」「妊娠中もつらいのではないか」といった不安から、将来の妊娠に対して消極的になってしまう可能性があります。
  • 器質性疾患の見落とし: 前述の通り、放置している間に子宮内膜症などの器質性疾患が発症・進行し、これが不妊の原因となることがあります。子宮内膜症は卵管の癒着を引き起こしたり、卵巣にダメージを与えたりすることで、自然妊娠を難しくすることが知られています。

機能性月経困難症に対する適切な治療(特に低用量ピルなど)は、生理痛を和らげるだけでなく、子宮内膜症などの進行を抑える効果も期待できます。痛みをコントロールし、健康な状態で将来の妊娠を迎えられるようにするためにも、つらい生理痛は放置せず、医療機関に相談することが重要です。適切な治療を受けることで、妊娠にネガティブな影響を与えることなく、生理期間を快適に過ごせるようになります。

機能性月経困難症に関するQ&A

機能性月経困難症に関して、よくある質問にお答えします。

「機能性月経困難症」の読み方、英語名は?

「機能性月経困難症」は、「きのうせい げっけい こんなんしょう」と読みます。
英語では、「Primary Dysmenorrhea(プライマリー・ディスメノリーア)」と呼ばれます。「Primary」は「原因となる病気がない」という意味合いを含んでいます。

生理痛が不定期にひどい場合も該当する?

機能性月経困難症は、一般的には毎月の生理期間に、ほぼ周期的に強い痛みが現れる状態を指します。プロスタグランジンの分泌量が多いなどの体質的な要因が背景にあることが多いため、痛みの程度に多少の波はあっても、毎周期つらい痛みがある場合に診断されることが多いです。

ただし、生理痛の程度は、その月の体調、ストレス、冷え、睡眠不足などによって変動することがあります。普段はそれほどひどくないのに、特定の月に体調が悪かったり、強いストレスがあったりした際に、一時的に生理痛がいつもよりひどくなるということは起こりえます。このような場合でも、痛みが強く日常生活に支障が出るようであれば、一度婦人科を受診して相談してみることをお勧めします。器質性疾患がないかを確認するためにも重要です。

温めるとなぜ生理痛が和らぐの?

生理痛の原因の一つであるプロスタグランジンは、子宮の血流を悪くする作用もあります。体が冷えるとさらに血行が悪化し、筋肉の緊張が高まることで痛みが強くなることがあります。お腹や腰を温めることで、血行が促進され、子宮の筋肉の緊張が和らぐため、痛みが軽減される効果が期待できます。

低用量ピルは怖い薬?副作用は?

低用量ピル(LEP)は、生理痛治療において非常に有効な薬ですが、「怖い」「副作用が心配」というイメージを持っている方もいるかもしれません。適切に服用すれば、重篤な副作用が起こる頻度は非常に低いです。

主な副作用としては、飲み始めに吐き気、頭痛、不正出血、乳房の張りなどがありますが、これらの症状は通常2〜3ヶ月で体が慣れて落ち着いてきます。最も注意すべきまれな副作用として血栓症(血管の中に血の塊ができること)がありますが、そのリスクは健康な非妊娠女性においては非常に低く、妊娠中や産褥期の方がはるかにリスクが高いことが知られています。喫煙者や特定の疾患がある方、肥満の方などは血栓症のリスクが高くなるため、服用前に医師が丁寧に問診を行い、リスクを評価します。不安な点は全て医師に相談しましょう。

漢方薬は生理痛に効果がある?

漢方薬は、個人の体質や症状に合わせて処方され、体全体のバランスを整えることで生理痛を和らげることを目指します。プロスタグランジンの生成を直接抑える痛み止めとは作用機序が異なります。効果の発現には時間がかかることがありますが、体質改善によって痛みが軽減される可能性があります。副作用が比較的少ないというメリットもあり、西洋薬と組み合わせて使用されることもあります。

生理痛に良い食べ物・悪い食べ物は?

生理痛に直接的な効果が証明されている特定の食品はありませんが、体を温め、血行を良くする食品や、バランスの取れた食事を心がけることは、間接的に生理痛の緩和につながる可能性があります。

  • 良い可能性のある食品: 生姜、ネギ、ニラなど体を温めるもの。青魚(DHA・EPA)、大豆製品(イソフラボン)、ビタミンEを多く含むナッツ類、マグネシウムやカルシウムを多く含む海藻類や緑黄色野菜。
  • 避けた方が良い可能性のある食品: 体を冷やすもの(冷たい飲み物、アイスなど)。カフェイン(血管を収縮させる可能性)。アルコール(血管を拡張させるが、その後冷えやすくなることも)。香辛料が多いもの(痛みを悪化させる可能性)。

過度に神経質になる必要はありませんが、生理前や生理中は体を冷やさないように気をつけ、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

【まとめ】機能性月経困難症は適切なケアで改善可能

機能性月経困難症は、子宮や卵巣に病気がないにも関わらず、プロスタグランジンなどの影響で起こるつらい生理痛です。特に若い女性に多く見られ、下腹部痛や腰痛だけでなく、吐き気や頭痛、倦怠感など様々な症状を伴い、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

生理痛は「我慢するもの」と思われがちですが、それは誤解です。機能性月経困難症は、痛み止めや低用量ピル、漢方薬など、様々な治療法によって症状を和らげ、QOLを改善することが可能です。また、体を温める、バランスの取れた食事を心がけるといった日常生活でのケアも有効です。

もしあなたが、市販薬が効かないほど痛みがひどい、毎月生理痛で学校や仕事を休んでしまう、痛みがだんだんひどくなってきた、または30代以降で生理痛が始まった・悪化したといった症状に悩んでいるなら、決して一人で抱え込まず、勇気を出して婦人科を受診してください。適切な診断と治療を受けることで、つらい生理痛から解放され、生理期間を快適に過ごせるようになります。

機能性月経困難症は不妊の直接的な原因ではありませんが、背後に隠れた病気を見逃さないためにも、専門家である婦人科医に相談することが、あなたの健康を守る上で非常に大切です。

免責事項: この記事は、機能性月経困難症に関する一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療法については、必ず医師の診察を受け、専門的なアドバイスに従ってください。

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