不妊治療を進める中で、「採卵」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。体外受精や顕微授精において、採卵は非常に重要なステップです。しかし、「どんなことをするの?」「痛みはあるの?」「費用はどれくらい?」といった疑問や不安を抱えている方も少なくないでしょう。
この記事では、不妊治療専門の医師が、採卵の基本的な知識から、具体的な流れ、痛みや費用、知っておくべきリスクまでを分かりやすく解説します。採卵を検討されている方、これから不妊治療を始める方にとって、採卵への理解を深める一助となれば幸いです。
採卵とは?
採卵(さいらん)とは、不妊治療における体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)を行う際に、女性の卵巣から卵子を採取する医療行為のことです。杉山産婦人科の説明によると、採卵は排卵の直前に経腟的に卵巣から卵子を体外に取り出す方法であり、卵子は卵胞という袋に含まれているとされています。これは、体の中で行われる妊娠のプロセスの一部(卵子と精子が出会う部分)を体の外で行うために必要不可欠なステップとなります。
具体的には、超音波ガイド下で膣壁から卵巣に細い針を刺し、成熟した卵胞から卵胞液ごと卵子を吸引する方法が一般的です。採取された卵子は、その日のうちにパートナーの精子、または提供された精子と体外で受精させ、胚(受精卵)へと育てていきます。
採卵は、女性の体にとっては小さな手術にあたります。安全に、かつできるだけ多くの良好な卵子を採取するために、事前の準備や体調管理、そして適切な麻酔管理が重要となります。
不妊治療における採卵の目的
不妊治療において採卵を行う主な目的は、体外で卵子と精子を受精させ、受精卵(胚)を培養することにあります。自然妊娠では、排卵された卵子が卵管内で精子と出会い受精しますが、体外受精や顕微授精では、このプロセスを体外の培養室で行います。
採卵によって得られた卵子は、以下のような目的で使用されます。
- 体外受精(IVF)の実施: シャーレの中で卵子と調整した精子を一緒にし、自然に受精するのを待ちます。
- 顕微授精(ICSI)の実施: 細い針を用いて、一つの精子を卵子の中に直接注入し受精を促します。男性不妊の場合や、過去に体外受精で受精がうまくいかなかった場合などに選択されます。
- 胚の培養: 受精してできた胚を、数日間培養器の中で育てます。分割が進んだ胚(初期胚)や、さらに育った胚盤胞の状態で、子宮に戻す(胚移植)か、凍結保存します。
- 余剰胚の凍結保存: 複数の胚が得られた場合、将来の妊娠に備えて凍結保存しておくことができます。これは、一度の採卵で複数回の移植が可能になり、体への負担や経済的負担を軽減することに繋がります。
- 卵子凍結: 将来の妊娠のために、未受精の卵子を凍結保存する場合にも採卵が行われます。
採卵は、これらの高度な生殖補助医療(ART)のスタート地点となる重要なステップであり、良好な卵子を効率的に採取することが、その後の治療の成功に繋がります。
採卵が必要となるケース
採卵は、体外受精や顕微授精を行う際に必須の手順です。これらの治療法が検討されるのは、主に以下のようなケースです。
- 卵管因子: 卵管が詰まっている、または癒着しているなど、卵子と精子が卵管内で正常に出会えない場合。体外で受精させることでこの問題を回避できます。
- 男性不妊: 精子の数や運動率が低い、精子の形に問題があるなど、精子側の問題で自然妊娠や人工授精が難しい場合。特に顕微授精は、精子の状態が非常に厳しい場合でも受精の可能性を高められます。
- 原因不明不妊: 様々な検査を行っても不妊の原因が特定できない場合。体外受精を行うことで、体内では確認できない卵子と精子の反応や受精・初期胚発生の問題点が見つかることがあります。
- 免疫性不妊: 抗精子抗体があるなど、免疫系の異常が原因で受精が妨げられる場合。
- 子宮内膜症: 子宮内膜症が卵巣や卵管に影響を与え、不妊の原因となっている場合。
- 排卵障害: 排卵誘発剤を用いたタイミング法や人工授精でも妊娠に至らない重度の排卵障害。
- 高年齢: 女性の年齢が高くなるにつれて卵子の質や数が低下するため、体外受精によってより多くの卵子を確保し、良好な胚を選んで移植することで妊娠の可能性を高めることが検討されます。
- 過去の治療で妊娠に至らなかった場合: タイミング法や人工授精など、よりステップの低い治療を複数回行っても妊娠に至らなかった場合、体外受精へのステップアップが検討されます。
- 遺伝子疾患のリスクがある場合: 着床前診断(PGT)を希望する場合、体外受精で得られた胚に対して検査を行うため採卵が必要となります。
これらのケースに当てはまる場合でも、必ずしも体外受精や顕微授精が必要になるわけではありません。医師は患者さんの状況を総合的に判断し、最も適した治療法を提案します。採卵が必要かどうかは、個々の不妊原因、年齢、治療歴、そして患者さんの希望によって慎重に決定されます。
採卵周期の種類(自然周期/刺激周期)
採卵周期には、主に自然周期と刺激周期の2つのアプローチがあります。どちらの方法を選択するかは、患者さんの年齢、卵巣機能、これまでの治療経過、そしてクリニックの方針によって異なります。
自然周期での採卵
自然周期とは、排卵誘発剤の使用を最小限にとどめるか、全く使用せずに、体が本来持っている周期の中で自然に育った主席卵胞(最も大きく育った卵胞)から卵子を1個(まれに複数個)採取する方法です。杉山産婦人科は、自然周期排卵での採卵では基本的に採卵数は1つになると説明しています。
- 特徴:
- 内服薬や注射の使用が非常に少ない、または無い。
- 月に1個の卵子を採取することを目標とする。
- 生理周期に合わせて、超音波検査やホルモン検査で卵胞の成長を頻繁に確認する。
- メリット:
- 体への負担が少ない。
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがほぼない。
- 薬剤費が抑えられるため、費用が比較的安価になる傾向がある。
- 自然に近い状態で採取された卵子であると考えられる。
- デメリット:
- 採れる卵子が少ない(通常1個)。場合によっては卵胞が排卵してしまったり、採卵できても卵子が入っていなかったり(空胞)で、採卵できない・使用できる卵子が得られないリスクがある。
- 複数回の採卵が必要になる可能性が高い。
- 周期あたりの妊娠率は、複数の胚を得られる刺激周期に比べて低くなる傾向がある。
刺激周期での採卵
刺激周期とは、排卵誘発剤(主に注射)を用いて卵巣を刺激し、一度に複数の卵胞を育てて採卵する方法です。杉山産婦人科によると、薬剤で卵巣を刺激する卵巣刺激を行った場合には複数個の卵子が卵巣の中で成長します。多くの卵子を採取することで、より多くの胚を得る可能性を高め、移植に最適な胚を選択しやすくなります。
- 特徴:
- 連日または数日おきに排卵誘発剤の注射を使用する。
- 複数の卵胞を同時に成長させることを目指す。
- 卵胞の成長に合わせて、使用する薬剤の種類や量、注射の間隔を調整する。
- メリット:
- 一度に多くの卵子が得られる可能性が高く、妊娠率向上に繋がる胚を複数確保しやすい。
- 余剰胚を凍結保存できる可能性が高まり、複数回の移植が可能になる。
- 採卵回数を減らせる可能性がある。
- デメリット:
- 体への負担が大きい。
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがある。
- 使用する薬剤の種類や量が多いため、費用が高額になる傾向がある。
刺激周期には、さらに卵巣への刺激の強さに応じて低刺激法と高刺激法に分けられます。
低刺激法
低刺激法は、内服薬(クロミフェンなど)と少量の注射を組み合わせて使用するなど、比較的弱い刺激で数個の卵胞を育てる方法です。自然周期と高刺激法の中間的なアプローチと言えます。
- 特徴:
- 内服薬と注射を併用することが多い。
- 目標とする卵胞数は数個(3~5個程度)。
- 対象:
- 自然周期では卵胞が育ちにくい方。
- 年齢が高めの方や卵巣機能がやや低下している方。
- OHSSのリスクを避けたい方。
- 高刺激法に抵抗がある方。
- メリット:
- 高刺激法より体への負担やOHSSのリスクが少ない。
- 自然周期よりは多くの卵子が得られる可能性がある。
- 費用も高刺激法よりは抑えられる場合がある。
- デメリット:
- 採れる卵子数は高刺激法より少ない。
- 得られる胚の数が少なくなる可能性がある。
高刺激法
高刺激法は、FSH製剤やhMG製剤などの注射を連日使用し、多くの卵胞を積極的に育てる方法です。ロング法、ショート法、アンタゴニスト法など、薬剤の種類や使用方法によっていくつかの方法があります。
- 特徴:
- 強力な排卵誘発剤注射を連日使用する。
- 多くの卵胞(10個以上など)を育てることを目指す。
- 対象:
- 比較的年齢が若く、卵巣機能が良い方。
- 一度に多くの卵子を確保し、複数回の移植に備えたい方。
- メリット:
- 多くの卵子・胚が得られる可能性が高く、周期あたりの妊娠率が上がりやすい。
- 複数回の移植が可能になる余剰胚を確保しやすい。
- デメリット:
- 体への負担が大きい。
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高い。
- 費用が高額になる傾向がある。
- ホルモンバランスへの影響が大きい。
【採卵周期の種類 比較表】
項目 | 自然周期 | 低刺激法 | 高刺激法 |
---|---|---|---|
排卵誘発 | 最小限または使用しない | 内服薬+少量注射 | 注射を連日・多量に使用 |
目標卵子数 | 1個 | 数個(3~5個程度) | 多数(10個以上など) |
体への負担 | 少ない | 少ない~中程度 | 大きい |
OHSSリスク | ほぼない | 低い | 高い |
費用 | 比較的安価 | 中程度 | 高額になる傾向 |
周期あたりの 妊娠率 |
低い傾向 | 中程度 | 高い傾向(良好胚を確保しやすい) |
余剰胚凍結 | 難しい | 可能性は低い~中程度 | 可能性が高い |
主な対象 | 体への負担を抑えたい、OHSSリスクを避けたい方 | 自然周期で育ちにくい、卵巣機能がやや低下の方 | 若く卵巣機能良好で多く胚を確保したい方 |
どの方法を選択するかは、医師とよく相談し、ご自身の体の状態や希望に合った方法を決めることが大切です。
採卵までの準備と流れ
採卵が決まってから採卵当日までの流れは、選択した周期(自然周期か刺激周期か)やクリニックによって多少異なりますが、基本的なステップは共通しています。ここでは一般的な流れを説明します。
採卵に向けた診察と検査
採卵周期が始まると(通常は生理が始まって数日以内)、定期的な診察が始まります。主な診察・検査内容は以下の通りです。
- 超音波(エコー)検査: 経腟超音波を用いて、卵胞の大きさや数、子宮内膜の厚さなどを確認します。卵胞の成長具合が、今後の排卵誘発や採卵日決定の重要な判断材料となります。
- ホルモン検査: 血液検査で、エストロゲン(E2)、黄体形成ホルモン(LH)、プロゲステロン(P4)などのホルモン値を測定します。これらの値から、卵胞の成熟度やホルモンバランスの状態を把握します。
- 内診: 必要に応じて、子宮や卵巣の状態を医師が直接確認します。
これらの診察や検査は、卵胞が十分に育つまで、数日おきに繰り返し行われます。
排卵誘発の方法と薬剤
刺激周期の場合は、これらの診察結果に基づいて、排卵誘発剤の種類や量が調整されます。
- 注射薬: FSH製剤(卵胞刺激ホルモン)、hMG製剤(ヒト閉経期ゴナドトロピン)などが主に使用されます。これらを連日または数日おきに自己注射または通院して打ちます。卵胞を複数育てるのが目的です。
- 内服薬: クロミフェン(クロミッドなど)、レトロゾール(フェマーラなど)などが使用されることもあります。これらの薬剤も卵胞の成長を助けます。
- 排卵を抑える薬: 卵胞が十分に育つ前に自然に排卵してしまうのを防ぐために、GnRHアゴニスト(スプレキュア、ナサニールなど点鼻薬や注射)やGnRHアンタゴニスト(セトロタイド、ガニレストなど注射)が使用されることがあります。
これらの薬剤は、卵胞の数や大きさが目標に達するまで使用されます。医師は超音波検査やホルモン値を見ながら、薬剤の量やタイミングを細かく指示します。
採卵日の決定プロセス
卵胞が十分に成熟したと判断されたら、いよいよ採卵日が決定されます。採卵日決定には、最終的な卵子の成熟を促す注射(トリガー注射)が重要な役割を果たします。
- トリガー注射: 卵胞が十分に大きくなり、ホルモン値も適切になった段階で、hCG製剤(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やGnRHアゴニスト製剤などのトリガー注射を特定の時間に打つよう指示されます。この注射は、卵胞の中の卵子が最終的に成熟し、採卵に適した状態になるよう促すものです。
- 採卵日時: トリガー注射を打ってから、通常34~36時間後に採卵が行われます。この時間が厳密に決められているため、トリガー注射を打つ時間も非常に重要です。例えば、採卵日が午前9時であれば、その36時間前の前々日の夜9時にトリガー注射を打つ、といった具体的な指示が出されます。
トリガー注射を打った後は、自己排卵を防ぐため、入浴や激しい運動は控えるよう指示されることがあります。採卵日が決定すると、当日の注意事項(絶飲食など)についての説明も受けます。
採卵当日の流れと手術方法
採卵当日は、クリニックの指示に従って来院し、採卵手術を受けます。手術そのものは比較的短時間で終わりますが、その前後の準備やリカバリーを含めると、半日程度かかることが一般的です。
採卵前の準備と注意点
- 絶飲食: 採卵手術では麻酔を使用することが多いため、通常は手術の数時間前から絶飲食となります。具体的な時間はクリニックからの指示に従ってください。水分(水やお茶)も制限されます。
- 服装: 脱ぎ着しやすい服装で来院します。アクセサリー類は外し、お化粧やマニキュア・ペディキュアも避けるよう指示されることがあります。
- 体調チェック: 来院後、体温や血圧測定など、体調の最終確認が行われます。
- 同意書: 採卵手術や体外受精・顕微授精に関する同意書を提出します。
- 排尿: 手術前にトイレを済ませておきます。
採卵手術(経腟超音波ガイド下採卵術)
採卵手術は、ほとんどの場合、経腟超音波ガイド下採卵術という方法で行われます。
- 手術室へ移動: 手術着に着替えて、手術室に入ります。
- 体位: 内診台と同じような体位(仰向けで足を広げた状態)になります。
- 麻酔: 選択した麻酔の種類に応じて麻酔が行われます(詳細は後述)。
- 消毒: 膣内や外陰部を消毒します。
- 超音波プローブ挿入: 経腟超音波プローブを膣内に挿入し、卵巣の位置や卵胞を確認します。
- 採卵針の穿刺: 超音波画像を見ながら、プローブに取り付けられた細い採卵針を膣壁から穿刺し、卵巣内の成熟した卵胞に到達させます。
- 卵胞液の吸引: 卵胞に針が到達したら、吸引器を使って卵胞液を吸い取ります。卵子は通常、この卵胞液の中に含まれています。
- 確認: 一つ一つの卵胞から卵胞液を吸引していきます。成熟した卵胞が多い場合は、複数の穿刺が必要になります。
- 終了: 全ての目標卵胞から卵胞液を吸引したら、針を抜き、手術は終了です。
吸引された卵胞液は、すぐに培養室に運ばれ、培養士によって卵子が含まれているか確認されます。手術時間は、採卵する卵胞の数によって異なりますが、一般的に10分から30分程度です。
採卵後のリカバリー
手術終了後は、回復室に移動してしばらく安静にします。
- 安静: 麻酔の影響や体への負担を考慮し、ベッドで安静にします。時間は麻酔の種類やクリニックの方針によりますが、1〜数時間程度です。
- 体調観察: 看護師が血圧測定や気分不快がないかなど、体調を観察します。
- 食事・水分: 麻酔からの回復や、体調が落ち着いていれば、飲食が可能になります。
- 採卵結果の説明: 医師または培養士から、採卵できた卵子の数や状態について説明を受けます。
- 帰宅: 体調に問題がなければ、着替えて帰宅となります。麻酔の影響が残っている可能性があるため、自分で運転して帰宅することは避け、付き添いの方と一緒に帰るか、公共交通機関を利用することをおすすめします。
採卵当日は、無理をせず自宅で安静に過ごすことが大切です。
採卵の痛みと麻酔について
「採卵は痛い?」と不安に感じる方は多いでしょう。採卵時の痛みの感じ方には個人差が大きく、使用する麻酔の種類によっても異なります。
採卵時の痛みの感じ方
採卵は針を卵巣に刺す医療行為のため、全く痛くないわけではありません。しかし、多くのクリニックでは麻酔を使用するため、強い痛みを感じることは少ないです。
痛みの感じ方は、以下のような要因に影響されます。
- 卵胞の数: 採卵する卵胞が多いほど、針を刺す回数が増えるため、痛みをより感じやすくなる可能性があります。
- 卵巣の位置: 卵巣の位置や、卵胞がある位置によっては、針が届きにくく、多少痛みが強くなる場合があります。
- 医師の技量: 医師の経験や技量によって、スムーズに針が進み、痛みが軽減されることがあります。
- 麻酔の種類: どのような麻酔を使用するかが、痛みの感じ方に最も大きく影響します。
- 痛みの感じやすさ: 個人の痛覚や不安感によっても感じ方が異なります。
麻酔を使用した場合でも、全くの無痛というわけではなく、「生理痛のような鈍痛」「お腹の張り感」「チクチクする感じ」などを術後に感じることがあります。
採卵で用いられる麻酔の種類
採卵で用いられる麻酔にはいくつか種類があり、クリニックの方針や患者さんの希望、採卵する卵胞の数などによって選択されます。
【採卵で用いられる麻酔の種類 比較表】
麻酔の種類 | 特徴 | 痛みの感じ方 | メリット | デメリット | 一般的な使用頻度 |
---|---|---|---|---|---|
局所麻酔 | 膣壁などに麻酔薬を注射する。意識はある。 | 麻酔部位以外は痛みを感じる可能性あり | 体への負担が少ない。麻酔からの回復が早い。費用が抑えられる場合がある。 | 痛みを完全に抑えられない場合がある(特に卵胞が多い場合や卵巣の位置が悪い場合)。 | クリニックによる |
静脈麻酔 | 点滴から麻酔薬を投与。眠ったような状態(意識が薄れる)になる。 | ほとんど痛みを感じない | 痛みや不安を感じることなく手術を受けられる。 | 麻酔からの覚醒に時間がかかることがある。意識が朦朧とすることがある。呼吸や循環への影響の可能性がある(まれ)。術後の吐き気など。 | 最も一般的 |
全身麻酔 | 吸入麻酔薬などを使用し、完全に意識を消失させる。人工呼吸管理が必要。 | 全く痛みを感じない | 全く痛みを感じることなく手術を受けられる。 | 体への負担が大きい。麻酔からの回復に時間がかかる。専門の麻酔科医が必要。呼吸や循環への影響のリスクが高い。 | 非常にまれ |
局所麻酔
卵巣周辺の膣壁などに麻酔薬を注射し、採卵針が通過する部分の痛みを和らげる方法です。意識はありますが、痛みを感じにくくします。卵胞数が少ない場合や、痛みに比較的強い方、全身麻酔や静脈麻酔を避けたい場合に選択されることがあります。
静脈麻酔
点滴から麻酔薬を投与し、手術中はウトウト眠ったような状態になる麻酔です。痛みをほとんど感じることなく手術を受けられるため、多くのクリニックで採用されています。採卵中に意識がないため、不安や恐怖心を感じにくいというメリットもあります。手術後、麻酔が覚めるまで回復室で安静にする必要があります。
全身麻酔
完全に意識を消失させ、痛み刺激を全く感じなくする方法です。採卵では一般的ではなく、非常に痛みに敏感な方、静脈麻酔が使用できない場合、または特別な手術が必要な場合にのみ検討されることがあります。専門の麻酔科医による管理が必要となります。
どの麻酔方法が適しているかは、医師とよく相談し、ご自身の痛みの感じ方や体質、卵胞数などを考慮して決定することが大切です。痛みが不安な場合は、遠慮なく医師に相談しましょう。
採卵数と成功率の関係
採卵できた卵子の数は、その後の体外受精・顕微授精の成功率に影響を与える要素の一つです。
平均的な採卵数
一度の採卵で採取できる卵子の数は、個人の年齢、卵巣機能、そして選択した採卵周期の種類(自然周期か刺激周期か)によって大きく異なります。
- 自然周期: 通常1個
- 低刺激法: 数個(3~5個程度)
- 高刺激法: 10個以上になることも珍しくありません。
ただし、同じ刺激方法を用いても、卵巣機能が良い方(例えば若い方)はより多くの卵子が採れる傾向にありますし、年齢が高くなるにつれて採卵数は少なくなる傾向があります。
採卵数と妊娠率
一般的に、採卵数が一定数以上多いほど、その周期の体外受精・顕微授精による妊娠率は高くなる傾向があります。これは、以下の理由によります。
- 良好な卵子・胚を得られる可能性が高まる: 複数の卵子が採れることで、その中から受精能力の高い卵子、そして正常に分割・成長する良好な胚が得られる可能性が高まります。全ての卵子が成熟しているわけではなく、また全ての受精卵が良好な胚盤胞になるわけではないため、母数が多い方が最終的に移植や凍結に適した胚を得やすくなります。
- 複数の移植の機会が得られる: 多くの胚が得られれば、一度の採卵で複数回の胚移植が可能になります。一度目の移植で妊娠に至らなくても、凍結保存した胚を移植することで、再度採卵の体力的・経済的負担なしに妊娠を目指すことができます。
- 胚の選択肢が増える: 得られた複数の胚の中から、形態や発育スピードなど、基準を満たした最も良好な胚を選んで移植することで、着床率や妊娠率の向上が期待できます。
しかし、「数が多いほど良い」と単純に言えるわけではありません。重要なのは卵子の質です。数が少なくても質の良い卵子が得られれば、十分に妊娠の可能性はあります。また、高刺激で無理に多くの卵子を採ろうとすると、卵子の質が低下したり、OHSSのリスクが高まったりすることもあります。
最適な採卵数は、個々の患者さんの状況や治療方針によって異なります。医師は、患者さんの年齢や卵巣機能などを考慮し、最も効率的かつ安全に妊娠を目指せるような採卵方法を提案します。
採卵にかかる費用と助成制度
不妊治療、特に体外受精・顕微授精は保険適用されるようになりましたが、それでも費用はかかるため、事前に目安を知っておくことは重要です。
採卵費用の目安と内訳
採卵にかかる費用は、選択した採卵周期の種類(自然周期か刺激周期か)、採卵数、使用する麻酔の種類、そして個別の医療機関によって大きく異なります。
費用の主な内訳は以下の通りです。
- 診察・検査費: 採卵周期中の超音波検査やホルモン検査などの費用。
- 薬剤費: 排卵誘発剤(注射、内服薬)や排卵を抑える薬、トリガー注射などの費用。刺激周期(特に高刺激法)では薬剤費が高額になる傾向があります。
- 採卵手術費: 採卵手術そのものにかかる費用。麻酔の種類によっても変動します(静脈麻酔の方が局所麻酔より高くなることが多い)。
- 培養費: 採取した卵子を培養し、受精させるための費用。体外受精(IVF)か顕微授精(ICSI)かによって費用が異なります(ICSIの方が高額)。
- その他: 必要に応じて、採卵周期中の自己注射指導料、術後の薬剤費などがかかる場合があります。
【採卵・受精・培養にかかる費用目安(保険適用3割負担の場合)】
項目 | 費用目安(3割負担) | 備考 |
---|---|---|
排卵誘発(注射) | 数千円~数万円(使用量による) | 刺激周期の場合。自然周期や低刺激では安価。 |
超音波検査 | 数千円/回 | 周期中に複数回実施 |
ホルモン検査 | 数千円/回 | 周期中に複数回実施 |
採卵手術 | 2万円~4万円程度(卵子数による) | 手術内容による。麻酔代は別途または含む。 |
静脈麻酔 | 1万円~2万円程度(施設による) | 局所麻酔の場合は安価。 |
体外受精(IVF) | 1万円~2万円程度(卵子数による) | 顕微授精(ICSI)は高額。 |
顕微授精(ICSI) | 2万円~4万円程度(卵子数による) | 体外受精(IVF)より高額。 |
胚盤胞培養加算 | 1万円~2万円程度 | 胚盤胞まで培養した場合の加算。 |
合計(採卵周期) | 保険適用で10万円~30万円程度 | 刺激方法、採卵数、施設により変動。培養費含む。 |
※上記はあくまで目安です。個人の状況や治療内容、医療機関によって実際の費用は異なります。
※自由診療の場合は、上記の保険点数に基づかないため、施設ごとに大きく料金が異なります。
2022年4月より不妊治療の多くが保険適用となりました。これにより、治療にかかる費用負担は以前より軽減されています。ただし、保険適用には年齢や回数に制限がある場合があります。
不妊治療(採卵含む)に関する公的助成
不妊治療は保険適用となりましたが、治療内容によっては高額になる場合もあります。その際に利用できる可能性がある公的制度として、高額療養費制度があります。
- 高額療養費制度: 同月(1日から月末まで)にかかった医療費が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。不妊治療の保険診療分も対象となります。事前に「限度額適用認定証」を申請しておくと、医療機関での支払いが自己負担限度額までで済むため便利です。
また、過去には国の特定不妊治療費助成事業がありましたが、保険適用に伴い原則として廃止されました。しかし、一部の自治体では、独自の助成制度を設けている場合があります。お住まいの自治体のホームページなどで最新の情報を確認してみることをおすすめします。
費用については、治療開始前にクリニックの相談員や医師としっかり確認し、治療計画と合わせてシミュレーションしてもらうことが大切です。
採卵後の過ごし方と注意点
採卵手術後は、体の回復に努めることが大切です。術後の体調変化には個人差がありますが、一般的に注意すべき点や起こりうる症状について説明します。
採卵後の安静と日常生活
- 採卵当日: 採卵当日は、麻酔の影響や手術による体への負担があるため、自宅で安静に過ごすことが最も重要です。激しい運動や長時間の外出、飲酒は避けましょう。シャワーは可能ですが、湯船での入浴は感染予防のため、翌日以降にするよう指示されることが多いです。
- 採卵翌日以降: 体調が良ければ、デスクワークなど軽い仕事であれば再開できる方もいますが、体の状態に合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。腹痛や張り感がある場合は、引き続き安静を心がけましょう。激しい運動や重労働は、体調が完全に回復するまで避けるべきです。
採卵後に起こりうる症状
採卵後、以下のような症状が現れることがあります。多くは一時的なものですが、症状が強い場合や長引く場合はクリニックに連絡しましょう。
- 腹痛: 採卵針を刺した部分や卵巣に、生理痛のような鈍痛やチクチクとした痛みを感じることがあります。通常は数時間から数日でおさまります。必要に応じて、処方された鎮痛剤を服用します。
- 出血: 採卵針を刺した膣壁から、少量の出血がみられることがあります。ナプキンで対応できる程度であれば心配ないことが多いですが、生理2日目以上の量の出血や、塊を伴う出血が見られる場合はすぐにクリニックに連絡してください。
- 腹部膨満感: 卵巣が腫れたり、卵胞液が周囲に溜まったりすることで、お腹の張りや重い感じ、お腹がポコっと出たような感じがすることがあります。特に採卵数が多かった場合に起こりやすいです。
- 吐き気: 麻酔の影響で、一時的に吐き気を感じることがあります。
- だるさ: 手術や麻酔による疲労感で、体がだるく感じることがあります。
これらの症状は多くの場合、数日程度でおさまります。しかし、症状が改善しない場合や、後述するOHSSの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡し、指示を仰ぐことが重要です。
採卵のリスクと合併症
採卵は比較的安全に行われる医療行為ですが、他の手術と同様に、まれにリスクや合併症が起こる可能性があります。主なものを知っておくことは、万が一の際に慌てず対処するために大切です。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
卵巣過剰刺激症候群(OHSS:Ovarian Hyperstimulation Syndrome)は、排卵誘発剤、特にゴナドトロピン製剤を用いた刺激周期で起こりうる最も注意が必要な合併症です。原メディカルクリニックの解説によると、OHSSは排卵誘発剤の使用により卵巣が過剰反応を引き起こし、卵巣が腫大するとともに、おなかに水がたまったり、腹痛や吐き気・呼吸不全となることもあります。
- 原因: 排卵誘発によって卵胞が過剰に発育し、卵巣が腫れ上がってしまうことで起こります。採卵数が多かった場合や、痩せ型の方、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方でリスクが高いとされています。
- 症状: 卵巣が腫れるだけでなく、血管から水分が漏れ出しやすくなり、お腹や胸に水が溜まったり(腹水、胸水)、血液が濃縮されたりします。軽症から重症まであり、主な症状は以下の通りです。
- 軽症: 腹部膨満感、軽い腹痛。
- 中等症: 腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、体重増加、腹部膨満感の増強。
- 重症: 強い腹痛、強い吐き気・嘔吐、呼吸困難、尿量減少、血栓症(血管の中に血の塊ができる)のリスク上昇。重症の場合は入院が必要になることもあります。
- 発症時期: 原メディカルクリニックによると、採卵翌日から5日後に見られることが多いです。妊娠した場合は妊娠初期にかけて症状が悪化することがあります。
- 予防と対策: 近年では、OHSSを予防するための薬剤(GnRHアゴニストによるトリガーなど)が使用されたり、誘発方法が工夫されたりしています。OHSSのリスクが高いと判断された場合は、採卵周期での胚移植を見送り、全ての胚を凍結保存し、別の周期に移植する(全胚凍結)ことで、OHSSの発症や悪化を防ぐことが可能です。
- 治療: 原メディカルクリニックの解説によると、OHSSになった場合、多くのケースでは特に治療は必要なく経過観察となります。しかし、中等症以上の場合は、点滴や利尿剤、腹水穿刺など、症状に応じた治療が行われます。
OHSSは、適切に管理すればほとんどの場合回復しますが、重症化すると命に関わる可能性もゼロではありません。採卵後、お腹の張りや痛みが強い、体重が急に増えた、尿量が減った、息苦しさを感じるなどの症状が現れた場合は、すぐに医療機関に連絡しましょう。
その他のリスク(出血、感染など)
OHSS以外に、採卵に伴って起こりうるその他のリスクや合併症は以下の通りですが、いずれも発生頻度は非常に低いとされています。
- 出血: 採卵針を刺した際に、卵巣や周囲の血管を傷つけて出血することがあります。少量であれば自然に止まりますが、まれに腹腔内出血など、止血処置が必要な量の出血が起こることがあります。
- 感染: 採卵針が通過する経路や卵巣に細菌が入り込み、骨盤腹膜炎などの感染症を引き起こすことがあります。これも非常にまれなケースです。
- 臓器損傷: 採卵針が卵巣だけでなく、膀胱や腸などの周囲の臓器を誤って傷つけてしまう可能性があります。これも非常にまれな合併症です。
- 麻酔によるリスク: 麻酔の種類(特に静脈麻酔や全身麻酔)によっては、アレルギー反応や呼吸・循環抑制などのリスクが伴います。麻酔医や担当医が、事前に体質や既往歴を確認し、安全に配慮して行いますが、ゼロではありません。
これらのリスクは、高度な医療技術と衛生管理のもと、細心の注意を払って行われるため、非常に低い確率でしか起こりません。しかし、術後に気になる症状が現れた場合は、自己判断せず速やかに医療機関に相談することが大切ですし、原メディカルクリニックは不妊治療におけるリスクについて詳しく解説しています。
採卵に関するよくある質問
採卵に関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
採卵後の出血は大丈夫?
採卵後の少量の出血は、針を刺した膣壁や卵巣からのものであり、通常は心配ありません。茶色っぽいオリモノのような出血が数日続くこともあります。しかし、生理2日目以上の量の鮮血が出る場合、塊を伴う場合、または強い腹痛を伴う場合は、異常な出血の可能性もあるため、すぐにクリニックに連絡して指示を仰いでください。
採卵後のお風呂は?
多くのクリニックでは、採卵当日はシャワーのみを推奨しています。湯船での入浴は、お湯を介して細菌が膣内に入る可能性があり、感染リスクを避けるためです。翌日以降の入浴については、体の状態やクリニックの方針によって異なりますので、医師や看護師に確認してください。通常は、出血がほとんどなく、体調が落ち着いていれば翌日から湯船に浸かることも可能になる場合が多いです。
採卵後の食事は?
採卵後の食事に特別な制限はありません。通常通り、バランスの取れた食事を心がけてください。ただし、麻酔を使用した場合は、術後しばらくは吐き気を感じることがあるため、消化の良いものから少しずつ食べ始めると良いでしょう。また、OHSS予防のために、水分をしっかり摂ることや、高タンパク質の食事を意識することを推奨される場合もあります。
採卵後いつから仕事復帰できる?
仕事復帰のタイミングは、個人の体の状態や仕事内容、そして麻酔の種類によって大きく異なります。
- 採卵当日: 麻酔を使用した場合、麻酔の影響が残っているため、基本的には終日自宅で安静に過ごす必要があります。仕事は休むのが一般的です。
- 採卵翌日以降: デスクワークなど、体への負担が少ない仕事であれば、翌日から復帰できる方も多いです。しかし、腹痛や張り感がある場合は、無理せず数日間休むか、時短勤務や在宅勤務などを検討しましょう。体力仕事や重労働は、完全に体調が回復するまで避けるべきです。
採卵前に、いつ頃から仕事復帰したいか医師に相談し、ご自身の体調と相談しながら無理のない計画を立てることが大切です。
採卵の年齢制限はある?
国が定めた明確な採卵の年齢制限はありません。しかし、女性の年齢が高くなるにつれて卵子の数や質が低下するため、体外受精・顕微授精による妊娠率も低下する傾向にあります。
多くのクリニックでは、43歳前後を目安に、治療成績などを考慮して推奨しない場合があります。これは、妊娠率が著しく低下したり、流産率や児の染色体異常のリスクが上昇したりするためです。ただし、個人の卵巣機能や体調は様々ですので、まずは専門の医療機関で相談し、検査を受けてみることが重要です。年齢に関わらず、治療のメリット・デメリット、そしてご自身の体の状態を理解した上で、治療を進めるかどうかの判断をすることが大切です。
ED治療薬・漢方・精力剤の違いは?
それぞれの違いは、以下の通りです。
- ED治療薬: 医師の処方が必要な医薬品で、勃起不全の原因である血流の問題に直接作用し、勃起を助けます。効果は一時的ですが、性行為に十分な勃起を得ることを目的とします。
- 漢方: 生薬を組み合わせて作られたもので、体のバランスを整えることで、勃起力の改善を目指します。即効性は期待しにくいですが、体質改善や滋養強壮を目的として用いられることがあります。医薬品として扱われる場合も、サプリメントとして扱われる場合もあります。
- 精力剤: サプリメントや清涼飲料水などに分類されることが多く、疲労回復や一時的な活力向上を目的とするものです。医薬品ではないため、ED治療薬のような直接的な勃起改善効果は期待できません。
1日2回飲んでもいい?
ED治療薬であるシアリスの服用に関する質問です。シアリスを含む多くのED治療薬は、決められた用法・用量を守ることが非常に重要です。通常、シアリスは1日1回の服用が原則であり、次の服用までには24時間以上の間隔を空ける必要があります。自己判断で服用量を増やしたり、服用回数を増やしたりしても、効果が増強されるわけではなく、むしろ副作用のリスクが高まる可能性があります。必ず医師の指示に従って服用してください。
飲んでも勃起しない原因は?
ED治療薬を服用しても勃起しない場合、いくつかの原因が考えられます。まず、ED治療薬はあくまで性的な興奮があって初めて効果を発揮します。薬を飲むだけで自動的に勃起するわけではありません。性的な刺激やムードがないと、十分な効果が得られないことがあります。また、心因性ED(精神的な要因によるED)の場合、薬の効果が出にくいことがあります。さらに、服用方法の間違い(食事の影響など)、薬の用量が合っていない、またはEDの原因が薬で改善しにくい病気(神経障害など)によるものである可能性も考えられます。繰り返し効果が得られない場合は、必ず医師に相談しましょう。
シアリスは心臓に負担をかける?
シアリス(タダラフィル)は血管を拡張させる作用がありますが、健康な人が適切な用法・用量を守って服用する場合、心臓に過度な負担をかけることはほとんどありません。むしろ、性行為自体が運動であり、心臓に負荷がかかります。ただし、心臓病や血管系の疾患がある方、特定の薬剤(硝酸剤など)を服用している方は、シアリスの服用によって血圧が急激に低下し、心臓に負担がかかるリスクがあります。そのため、心臓に持病がある方や服用中の薬がある方は、必ず医師に相談し、服用可能かどうか判断してもらう必要があります。
筋肉増強効果が期待できる?
シアリスの有効成分であるタダラフィルには、血管拡張作用により全身の血流を改善する効果があります。この血流改善作用によって、筋肉への栄養供給や疲労物質の排出が促進される可能性が示唆されており、一部では筋肉増強やパフォーマンス向上に繋がるのではないかという議論があります。しかし、これは主に研究段階の知見であり、シアリスが筋肉増強剤として正式に承認されているわけではありません。また、筋肉増強を目的としてED治療薬を服用することは、本来の目的外使用であり、リスクも伴います。筋肉増強を目指す場合は、適切なトレーニングと栄養摂取が基本であり、必要な場合は専門家(医師やトレーナー)に相談すべきです。
まとめ:採卵への理解を深めるために
採卵は、体外受精や顕微授精といった高度な不妊治療の重要なステップです。杉山産婦人科で解説されているように、採卵は排卵の直前に経腟的に卵巣から卵子を体外に取り出す方法です。卵巣から卵子を採取するという医療行為であり、痛みやリスクが全くないわけではありませんが、適切な麻酔や医療管理のもとで行われることで、安全に実施されています。
採卵周期には、自然周期、低刺激法、高刺激法といった種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。どの方法を選択するかは、患者さんの年齢、卵巣機能、体質、治療歴などを総合的に考慮し、医師と十分に話し合って決定することが重要です。
採卵当日の流れや術後の過ごし方、起こりうる症状やリスク(特にOHSS)についても事前に理解しておくことで、不安を軽減し、落ち着いて治療に臨むことができます。原メディカルクリニックも不妊治療のリスクについて解説しています。費用に関しても、保険適用や高額療養費制度などを活用できる可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
不妊治療は、心身ともに負担がかかる場合があります。採卵に関しても、疑問や不安があれば、どんな小さなことでも構いませんので、遠慮なく医師や医療スタッフに相談してください。正確な情報を得て、採卵への理解を深めることが、前向きに治療を進める第一歩となります。
本記事が、採卵について知りたいと考えている皆様の一助となれば幸いです。
免責事項:
本記事は、不妊治療における採卵に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや特定の治療法の推奨を行うものではありません。個々の症状や体質によって最適な治療法は異なります。治療方針の決定にあたっては、必ず不妊治療を専門とする医療機関を受診し、医師と十分に相談してください。本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、執筆者および公開者は一切の責任を負いかねます。
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