HPV検査は、子宮頸がんの原因の多くを占めるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しているかどうかを調べる検査です。このウイルスは性交渉によって感染することが知られており、多くの人が一生に一度は感染すると言われています。しかし、感染しても多くの場合ウイルスは自然に排除されます。ごく一部の人で感染が長期間続き(持続感染)、前がん病変を経て子宮頸がんへと進行する可能性があります。HPV検査は、この持続感染のリスクを早期に発見し、子宮頸がんを予防するために非常に重要な役割を果たします。ご自身の健康を守るために、HPV検査について正しく理解し、適切なタイミングで受診することを検討しましょう。この記事では、HPV検査の必要性、方法、費用、結果の見方、受ける場所など、あなたの疑問に徹底的にお答えします。
HPV検査とはどのような検査か?
HPV検査は、子宮頸がんの主要な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しているかどうかを確認するための検査です。細胞診と組み合わせて行われることが多く、子宮頸がん検診の一環として広く実施されています。この検査の目的は、将来子宮頸がんになるリスクが高い状態(HPVの持続感染)を早期に発見することにあります。
HPV(ヒトパピローマウイルス)について
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、皮膚や粘膜に感染するウイルスで、現在までに200種類以上のタイプが見つかっています。このうち、性器に感染するタイプは約40種類あり、さらに子宮頸がんの原因となりやすい「ハイリスク型HPV」と、尖圭コンジローマなどの良性疾患の原因となりやすい「ローリスク型HPV」に分類されます。
子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVは、主に性交渉によって感染します。最も一般的なのは16型と18型で、これらだけで子宮頸がんの約60〜70%を占めると言われています。その他のハイリスク型HPV(52型、58型など)も子宮頸がんの原因となります。
HPVに感染しても、ほとんどの場合は自覚症状がなく、数ヶ月から2年以内に自然に排除されます。しかし、一部の人ではウイルスが排除されずに体内に長く留まる「持続感染」の状態になります。この持続感染が、数年から十数年かけて子宮頸部の細胞に異常(前がん病変)を引き起こし、最終的に子宮頸がんへと進行する可能性があります。
HPV検査は、このハイリスク型HPVの持続感染があるかどうかを調べることで、子宮頸がんになるリスクを評価するために行われます。
HPV検査の目的と子宮頸がんの関係
HPV検査の最大の目的は、子宮頸がんの前がん病変やがんそのものを早期に発見することではなく、子宮頸がんになるリスクが高い状態(ハイリスク型HPVの持続感染)を早期に把握することです。
子宮頸がんは、前がん病変の段階を経てゆっくりと進行することが多いがんです。この前がん病変の段階で見つけることができれば、比較的簡単な治療で治癒することが期待できます。HPV検査でハイリスク型HPVの持続感染が確認された場合、その後の細胞の変化を注意深く観察することで、前がん病変や早期がんを発見しやすくなります。
つまり、HPV検査は、「今現在がんであるか」を診断するものではなく、「将来がんになるリスクが高いか」を予測するための検査という側面が強いと言えます。このリスクを早期に知ることで、必要な精密検査や経過観察を行い、子宮頸がんの発症を未然に防いだり、早期に発見して適切な治療につなげることが可能になります。
子宮頸がん検診におけるHPV検査の位置づけ・細胞診との違い
子宮頸がん検診では、主に細胞診(細胞学的検査)が行われます。細胞診は、子宮頸部の表面から細胞を採取し、顕微鏡で細胞に異常がないかを調べる検査です。細胞の形や配列に異常が見られる場合、前がん病変やがんの可能性が疑われます。
一方、HPV検査は、細胞そのものではなく、細胞にハイリスク型HPVのDNAが存在するかどうかを調べます。
子宮頸がん検診では、自治体や医療機関によって、細胞診単独で行われる場合と、細胞診とHPV検査を組み合わせて行われる場合があります。
- 細胞診単独法: 子宮頸部の細胞の異常を直接調べる方法。異常細胞が見つかれば精密検査となります。
- HPV検査単独法: ハイリスク型HPVに感染しているかを直接調べる方法。陽性の場合は細胞診など次の検査に進むことがあります。
- 細胞診・HPV検査併用法(コ・テスティング): 細胞診とHPV検査の両方を同時に行う方法。両方の結果を合わせてリスクを判断することで、より正確な診断や、次回の検診間隔の決定に役立てられます。特に30歳以上の女性には、コ・テスティングが推奨される場合があります。
細胞診は「今の細胞に異常があるか」を調べ、HPV検査は「将来がんになるリスクが高いウイルスがいるか」を調べる、と考えると違いが分かりやすいでしょう。どちらの検査も子宮頸がんの予防や早期発見に不可欠な役割を果たしており、組み合わせて行うことで検出率を高める効果が期待できます。
HPV検査の方法と種類
HPV検査は、主に医療機関で行う方法と、自宅で採取して郵送するキットを使用する方法があります。どちらの方法も、子宮頸部の細胞を採取してHPVのDNAを検出するという点は共通しています。
医療機関で行うHPV検査の採取方法
医療機関(主に婦人科)でHPV検査を受ける場合、子宮頸がん検診の細胞診と同時に行われることが一般的です。医師または看護師が、内診台で子宮頸部を観察しながら、専用の小さなブラシやヘラのような器具を使って子宮頸部の表面や入り口付近の細胞を優しく採取します。採取にかかる時間はわずかで、痛みもほとんど感じない方が多いですが、個人差があります。
生理中の検査は避け、月経期間以外に受診することが推奨されます。
採取された細胞は、検査機関に送られ、HPVのタイプ(特にハイリスク型)を調べる検査が行われます。
この方法の利点は、医療専門家が適切に細胞を採取するため、サンプルの質が高いことや、採取時に子宮頸部の状態を医師が直接確認できる点です。また、同時に細胞診やその他の婦人科の診察を受けることも可能です。
HPV検査単独法について
前述の通り、子宮頸がん検診は細胞診が基本ですが、近年、特に海外ではHPV検査単独でのスクリーニングも行われています。HPV検査単独法は、細胞診よりも感度が高く、前がん病変を見逃しにくいという利点があります。しかし、特異度は細胞診より低いため、ハイリスク型HPVが見つかっても、実際に前がん病変やがんがあるわけではない「偽陽性」となる可能性が細胞診より高くなるという側面もあります。
日本のガイドラインでは、現状では細胞診がスクリーニングの基本とされていますが、一部の医療機関では細胞診とHPV検査を組み合わせたコ・テスティングを推奨したり、特定の年齢層(例えば30歳以上)に対してHPV検査の結果を重視したりすることがあります。HPV検査単独でスクリーニングを行う場合でも、陽性となった場合は細胞診などの次の検査に進むことが必須となります。
自宅でできるHPV検査キット
近年、自宅で自分で子宮頸部の細胞を採取し、郵送して検査機関で調べてもらうタイプのHPV検査キットが市販されています。
採取方法:
キットに含まれる専用の採取器具(多くは綿棒のような形)を使い、説明書に従って自分で膣の奥(子宮頸部付近)から細胞を採取します。採取したサンプルは、キットに同梱されている返送用封筒に入れて検査機関へ郵送します。
メリット:
- 医療機関に行く時間や手間が省ける
- プライバシーが保たれる
- 比較的安価な場合がある
デメリット:
- 自分で正確に採取できているか不安がある
- 検査結果は医療行為による診断ではない(陽性の場合、必ず医療機関を受診する必要がある)
- キットの精度や信頼性は製品によって異なる可能性がある
- 採取時に不快感や軽い出血を伴う場合がある
自宅用HPV検査キットは、忙しい方や医療機関の受診に抵抗がある方にとって、検査のハードルを下げる選択肢となり得ます。ただし、検査キットはあくまで「自己検査の補助的な手段」と捉え、陽性だった場合は必ず医療機関を受診して医師の診断を受けることが非常に重要です。陰性の場合でも、定期的な子宮頸がん検診(細胞診)は推奨されています。
HPV検査は必要?受けなくていいケースはある?
HPV検査はすべての人に一律に必要というわけではありませんが、子宮頸がんのリスクを評価し、予防や早期発見につなげるために多くの女性にとって非常に有効な検査です。特に性交渉の経験がある女性は、HPV感染のリスクがあるため検査の対象となります。
HPV検査が必要とされる理由と対象者
HPV検査が必要とされる主な理由は、子宮頸がんの約99%がハイリスク型HPVの持続感染によって引き起こされるからです。HPV検査で持続感染があるかを早期に知ることで、将来子宮頸がんになるリスクを予測し、必要なフォローアップ(精密検査や経過観察)を行うことで、がんの進行を防ぐことができます。
日本の公的な子宮頸がん検診では、細胞診が基本とされていますが、近年では細胞診とHPV検査を組み合わせた「コ・テスティング」が推奨される対象者が増えています。
一般的に、性交渉の経験がある20歳以上の女性は子宮頸がん検診の対象となります。HPV検査を組み合わせて行うかどうかは、年齢や過去の検診結果、医療機関の方針によって異なります。例えば、欧米では30歳以上の女性に対してコ・テスティングが推奨されることが多いです。
自治体が行う子宮頸がん検診では、対象年齢(多くは20歳以上)であれば、通常2年に1回の頻度で細胞診が公費で受けられます。HPV検査については、自治体によって実施状況や対象が異なるため、お住まいの地域の検診情報を確認することが大切です。
性交渉経験がない場合のHPV検査
HPVは主に性交渉によって感染します。したがって、性交渉の経験が一度もない方の場合、ハイリスク型HPVに感染している可能性は非常に低いと考えられます。
このため、性交渉経験がない女性は、公的な子宮頸がん検診(細胞診・HPV検査を含む)の対象外となることが多いです。もちろん、心配であれば自費で検査を受けることは可能ですが、医学的な必要性は低いとされています。
ただし、ここでいう「性交渉」には、膣への挿入だけでなく、オーラルセックスやアナルセックス、性器と性器の接触など、性的な接触全般が含まれる場合があります。完全に性的な接触が一切ない場合に感染リスクは極めて低いと言えます。
もしご自身が性交渉経験がないかどうか迷う場合や、不明な点がある場合は、婦人科医に相談することをおすすめします。
男性のHPV検査について
HPVは女性だけでなく、男性にも感染します。男性の場合も、性交渉によって感染し、性器や肛門周囲に感染を起こすことがあります。男性がハイリスク型HPVに感染しても、多くは無症状で自然に排除されますが、一部で陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんなどの原因となることがあります。また、ローリスク型HPV(6型、11型など)の感染によって尖圭コンジローマを発症することがあります。
しかし、現状、男性に対するHPV検査は、子宮頸がん検診のように一般的なスクリーニング検査としては行われていません。 その理由は、男性のHPV関連がんの発生率が女性の子宮頸がんよりも低いことや、男性器におけるHPVの採取方法が確立されていないこと、検査の費用対効果が低いことなどが挙げられます。
一部の研究や特殊な状況では、男性のHPV感染を調べるための検査が行われることもありますが、これは一般的な医療行為ではありません。男性がHPV関連疾患を予防するためには、HPVワクチンの接種が最も有効な手段とされています。また、尖圭コンジローマなどが疑われる場合は、皮膚科や泌尿器科を受診して診断・治療を受けることになります。
HPV検査にかかる費用
HPV検査にかかる費用は、検査を受ける方法(公的検診、医療機関での自費診療、自宅検査キット)や、自治体、医療機関によって大きく異なります。子宮頸がん検診として受ける場合は、公費助成があるため比較的安価に受けることができます。
公費・保険適用となる費用
日本の多くの自治体では、住民サービスの一環として、対象年齢(多くは20歳以上)の女性に対して子宮頸がん検診の費用を助成しています。この公費助成の対象となるのは、主に細胞診です。
HPV検査が公費助成の対象となるかどうかは、自治体によって異なります。一部の自治体では、細胞診とセットでHPV検査も公費で受けられる場合や、特定の条件(例:細胞診で軽度な異常が見つかった場合)で保険適用や公費助成となる場合があります。
公費助成を利用する場合、自己負担額は無料、数百円、あるいは数千円程度となることが多いです。具体的な自己負担額や検査内容は、お住まいの市区町村の広報やウェブサイトで確認する必要があります。
保険適用についてですが、基本的に無症状の方が予防的に受ける検査である子宮頸がん検診(細胞診、HPV検査含む)は病気に対する治療ではないため、保険適用外(自由診療)となります。ただし、以下の場合は保険適用となることがあります。
- 細胞診で異常が見つかり、その後の精密検査としてHPV検査が必要と医師が判断した場合
- 医師が病気(例:前がん病変など)の診断や治療方針を決定するためにHPV検査が必要と判断した場合
つまり、検診目的の場合は公費助成があるかないか、病気の診断・治療目的の場合は保険適用となる可能性がある、という違いがあります。
自費診療となる費用
公的検診の対象年齢外である場合や、対象年齢であっても公費助成のない医療機関で検診を受ける場合、あるいは細胞診の結果にかかわらず希望してHPV検査を受ける場合などは、自費診療となります。
自費診療でHPV検査(細胞診と同時または単独)を受ける場合の費用は、医療機関によって異なりますが、目安としては以下のようになります。
- 子宮頸がん検診(細胞診+HPV検査): 1万円〜1万5千円程度
- HPV検査単独: 8千円〜1万2千円程度
上記はあくまで目安であり、診察料やその他の検査(超音波検査など)が含まれるかどうかによって総額は変動します。受診を検討している医療機関に事前に確認することをおすすめします。
HPV検査キットの費用
自宅で採取して郵送するタイプのHPV検査キットの費用は、販売している会社やキットの内容(検出するHPVのタイプ数など)によって異なりますが、目安としては5千円〜1万円程度です。
医療機関での自費診療に比べると安価な場合が多いですが、前述の通り医療行為ではない点、自分で採取する必要がある点などを理解しておく必要があります。
HPV検査費用比較(目安)
以下の表は、HPV検査の費用目安とそれぞれの特徴をまとめたものです。
検査方法 | 公費/保険適用 | 自費(目安) | メリット | デメリット | 主な対象者 |
---|---|---|---|---|---|
医療機関(公費) | ○ | 無料〜数千円 | 費用負担が少ない、医師の診察がある | 対象年齢・頻度制限あり、検査内容は自治体次第 | 公費対象の女性(多くは20歳以上) |
医療機関(自費) | ✖︎ | 8千円〜1.5万円 | 必要な時にいつでも受けられる、他の検査と同時可能 | 費用がかかる | 公費対象外、対象年齢外、特定の検査を希望する女性 |
自宅検査キット | ✖︎ | 5千円〜1万円 | 手軽、プライバシーが保たれる | 自分で採取、結果は医療行為ではない、精度にばらつき | 手軽に検査したい、医療機関受診に抵抗がある女性 |
費用だけでなく、検査の目的や信頼性、受けやすさなどを考慮して、ご自身に合った検査方法を選択することが大切です。
HPV検査結果の見方と陽性の場合
HPV検査の結果は通常、数日から2週間程度で通知されます。結果が「陰性」であればハイリスク型HPVは検出されなかったことになります。「陽性」の場合は、ハイリスク型HPVに感染していることを意味します。陽性の場合でも過度に心配せず、医師の指示に従って次のステップに進むことが重要です。
検査結果が陽性の場合に考えられること
HPV検査で「陽性」となった場合、それは現在、ハイリスク型HPVに感染していることを意味します。しかし、これは「今すぐ子宮頸がんである」ということを意味するわけでは決してありません。
HPV感染は非常にありふれたもので、多くの人が一時的に感染します。陽性であったとしても、体の免疫力によってウイルスが自然に排除される可能性も十分にあります。問題となるのは、ウイルスが長期間(通常は1年以上)体内に留まる「持続感染」です。持続感染が、数年から長い時間をかけて子宮頸部の細胞に異常(前がん病変)を引き起こし、最終的にがんへと進行するリスクを高めます。
HPV検査で陽性となった場合に考えられることは以下の通りです。
- 現在、ハイリスク型HPVに感染している
- 将来、子宮頸がんになるリスクが他の人よりやや高い可能性がある
- 細胞診の結果と合わせて判断が必要
HPV検査の結果は、子宮頸がん検診として行われる細胞診の結果と組み合わせて解釈することが重要です。
- HPV陽性、細胞診陰性: ウイルスはいるが、今のところ細胞に異常はない状態。リスクはやや高いが、すぐにがんになるわけではない。経過観察となることが多い。
- HPV陽性、細胞診陽性(軽度〜高度異形成など): ウイルスがいて、細胞にも異常が見られる状態。前がん病変やがんの可能性が示唆されるため、精密検査が必要となる。
- HPV陰性、細胞診陽性: HPV以外の原因で細胞に異常が見られるか、細胞診の偽陽性の可能性。精密検査となる場合がある。
- HPV陰性、細胞診陰性: ウイルスも細胞の異常もない状態。子宮頸がんのリスクは非常に低いと考えられる。定期的な検診を継続する。
このように、HPV検査が陽性であっても、その後の対応は細胞診の結果によって異なります。重要なのは、陽性という結果だけにとらわれず、必ず医師の説明を受け、適切な次のステップを踏むことです。
HPVが陽性だった場合の次のステップ
HPV検査で陽性となった場合、医師の指示に従って、今後の対応を決定します。具体的な次のステップは、細胞診の結果や個々の状況によって異なりますが、一般的には以下のようになります。
- 細胞診の結果確認: HPV検査と同時に細胞診を受けている場合は、その結果が非常に重要になります。細胞診の結果によって、精密検査が必要か、それとも経過観察で良いかが判断されます。
- 精密検査(コルポスコピー、生検): 細胞診で中等度以上の異常が見られた場合や、HPV陽性かつ細胞診で軽度な異常が見られ経過観察中に変化があった場合などに、精密検査が行われます。精密検査では、コルポスコピーという拡大鏡を使って子宮頸部を詳しく観察し、異常が疑われる部分があれば組織の一部を採取する「生検(せいけん)」を行います。
採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、前がん病変の程度やがんの有無を確定診断します。 - 経過観察: HPV陽性で細胞診が陰性、または軽度な異常にとどまっている場合など、すぐに精密検査が必要ないケースでは、一定期間(例えば6ヶ月後や1年後)に再度細胞診やHPV検査を行い、細胞やウイルスの状態が変化していないかを確認する「経過観察」となります。
多くの場合、この間にウイルスが自然に排除されたり、細胞の異常が改善したりします。 - 治療: 精密検査の結果、前がん病変(中等度異形成や高度異形成、上皮内がんなど)や早期がんが見つかった場合は、病変の程度に応じた治療が行われます。
前がん病変であれば、レーザー治療や円錐切除術など、子宮を温存できる治療法が選択されることが多いです。
HPVが陽性という結果が出たとしても、必要以上に不安がる必要はありません。大切なのは、陽性という結果を真摯に受け止め、必ず医師に相談し、推奨された次のステップ(精密検査や経過観察)を適切に受けることです。これにより、子宮頸がんの発症を高い確率で防ぐことができます。
HPV検査を受ける頻度について
HPV検査を含む子宮頸がん検診を受ける推奨頻度は、年齢や過去の検診結果によって異なります。
- 一般的な推奨頻度: 日本の公的な子宮頸がん検診は、通常2年に1回の細胞診が推奨されています。
- HPV検査を組み合わせる場合: 細胞診とHPV検査を組み合わせたコ・テスティングについては、30歳以上の女性では2年に1回の細胞診の代わりに、3〜5年に1回のコ・テスティングが推奨される場合もあります。
これは、HPV検査が陰性であれば、将来がんになるリスクが低いと判断できるため、次回の検診までの間隔を少し長くしても良い、という考えに基づいています。 - 過去の検診で異常があった場合: 過去に細胞診やHPV検査で異常が見つかった経験がある方や、前がん病変の治療を受けたことがある方などは、医師の判断により、より短い間隔(例:半年に1回、1年に1回)で検診や検査を受けることが推奨されます。
ご自身の最適な検診頻度については、必ず医師に相談して決定してください。ガイドラインは一般的な目安であり、個々のリスク因子(喫煙習慣、免疫抑制状態など)や過去の病歴によって適切な頻度は異なります。
HPV検査を受ける場所の選択肢
HPV検査を受けることができる場所はいくつかあります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の都合や希望に合わせて選択することができます。
病院・クリニック(婦人科)
最も一般的で推奨されるのは、婦人科のある病院やクリニックでHPV検査を含む子宮頸がん検診を受ける方法です。
メリット:
- 専門医による適切な採取と診断: 婦人科医や trained medical staff が細胞を採取するため、検体の質が高く、検査結果の信頼性が高いです。
- 医師の診察を受けられる: 検査結果について直接医師から説明を受け、疑問点を質問したり、今後の治療やフォローアップについて相談したりできます。
子宮頸部の状態を医師に確認してもらうことも可能です。 - 細胞診やその他の婦人科検査も同時に可能: 必要に応じて細胞診や超音波検査など、他の婦人科関連の検査や診察を同時に受けることができます。
- 公費助成が利用できる場合がある: お住まいの自治体の公費子宮頸がん検診として受診できる場合があります。
デメリット:
- 予約が必要な場合が多い
- 受診する時間や手間がかかる
- 内診台での検査に抵抗を感じる人もいる
健康診断・人間ドック
職場の健康診断や、個人で申し込む人間ドックのオプション項目として、HPV検査を含む子宮頸がん検診が用意されていることがあります。
メリット:
- 他の健康診断とまとめて受けられる: 忙しい方にとって、一度に全身の健康チェックができるのは便利です。
- 比較的受けやすい環境: 健康診断の流れの中で受けられるため、婦人科を単独で受診するよりも心理的な抵抗が少ないと感じる人もいるかもしれません。
デメリット:
- 専門性が異なる場合がある: 専門の婦人科医が必ずしも担当するとは限らない場合があります。
- 結果説明が簡易的な場合がある: 詳細な結果説明や個別相談には別途婦人科受診が必要になる場合があります。
- 費用が割高になる場合がある: オプションとして追加する場合、費用が割高になることがあります。
郵送型検査キット
前述の自宅で採取して郵送するタイプの検査キットを利用する方法です。インターネットなどで購入できます。
メリット:
- 手軽でプライバシーが保たれる: 自宅で自分の都合の良い時に採取し、郵送するだけなので、医療機関に行く時間がない方や内診台での検査に抵抗がある方にとってハードルが低い方法です。
- 匿名で受けられる場合がある: 氏名ではなく記号などで識別されるキットもあります。
デメリット:
- 医療行為ではない: 検査結果はあくまでスクリーニングであり、診断ではありません。
陽性の場合、必ず医療機関を受診して診断を受ける必要があります。 - 自分で正確に採取する必要がある: 採取の仕方が不適切だと、正確な結果が得られない可能性があります。
- キットの信頼性にばらつきがある可能性: 購入するキットの品質を確認する必要があります。
- 直接相談できない: 結果について専門家にすぐに相談することはできません。
ご自身のライフスタイルや、どの程度の手軽さや専門性を求めるかによって、最適な場所を選択しましょう。子宮頸がんの予防という観点からは、信頼性の高い医療機関での定期的な検診が最も推奨されます。
まとめ:HPV検査で自身の健康状態を確認しましょう
HPV検査は、子宮頸がんの主要な原因であるハイリスク型HPVの感染リスクを調べ、子宮頸がんを予防・早期発見するために非常に重要な検査です。性交渉の経験がある女性であれば、誰でもHPV感染のリスクがあります。多くの場合、ウイルスは自然に排除されますが、一部で持続感染となり、将来子宮頸がんにつながる可能性があります。
HPV検査は、細胞診と組み合わせて行われることが多く、特に30歳以上の女性にとっては、将来のリスク評価に役立つ有用な検査です。医療機関での検査、健康診断でのオプション、自宅検査キットなど、いくつかの方法がありますが、最も推奨されるのは専門医のいる婦人科での定期的な検診です。
HPV検査で陽性となった場合でも、すぐにがんであるというわけではありません。多くは経過観察となるか、精密検査が必要となる段階です。陽性という結果を受けたら、必ず医師の指示に従い、適切なフォローアップを受けることが大切です。これにより、前がん病変のうちに発見し、簡単な治療で治癒することが期待できます。
子宮頸がんは、適切な検診によって予防や早期発見が可能な数少ないがんの一つです。ご自身の健康を守るために、HPV検査を含む子宮頸がん検診を定期的に受診し、安心して毎日を過ごせるようにしましょう。迷うことや不安なことがあれば、遠慮なく婦人科医に相談してください。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の診断や治療を保証するものではありません。病状や治療に関するご判断は、必ず医師にご相談の上で行ってください。
コメントを残す