下腹部痛、原因をチェック！男女別に考えられる病気｜危険なサイン

下腹部痛は、多くの人が経験する一般的な症状の一つです。
しかし、その原因は消化器、泌尿器、生殖器など、体の様々な臓器に関わっており、軽いものから緊急性の高い病気まで多岐にわたります。
痛む場所や痛みの種類、他の症状の有無によって、考えられる病気は大きく異なります。
つらい下腹部痛でお悩みの方は、この記事で痛みの原因や対処法、受診の目安について正しい知識を得て、適切な対応をとるための参考にしてください。

下腹部痛の主な原因

下腹部には、腸や膀胱といった消化器・泌尿器系の臓器に加え、女性の場合は子宮や卵巣、男性の場合は前立腺や精巣上体など、生殖器系の臓器も位置しています。
そのため、下腹部痛の原因は非常に多様です。
ここでは、代表的な原因となる病気や状態を解説します。

消化器系の病気による下腹部痛

下腹部には大腸の一部（S状結腸や直腸など）があるため、消化器系の問題が痛みの原因となることはよくあります。

虫垂炎（盲腸）

虫垂炎は、盲腸の先端にある虫垂に炎症が起きる病気です。
初期にはみぞおちやへその周りが痛み、徐々に右下腹部に痛みが移動してくるのが典型的な経過ですが、最初から下腹部が痛むこともあります。
右下腹部の強い痛みが特徴で、押すと痛みが強まり、離すときに響くような痛み（反跳痛）を伴うこともあります。
吐き気や嘔吐、発熱を伴うこともあります。
緊急手術が必要になる場合もあるため、疑われる場合はすぐに医療機関を受診してください。

便秘・下痢

便秘や下痢は、腸の運動異常や内容物の停滞によって下腹部痛を引き起こします。

• 便秘：便がS状結腸や直腸に溜まることで、下腹部全体の重い痛みや張り感が生じます。排便によって痛みが緩和されることが多いです。
• 下痢：腸の過剰な運動によって、差し込むような鋭い痛み（仙痛）や、便意を伴う痛みが生じます。

多くは一時的なものですが、慢性的な便秘や下痢は、他の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群（IBS）は、検査では異常が見つからないにも関わらず、慢性的な腹痛や腹部の不快感を伴う便通異常（下痢、便秘、またはその繰り返し）が続く病気です。
下腹部痛に便意を伴うことが多く、排便によって痛みが和らぐのが特徴です。
ストレスや特定の食品が症状を悪化させることがあります。
痛みの場所は一定せず、下腹部のどこが痛むこともあります。

憩室炎

大腸の壁にできた小さな袋状のくぼみ（憩室）に炎症が起きる病気です。
日本人ではS状結腸にできることが多く、この場合の憩室炎は左下腹部に強い痛みを生じることが多いです。
発熱や吐き気、便通異常を伴うこともあります。
虫垂炎と似た症状を示すことがありますが、痛む場所が右か左かで鑑別の一助となります。
高齢者に多く見られます。

泌尿器系の病気による下腹部痛

下腹部には膀胱や尿道の一部、尿管の下部があります。
これらの臓器の炎症や結石が下腹部痛の原因となることがあります。

膀胱炎

膀胱の炎症で、特に女性に多い病気です。
下腹部全体の鈍い痛みや不快感が生じます。
頻尿、排尿時の痛み（排尿痛）、尿の濁り、残尿感といった症状を伴うのが特徴です。
多くは細菌感染が原因で、抗生剤による治療が必要です。

尿路結石

腎臓や尿管、膀胱などに結石ができる病気です。
結石が尿管に詰まると、尿の流れが妨げられ、わき腹から下腹部にかけての激しい痛み（仙痛発作）が生じます。
痛む場所は結石のある位置によって異なりますが、尿管下部にある場合は下腹部痛として感じられます。
血尿を伴うことも多いです。
痛みの程度が非常に強く、救急受診が必要になることもあります。

女性特有の原因による下腹部痛

女性の場合、子宮、卵巣、卵管といった生殖器系の問題が下腹部痛の主な原因となることがあります。

生理痛（月経困難症）

生理（月経）に伴って生じる下腹部痛です。
子宮を収縮させるプロスタグランジンという物質の分泌が増えることが主な原因です。
下腹部全体の重い痛みや締め付けられるような痛みが特徴で、腰痛や吐き気、頭痛などを伴うこともあります。
日常生活に支障をきたすほど痛みが強い場合を月経困難症と呼び、背景に子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が隠れていることもあります。

排卵痛（非經期下腹痛の一因）

排卵期（月経周期の中間頃）に生じる下腹部痛です。
卵巣から卵子が放出される際に、卵胞が破れたり、少量の出血があったりすることが原因と考えられています。
下腹部の片側（排卵が起きた側の卵巣がある方）に、チクチクとした痛みや鈍痛が生じることが多いです。
数時間から1～2日程度で治まる一時的な痛みです。
非経期の下腹部痛の一般的な原因の一つです。

子宮内膜症

子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所（卵巣、腹膜など）にできる病気です。
できた場所で月経周期に合わせて増殖・出血を繰り返すため、生理のたびにひどくなる下腹部痛や腰痛が特徴です。
生理期間以外にも慢性的な鈍い下腹部痛を感じたり、性交痛や排便痛を伴ったりすることもあります。
不妊の原因になることもあります。

骨盤内炎症性疾患

子宮、卵管、卵巣などに細菌感染が起きて炎症を起こす病気です。
クラミジアなどの性感染症が原因となることが多いです。
下腹部全体の強い痛みが生じ、発熱、おりものの異常、不正出血などを伴います。
放置すると不妊や子宮外妊娠の原因となる可能性があるため、早期の治療が必要です。

卵巣嚢腫

卵巣にできる袋状のできものです。
通常は無症状ですが、大きくなると下腹部の張り感や鈍痛を感じることがあります。
特に茎捻転（卵巣嚢腫が根元からねじれること）を起こすと、突然の激しい下腹部痛を生じ、緊急手術が必要になることもあります。

子宮外妊娠

受精卵が子宮内膜以外の場所（多くは卵管）に着床してしまう状態です。
妊娠初期に、下腹部の片側（通常は着床した側）に痛みが生じます。
進行すると卵管が破裂し、突然の激しい下腹部痛と大量出血を伴い、命にかかわる危険な状態になります。
妊娠の可能性がある時期に下腹部痛や不正出血があれば、すぐに医療機関を受診する必要があります。

男性特有の原因による下腹部痛

男性の場合、前立腺や精巣上体などの問題が下腹部痛やその周辺の痛みの原因となることがあります。

前立腺炎

前立腺の炎症です。
細菌感染によるものと、原因不明の非細菌性のものがあります。
下腹部、特に恥骨の後ろあたりに鈍痛や不快感が生じることがあります。
排尿時の痛み、頻尿、残尿感、射精時の痛みなどを伴うこともあります。

精巣上体炎

精巣上体（精巣の脇にある器官）の炎症です。
細菌感染が原因となることが多いです。
痛みは通常、陰嚢に生じますが、下腹部や鼠径部（足の付け根）に放散痛として感じられることもあります。
陰嚢の腫れや痛み、発熱を伴います。

その他の原因

上記以外にも、下腹部痛を引き起こす様々な原因があります。

妊娠初期の生理的変化

妊娠初期には、子宮が大きくなる過程で子宮を支える靭帯が引っ張られたり、ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなったりすることで、下腹部に軽い鈍痛や張り感を感じることがあります（孕初期肚子隐隐作痛）。
多くの場合は生理的な変化であり心配ありませんが、出血を伴う場合や痛みが強い場合は、流産や子宮外妊娠などの可能性もあるため、産婦人科を受診することが重要です。

精神的なストレス

強いストレスや不安は、自律神経のバランスを乱し、腸の働きに影響を与えることがあります。
これにより、慢性的な下腹部痛や腹部の不快感が生じることがあります。
過敏性腸症候群も精神的な要因が関わることが知られています。

痛む場所・痛みの種類別の下腹部痛

下腹部痛の原因を特定するためには、痛む場所や痛みの種類、いつどのような状況で痛みが生じるかといった情報を詳しく観察することが非常に重要です。

左下腹部痛の原因

左下腹部にはS状結腸、直腸の一部、左の卵巣・卵管（女性）、左の尿管下部などがあります。

• S状結腸憩室炎：左下腹部の強い痛み。
• 便秘：S状結腸に便が滞留することによる左下腹部の張りや鈍痛。
• 過敏性腸症候群：痛む場所が一定しない場合、左下腹部が痛むことも。
• 左卵巣・卵管の病気：卵巣嚢腫の茎捻転や破裂、卵巣炎、卵管炎など。突然の激痛や鈍痛。
• 子宮外妊娠：左卵管に着床した場合の左下腹部痛。
• 左尿管結石：左わき腹から左下腹部にかけての激しい痛み。

右下腹部痛の原因（右下腹部隐痛含む）

右下腹部には虫垂、盲腸、回盲部、上行結腸の一部、右の卵巣・卵管（女性）、右の尿管下部などがあります。

• 虫垂炎（盲腸炎）：典型的な右下腹部の強い痛み（右下腹痛一定是阑尾炎吗？いいえ、他の原因もあります）。初期はみぞおちやへそ周りの痛みから移動することが多い。
• 右卵巣・卵管の病気：卵巣嚢腫の茎捻転や破裂、卵巣炎、卵管炎など。突然の激痛や鈍痛。
• 子宮外妊娠：右卵管に着床した場合の右下腹部痛。
• 右尿管結石：右わき腹から右下腹部にかけての激しい痛み。
• クローン病などの炎症性腸疾患：回盲部（小腸の終わりと大腸の始まり）に炎症が起きている場合、慢性的な右下腹部痛が生じることがあります（右下腹部隐痛）。

下腹部全体の痛み

下腹部全体に痛みが生じる場合は、膀胱や子宮、直腸などの臓器や、腹膜全体の炎症、腸全体の異常などが考えられます。

• 膀胱炎：下腹部全体の鈍痛や不快感。
• 生理痛（月経困難症）：下腹部全体の重い痛みや締め付け感。
• 骨盤内炎症性疾患：下腹部全体の強い痛み。
• 便秘：便が下腹部全体に滞留することによる痛み。
• 過敏性腸症候群：痛む場所が移動したり、全体的に痛んだりする場合。
• 腹膜炎：腹膜全体に炎症が及ぶと、下腹部全体に激しい痛みが生じます。虫垂炎や憩室炎が進行した場合などに起こりえます。

鈍痛・隐隐作痛

鈍痛や隐隐作痛は、ズキズキ、シクシク、重いといった比較的弱い痛みが続く状態です。
急激な痛みではないため放置しがちですが、慢性的な痛みの原因となっている病気や、早期の対応が必要な病気が隠れている可能性もあります。

• 便秘
• 過敏性腸症候群
• 慢性前立腺炎（男性）
• 子宮内膜症
• 卵巣嚢腫（比較的大きいもの）
• 膀胱炎
• 妊娠初期の生理的変化（孕初期肚子隐隐作痛）
• 炎症性腸疾患（クローン病など）

鋭痛・刺痛

鋭痛や刺痛は、キリキリ、チクチク、ズキンといった比較的新しい、明確な痛みです。
急性の炎症や臓器の収縮、結石の通過などが考えられます。

• 虫垂炎（初期の移動痛や右下腹部の痛み）
• 憩室炎
• 尿路結石（仙痛発作）
• 腸炎（食あたりなど）
• 過敏性腸症候群（差し込むような痛み）
• 排卵痛（チクチクした痛み）
• 子宮外妊娠（卵管破裂前）

下腹部痛に便意を伴う場合

下腹部痛と同時に強い便意を感じる場合は、腸の異常が強く疑われます。

• 過敏性腸症候群：排便によって痛みが和らぐのが特徴。
• 感染性腸炎（食あたりなど）：下痢や嘔吐を伴うことが多い。
• 便秘：便が直腸に近づくにつれて便意と痛みが強くなる。
• 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患：慢性的な便意や血便を伴うことがある。

下腹部が坠痛（重く感じる痛み）の原因

坠痛は、下腹部が引っ張られる、重い、下がってくるといった感覚を伴う痛みです。
骨盤内の臓器の炎症や腫れ、妊娠などが考えられます。

• 生理痛（月経困難症）
• 膀胱炎（慢性期や間質性膀胱炎など）
• 慢性前立腺炎（男性）
• 子宮内膜症
• 骨盤臓器脱（膀胱、子宮、直腸などが下がってくる病気）
• 妊娠初期

痛む場所や痛みの種類、随伴症状を組み合わせることで、より原因を絞り込むことができます。

下腹部痛に関わる主な臓器（下腹部有什么器官）

下腹部痛の原因を理解するためには、下腹部にどのような臓器があるかを知ることが役立ちます。
下腹部は、骨盤の内部やその周辺に位置し、主に以下の臓器を含みます。

消化器系臓器

• 大腸（S状結腸、直腸）：便を一時的に溜めたり、排便をコントロールしたりします。便秘、下痢、憩室炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病などが関連します。
• 虫垂：盲腸の先端にある小さな突起。炎症を起こしやすい（虫垂炎）。
• 小腸の一部（回腸の末端）：大腸との境界付近は炎症性腸疾患（クローン病）の好発部位となることがあります。

泌尿器系臓器

• 膀胱：腎臓で作られた尿を一時的に溜めておく袋状の臓器。膀胱炎、間質性膀胱炎などが関連します。
• 尿管（下部）：腎臓と膀胱をつなぐ管。尿路結石が詰まることがあります。
• 尿道（上部）：膀胱から体外へ尿を排出する管。尿道炎などが下腹部痛の原因になることもあります。

生殖器系臓器

• 子宮（女性）：妊娠・出産に関わる臓器。生理痛、子宮内膜症、子宮筋腫、妊娠、子宮外妊娠などが関連します。
• 卵巣（女性）：卵子を作り、女性ホルモンを分泌する臓器。排卵痛、卵巣嚢腫、卵巣炎、卵巣がんなどが関連します。
• 卵管（女性）：卵巣と子宮をつなぐ管。子宮外妊娠、卵管炎などが関連します。
• 前立腺（男性）：精液の一部を作る臓器。前立腺炎、前立腺肥大症、前立腺がんなどが関連します。
• 精巣上体（男性）：精巣で作られた精子を成熟・貯蔵する器官。精巣上体炎などが関連します。

下腹部痛は、これらの臓器のいずれか、または複数の異常によって引き起こされる可能性があります。
痛む場所と臓器の位置を照らし合わせることで、原因の絞り込みに役立ちます。

下腹部痛の緩和策と対処法（怎么缓解）

下腹部痛の原因によって対処法は異なりますが、痛みを和らげるために自宅でできるセルフケアと、医療機関での治療法があります。

自宅でできるセルフケア

痛みの原因が明らかでない一時的な軽い痛みや、特定の原因（生理痛や軽い便秘など）による痛みの緩和には、以下のセルフケアが有効な場合があります。

• 安静にする：体を休ませることが痛みの緩和につながります。無理に動かず、楽な姿勢で横になりましょう。
• お腹を温める：お腹を温めることで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されることがあります。湯たんぽやホットパックを当てる、ぬるめのお風呂に入るなどが有効です。ただし、炎症性の病気（虫垂炎など）が疑われる場合は、温めることで炎症が悪化する可能性もあるため避けてください。
• 体を冷やさない：特に女性は体を冷やすことで生理痛などが悪化しやすいため、日常的に体を冷やさないように心がけましょう。
• 軽いマッサージ：お腹を優しくさするようにマッサージすることで、腸の動きを助けたり、筋肉の緊張を和らげたりできます。ただし、強い力で押したり、激しい痛みの場合は行わないでください。
• 水分を十分に摂る：特に便秘や下痢による痛みの場合、水分補給は重要です。脱水を防ぎ、便秘の場合は便を柔らかくする助けになります。
• 消化の良い食事を摂る：胃腸に負担のかかる食事（脂っこいもの、辛いもの、冷たいもの、アルコール、カフェインなど）は避け、おかゆやうどんなど消化の良いものを摂りましょう。
• 市販の鎮痛剤：生理痛など、原因が分かっている一時的な痛みに対しては、市販の鎮痛剤（アセトアミノフェンやイブプロフェンなど）が有効な場合があります。ただし、使用上の注意をよく読み、適切な用量を守ることが重要です。原因不明の激しい痛みに自己判断で鎮痛剤を使用すると、病気の診断を遅らせる可能性があるため注意が必要です。

医療機関での治療法

下腹部痛の原因が病気である場合は、原因に応じた専門的な治療が必要です。

• 薬物療法：
  • 鎮痛剤：痛みを和らげるために処方されます。痛みの種類や程度に応じて様々な種類の薬が使われます。
  • 抗菌薬：細菌感染による膀胱炎や骨盤内炎症性疾患、憩室炎、虫垂炎などに使用されます。
  • 整腸剤：便秘や下痢、過敏性腸症候群に対して、腸内環境を整えたり、腸の働きを調整したりするために使用されます。
  • 消化管運動調節薬：過敏性腸症候群などで、腸の動きの異常を改善するために使用されます。
  • ホルモン療法：子宮内膜症や月経困難症に対して、痛みの原因となるホルモンの分泌を抑制するために使用されます。
  • その他：原因疾患に応じた様々な薬が用いられます（例：前立腺炎治療薬、尿路結石を排出しやすくする薬など）。
• 手術療法：
  • 虫垂切除術：虫垂炎が進行した場合や穿孔した場合に行われます。
  • 卵巣嚢腫摘出術/卵巣・卵管切除術：卵巣嚢腫の茎捻転や破裂、卵巣がんなどが疑われる場合に行われます。子宮外妊娠で卵管が破裂した場合も緊急手術が必要です。
  • 尿路結石の破砕術や除去術：自然排出が難しい大きな結石に対して行われます。
• その他：原因によっては、物理療法や精神療法などが併用されることもあります。

重要なのは、下腹部痛の原因を正確に診断し、原因に応じた適切な治療を行うことです。
自己判断で市販薬を使い続けたり、放置したりせず、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

こんな下腹部痛は要注意！すぐに受診が必要なケース

下腹部痛の中には、迅速な対応が必要な緊急性の高い症状や、放置すべきでない慢性的な症状があります。
以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

緊急性の高い症状リスト

以下の症状は、腹膜炎、内臓の破裂、臓器の血行障害など、生命に関わる危険な状態のサインである可能性があります。
迷わず救急医療機関を受診しましょう。

• 突然、あるいは徐々に始まったが、時間とともに痛みが非常に強くなっている：激痛は急性腹症のサインです。
• 痛みが強く、体勢を変えても和らがない：炎症や内臓の損傷などが考えられます。
• お腹が硬く（板状腹）、押すと強い痛みがある：腹膜炎の可能性が高いです。
• 高熱（38℃以上）を伴う：強い炎症や感染症が考えられます。
• 吐き気や嘔吐がひどく、水分も摂れない：腸閉塞や強い炎症などが考えられます。
• 冷や汗、顔面蒼白、めまい、意識が朦朧とする：ショック状態のサインである可能性があります。
• 血便、タール便（真っ黒な便）、大量の血尿：消化管や尿路からの出血が考えられます。
• 不正出血を伴う強い下腹部痛（特に妊娠の可能性がある場合）：子宮外妊娠の破裂などが考えられます。
• 陰嚢の突然の激痛と腫れ（男性）：精巣捻転の可能性があり、緊急手術が必要です。

慢性的な痛みや気になる症状がある場合

緊急性は低くても、以下のような下腹部痛や随伴症状がある場合は、放置せずに医療機関を受診し、原因を調べてもらうことが重要です。

• 痛みが2〜3日以上続いている
• 痛みが繰り返して起こる
• 痛みの他に、体重減少、食欲不振、倦怠感などがある
• 排便や排尿の状態が持続的に変化している（慢性的な便秘や下痢、排尿困難など）
• 血便や血尿はないが、便や尿に異常を感じる（便の形や色、尿の色や濁りなど）
• 女性の場合、生理周期に関係なく痛みが続く、または生理痛が以前よりひどくなった
• 市販薬で痛みが和らがない
• 痛みが日常生活に支障をきたしている
• 痛みの原因が分からず、不安が大きい

これらの症状は、慢性的な病気や、早期発見・治療が望ましい病気のサインである可能性があります。
適切な診断と治療を受けることで、症状の改善や病気の進行予防につながります。

下腹部痛に関するよくある質問

下腹部痛について、多くの人が疑問に思うことや、よくある質問とその回答をまとめました。

妊娠初期の下腹部痛は大丈夫？（孕初期肚子隐隐作痛）

妊娠初期に軽い鈍痛や張り感を感じることは、子宮が大きくなる生理的な変化やホルモンの影響によるもので、多くの場合は心配ありません（孕初期肚子隐隐作痛）。
しかし、強い痛み、出血（茶色っぽい出血や鮮血）、腹部の強い張りなどを伴う場合は、流産、子宮外妊娠、卵巣の異常などの可能性も考えられます。
心配な症状がある場合は、自己判断せず必ず産婦人科医に相談してください。
痛みの程度や他の症状の有無によって、診断や対応が変わります。

右下腹部痛は必ず虫垂炎？（右下腹痛一定是阑尾炎吗）

「右下腹部痛＝虫垂炎（盲腸）」というイメージを持っている方は多いですが、必ずしも虫垂炎とは限りません（右下腹痛一定是阑尾炎吗？いいえ）。
特に女性の場合、右の卵巣や卵管の病気（卵巣嚢腫、子宮外妊娠など）が右下腹部痛の原因となることが非常に多く、虫垂炎と症状が似ていることもあります。
その他にも、右尿管結石、回盲部の炎症性腸疾患（クローン病など）、S状結腸が右側に偏っている場合の憩室炎など、様々な原因が考えられます。
痛みの始まり方、強さ、随伴症状（発熱、吐き気、性器出血、排尿時の症状など）などを詳しく観察し、医療機関で正確な診断を受けることが重要です。

非經期の下腹部痛は何が原因？

非經期（生理期間ではない時期）の下腹部痛の原因は、生理痛以外の様々な可能性が考えられます。

• 排卵痛（Mittelschmerz）：月経周期の中間頃（排卵期）に、下腹部の片側（排卵側の卵巣がある方）に生じる一時的な痛み。数時間〜1〜2日で治まることが多いです。非經期下腹痛の代表的な原因の一つです。
• 子宮内膜症：非經期にも慢性の下腹部鈍痛を感じることがあります。
• 骨盤内炎症性疾患：性感染症などが原因で、非經期にも下腹部全体に強い痛みが生じます。
• 卵巣嚢腫：茎捻転や破裂が起きると、非經期に突然の激痛が生じます。
• 子宮筋腫：大きくなったり、変性を起こしたりすると非經期にも痛みが生じることがあります。
• 子宮外妊娠：妊娠の可能性がある時期に、非經期に下腹部痛と不正出血が生じます。
• 消化器系の病気：便秘、過敏性腸症候群、憩室炎など、性別に関係なく起こる消化器系の病気は非經期の下腹部痛の原因となり得ます。
• 泌尿器系の病気：膀胱炎、尿路結石など。

非經期の下腹部痛が続く場合や痛みが強い場合は、婦人科や内科などの医療機関を受診して相談することをお勧めします。

まとめ｜下腹部痛の正しい理解と適切な対応

下腹部痛は、誰にでも起こりうる症状ですが、その原因は消化器、泌尿器、生殖器など多岐にわたります。
単なる便秘や生理痛の場合もあれば、虫垂炎や尿路結石、子宮外妊娠、卵巣の病気など、早期の診断と治療が必要な病気が隠れていることもあります。

痛む場所（左下腹部痛、右下腹部痛、下腹部全体の痛み）、痛みの種類（鈍痛、鋭痛、重く感じる痛み）、痛むタイミング、そして発熱、吐き気、便通異常、血尿、不正出血などの他の症状の有無を注意深く観察することが、原因を特定する上で非常に重要です。

一時的な軽い痛みであれば、安静や温める、消化の良い食事を摂るなどのセルフケアで様子を見ることも可能ですが、痛みが強い場合、時間とともに悪化する場合、特定の危険な症状（高熱、吐き気・嘔吐、冷や汗、大量出血など）を伴う場合は、ためらわずにすぐに医療機関（夜間や休日の場合は救急外来）を受診してください。

また、緊急性は低くても、痛みが続く、繰り返す、日常生活に支障がある、他の気になる症状があるといった場合も、放置せずに医療機関（内科、消化器内科、泌尿器科、婦人科など）を受診し、専門医の診察を受けることが大切です。
自己判断は危険を伴う可能性があります。

この記事が、下腹部痛でお悩みの方が、ご自身の症状を正しく理解し、適切なタイミングで医療機関を受診するための助けとなれば幸いです。

【免責事項】

この記事で提供する情報は、一般的な知識に関するものであり、個々の病状の診断や治療法を示すものではありません。
具体的な症状については、必ず医師や医療従事者にご相談ください。
この記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた一切の結果について、当方は責任を負いません。