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心療内科

病院で異常なしの吐き気…もしかして不安障害?原因と改善策を詳しく解説!


吐き気や胃の不調は、風邪や食あたりなど、身体的な原因を最初に思い浮かべることが多いでしょう。
しかし、病院で検査をしても異常が見つからない場合、そのつらい症状はもしかすると「不安障害」が関係しているサインかもしれません。
心の状態と体の状態は密接につながっており、強い不安やストレスが消化器系の不調として現れることは少なくありません。
この記事では、不安障害によって吐き気が引き起こされるメカニズム、具体的な症状やサイン、そして自分自身でできるセルフケアから専門的な治療法、さらに「もう一人で悩まないで」と専門医に相談すべき目安までを詳しく解説します。
吐き気や胃の不調に悩んでいる方はもちろん、その裏に隠された「心」のSOSかもしれないサインに気づき、適切な対処や受診に繋げるためにも、ぜひ最後までご覧ください。

不安障害による吐き気のメカニズム・原因

asian pregnant woman nausea vomit - 吐き気 ストックフォトと画像

「不安」は誰でも感じる自然な感情ですが、それが過剰になったり、日常生活に支障をきたすほど強くなったりすると「不安障害」として診断されることがあります。
不安障害がなぜ吐き気や胃の不調を引き起こすのでしょうか。
そのメカニズムには、私たちの体にある「自律神経」や「ストレスホルモン」、そして「脳と腸の密接な関係」が深く関わっています。

自律神経の乱れと消化器症状

私たちの体には、自分の意思とは無関係に体の機能を調整している「自律神経」があります。
自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」があり、通常はこの二つがバランスを取りながら働いています。

しかし、強い不安やストレスを感じると、この自律神経のバランスが崩れてしまいます。
特に交感神経が過剰に優位な状態が続くと、体は常に緊張モードになり、以下のような消化器症状が現れやすくなります。

  • 胃の動き(蠕動運動)の変化: 交感神経が優位になると、胃や腸の動きが抑制されることがあります。これにより、食べたものがうまく消化されずに胃の中に長く留まり、吐き気や胃もたれ、膨満感を引き起こすことがあります。逆に、副交感神経が刺激されすぎて腸の動きが過剰になり、下痢を引き起こすこともあります。
  • 消化液の分泌異常: ストレスは胃酸や消化酵素の分泌にも影響を与えます。胃酸が過剰に分泌されると、胃の粘膜を刺激して胃痛や胸焼け、吐き気につながることがあります。
  • 血行不良: ストレスによる血管の収縮は、胃腸への血行を悪化させます。血行が悪くなると、胃腸の働きが低下し、消化吸収能力が落ちることで不快な症状が出やすくなります。

このように、自律神経の乱れは、消化器系の機能に直接的な影響を与え、吐き気や胃痛、腹痛、下痢、便秘といった様々な不調となって現れるのです。

ストレスホルモンの影響

不安やストレスを感じると、私たちの体内では「ストレスホルモン」と呼ばれる物質が分泌されます。
代表的なものにコルチゾールやアドレナリンなどがあります。
これらのホルモンは、体が危険に対応するための準備を促す役割がありますが、慢性的にストレスがかかり分泌が増え続けると、心身に様々な悪影響を及ぼします。

特にコルチゾールは、消化器系の機能にも影響を与えることが知られています。
胃酸の分泌を増やしたり、胃の粘膜を傷つけやすくしたりすることで、吐き気や胃炎などの症状を引き起こす可能性があります。

また、脳と腸は「脳腸相関」と呼ばれる密接なネットワークでつながっています。
不安やストレスといった心の情報は、脳から神経伝達物質やホルモンを介して腸に伝わり、腸の動きや消化機能に影響を与えます。
逆に、腸内環境の乱れが脳に伝わり、気分の落ち込みや不安感を増強させることもあります。
不安障害における吐き気は、この脳腸相関の機能異常が深く関与していると考えられています。
脳が感じる過剰な不安が、腸に異常な信号を送り、吐き気という形で現れるのです。

他の精神疾患との関連

吐き気や胃の不調といった身体症状は、不安障害だけでなく、他の精神疾患でも見られることがあります。

  • うつ病: 気分が落ち込むだけでなく、食欲不振や胃の不快感、吐き気といった身体症状を伴うことが少なくありません。うつ病と不安障害は併発しやすいことも知られています。
  • パニック障害: 突然強い不安や恐怖に襲われるパニック発作を起こす病気です。パニック発作時には、動悸、息苦しさ、めまいに加えて、吐き気や腹部の不快感も頻繁に見られます。発作がない時でも、次の発作が起こるのではないかという予期不安によって吐き気を感じる人もいます。
  • 強迫性障害: 特定の思考(強迫観念)が頭から離れず、それを打ち消すために特定の行動(強迫行為)を繰り返してしまう病気です。強い不安を感じる病気であり、その不安に伴って吐き気などの身体症状が現れることがあります。
  • 摂食障害: 過食や拒食を特徴とする病気ですが、食事に関連する強い不安やストレスから吐き気を催したり、意図的に吐く行為を伴ったりすることがあります。

このように、精神的な要因による吐き気は不安障害に特有のものではなく、様々な精神疾患に関連している可能性があります。
そのため、症状が続く場合は、自己判断せず専門家に相談し、適切な診断を受けることが重要です。
他の病気との鑑別や、複数の精神疾患が併存している可能性も考慮する必要があります。

不安障害による吐き気の症状・サイン

不快に感じる女性 - 吐き気 ストックフォトと画像

不安障害による吐き気は、身体的な病気が原因の吐き気とは少し異なる特徴を持つことがあります。
また、吐き気以外にも様々な精神的・身体的な症状を伴うことが一般的です。

精神症状としての吐き気

不安障害における吐き気は、しばしば以下のような特徴を持ちます。

  • 特定の状況で悪化する: 人前で話す、試験を受ける、電車に乗る、特定の場所に行くなど、不安や緊張を感じやすい状況やストレスフルな出来事の前に症状が強く出る傾向があります。
  • 検査しても異常が見つからない: 病院で胃カメラや血液検査など、様々な検査を受けても胃や消化器系に明らかな器質的な異常が見つからないことが多いです。これは、症状が体の構造的な問題ではなく、機能的な問題(自律神経の乱れなど)によって引き起こされているためです。
  • 常にではない、波がある: 症状が一日中続くというよりは、不安が高まった時に強く感じたり、日によって症状の程度に波があったりすることがあります。
  • 「吐きそう」という感覚が強い: 実際に嘔吐することも稀にありますが、「吐きそう」「ムカムカする」といった不快な感覚が持続したり、繰り返し現れたりすることが多いです。
  • 吐くことへの強い恐怖(嘔吐恐怖)を伴う: 特にパニック障害や広場恐怖を伴う不安障害の場合、「もし電車の中で吐いてしまったらどうしよう」「人前で吐くのが怖い」といった、吐くこと自体に対する強い恐怖(嘔吐恐怖)が症状をさらに悪化させることがあります。

これらの特徴は、吐き気が単なる体の不調ではなく、精神的な状態と深く関連している可能性を示唆しています。

その他の身体症状

不安障害は、吐き気以外にも様々な身体症状を伴うことが多いです。
これらの症状が組み合わさることで、日常生活の質が著しく低下することがあります。
よく見られる身体症状には以下のようなものがあります。

  • 消化器系の症状:
    • 胃痛、腹痛
    • 胃の膨満感、もたれ
    • 下痢または便秘(過敏性腸症候群のような症状)
    • 喉のつかえ感(ヒステリー球)
  • 循環器系・呼吸器系の症状:
    • 動悸、心拍数の増加
    • 息苦しさ、過呼吸
    • 胸の痛みや圧迫感
    • 立ちくらみ、めまい
  • 神経・筋肉系の症状:
    • 頭痛、肩こり
    • 体の震え、手のしびれ
    • 異常な発汗
    • 体のぴくつき、こわばり
    • 倦怠感、疲労感
  • その他の症状:
    • 不眠、寝つきが悪い、途中で目が覚める
    • 食欲不振または過食
    • 口の渇き
    • 頻尿

これらの身体症状は、不安やストレスによって引き起こされる自律神経の乱れや筋肉の緊張などによって生じます。
吐き気だけでなく、これらの症状が複数現れている場合は、不安障害である可能性をより強く疑う必要があります。

重要なのは、これらの身体症状は決して「気のせい」ではなく、不安障害という病気によって引き起こされる「本当の」症状であるということです。
つらい症状に悩まされている方は、一人で抱え込まず、まずは医療機関に相談することが大切です。

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不安障害による吐き気の対処法

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不安障害による吐き気を和らげるためには、症状が出た時の対処法だけでなく、不安そのものを軽減するためのアプローチが必要です。
ここでは、自分自身でできるセルフケアと、薬以外の対応策について解説します。

セルフケアによる対処法

セルフケアは、不安や吐き気症状の軽減に役立つだけでなく、不安障害の治療を補完し、再発予防にも繋がります。
毎日の生活に取り入れやすいものから試してみましょう。

呼吸法・リラクゼーション

不安を感じると、呼吸が浅く速くなりがちです。
意識的に呼吸を整えることで、自律神経のバランスを整え、リラックス効果を得られます。

  • 腹式呼吸: 静かな場所で座るか横になり、お腹に手を当てます。鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹を膨らませます。息を吸う時間の倍くらいの時間をかけて、口からゆっくりと息を吐き出し、お腹をへこませます。数回繰り返すだけでも効果があります。
  • 筋弛緩法: 体の各部分に順番に力を入れ、数秒キープしてから一気に力を抜くという方法です。手、腕、肩、顔、首、背中、お腹、足など、体の各部位で行います。力を抜く時に、体の緊張が和らぐのを感じるように意識します。
  • 瞑想(メディテーション): 静かな場所に座り、楽な姿勢をとります。目を閉じるか、一点を見つめ、呼吸に意識を集中します。頭の中に様々な思考が浮かんできても、それを否定せず、ただ観察するような感覚で受け流します。数分間行うだけでも、心が落ち着くのを感じられることがあります。

マインドフルネス

「今、この瞬間」に意識を集中し、ありのままの自分を受け入れる練習です。
不安や吐き気といった不快な感覚に囚われすぎず、客観的に観察する力を養います。

  • 食べるマインドフルネス: 食事を摂る際に、一口一口の味、香り、舌触り、噛む音などに意識を集中します。
  • 歩くマインドフルネス: 歩く際に、足の裏が地面に触れる感覚、体の重心の移動、周りの景色や音に注意を向けます。
  • 日常のマインドフルネス: 歯磨き、シャワー、お茶を飲むなど、日常生活のちょっとした動作に意識的に注意を向ける練習をします。

生活習慣の見直し

規則正しく健康的な生活は、心身の安定に不可欠です。

  • 規則正しい生活: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけます。体内時計が整うことで、自律神経のバランスも安定しやすくなります。
  • 十分な睡眠: 睡眠不足は不安やストレスを増大させます。自分に必要な睡眠時間を確保しましょう。寝る前にカフェインやアルコールを控えたり、寝室の環境を整えたりするのも効果的です。
  • バランスの取れた食事: 偏りのない食事を心がけ、特に胃腸に負担をかけにくい、消化の良いものを摂るようにしましょう。カフェイン、アルコール、辛いもの、脂っこいものなどは、吐き気や胃の不調を悪化させる可能性があるため、控えめにするのが望ましいです。
  • 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、無理のない範囲での運動は、ストレス解消になり、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。
  • ストレス解消法を見つける: 趣味、友人との会話、アロマセラピー、入浴など、自分にとって心地よい、リラックスできる時間を作りましょう。

避けるべきこと

症状を悪化させる可能性のある行動は避けましょう。

  • 無理な頑張り、抱え込み: 一人で全てを解決しようとせず、周囲に助けを求めたり、休息を十分に取ったりしましょう。
  • 過剰な情報収集: 不安な時にインターネットで症状について調べすぎると、かえって不安が増大することがあります。信頼できる情報源を選び、適度な情報収集に留めましょう。
  • ネガティブな思考の反芻: 嫌な出来事や将来への不安について繰り返し考えすぎることは、不安を増強させます。思考を別の方向へ向けたり、ポジティブな側面に意識を向けたりする練習も有効です(難しい場合は専門家のサポートを受けましょう)。
  • 不健康な対処行動: アルコールに頼る、ヤケ食いをするなど、一時的に気分が紛れても、長期的には心身の健康を損ない、症状を悪化させる可能性があります。

薬以外の対応策

セルフケアに加えて、以下のような薬に頼らないアプローチも不安や吐き気症状の緩和に役立つことがあります。

  • アロマセラピー: ラベンダーやカモミールなど、リラックス効果があると言われるアロマオイルを使用する。
  • 温める: 胃の周りを温めることで、胃腸の動きがスムーズになり、吐き気や不快感が和らぐことがあります。温かい飲み物を飲んだり、使い捨てカイロなどを使用したりするのも良いでしょう。
  • ツボ押し: 手首の内側にある「内関(ないかん)」というツボは、乗り物酔いや吐き気に効果があると言われています。反対側の手の指で軽く押したり揉んだりしてみてください。
  • 軽いストレッチやヨガ: 体の緊張を和らげ、リラックス効果を促進します。
  • 専門家によるカウンセリング: 薬物療法と並行して、または薬を使いたくない場合に、公認心理師や臨床心理士といった専門家によるカウンセリングを受けることも有効です。不安の背景にある思考パターンや感情に気づき、対処法を身につけるサポートを受けられます。特に後述する精神療法(認知行動療法など)は、専門家による指導の下で行われます。

これらのセルフケアや薬以外の対応策は、全ての人に同じ効果があるわけではありません。
自分に合った方法を見つけ、根気強く続けてみるβことが大切です。
症状がつらい場合は、これらの方法だけで解決しようとせず、必ず専門家のアドバイスも参考にしてください。

不安障害の診断と治療法

喉に違和感を感じそうな若い女性 - 吐き気 ストックフォトと画像

不安障害による吐き気は、適切な診断と治療によって改善が期待できる病気です。
専門医による診断方法と、一般的な治療法について解説します。

診断方法

不安障害の診断は、主に医師による問診と、必要に応じた心理検査や身体的な検査に基づいて行われます。

  1. 問診:
    • 現在の症状(吐き気、胃痛、その他の身体症状、精神的な不調など)について、いつから、どのような状況で現れるか、どのくらいの頻度か、症状の程度などを詳しく聞き取ります。
    • 既往歴、家族歴(精神疾患の有無など)について確認します。
    • 現在の生活環境、仕事や人間関係でのストレス、睡眠や食欲の状態などを把握します。
    • アルコールやカフェインの摂取量、喫煙習慣なども確認します。
    • 服用中の薬についても詳しく尋ねられます。
  2. 心理検査:
    • 不安や抑うつの程度を評価するための質問紙法(例:ハミルトン不安評価尺度、ベックうつ病尺度など)が行われることがあります。
    • 質問への回答を通して、不安のパターンや思考の癖などを把握するのに役立ちます。
  3. 身体的な検査:
    • 吐き気や胃の不調がある場合、まずは身体的な病気(胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、腸の病気、甲状腺の病気など)の可能性を否定するために、血液検査、胃カメラ検査、腹部超音波検査などが行われることがあります。
    • これらの検査で異常が見つからない場合に、心因性のもの、特に不安障害による症状が疑われます。

これらの情報をもとに、医師は国際的な診断基準(DSM-5など)を参照しながら、不安障害の種類(全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害など)や重症度を診断し、最適な治療方針を提案します。
診断は総合的に行われるため、一度の診察で確定しない場合もあります。

薬物療法

不安障害の治療には、症状を和らげるために薬物療法が用いられることが一般的です。
特に吐き気や身体症状が強く出ている場合、薬によって症状をコントロールすることが、精神的な安定にも繋がります。

使用される主な薬剤の種類と特徴は以下の通りです。

薬剤の種類 特徴・効果 副作用(代表的なもの) 注意点
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
(抗うつ薬の一種)
不安や抑うつ気分を和らげる効果が高く、不安障害治療の中心となる薬です。脳内のセロトニンの働きを調整し、脳腸相関の改善にも寄与すると考えられています。効果が現れるまで数週間かかる場合があります。 吐き気、食欲不振、下痢、便秘、眠気、不眠、性機能障害など(服用初期に見られやすいが、次第に軽減することが多い) 効果が出るまで時間がかかるため、すぐに効果が出なくても自己判断で中止しないこと。急に中止すると離脱症状が出ることがあるため、減量・中止は必ず医師の指示に従うこと。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
(抗うつ薬の一種)
SSRIと同様に不安や抑うつ気分を改善します。セロトニンに加えノルアドレナリンにも作用するため、意欲低下や倦怠感にも効果が期待できます。 SSRIと似た副作用に加え、血圧上昇、動悸などが見られることもあります。 SSRIと同様に、効果が出るまで時間がかかること、自己判断での中止は危険であること。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬 不安や緊張を比較的速やかに和らげる効果があります。頓服薬として症状が強い時に使用されることもあれば、短期間、毎日服用することもあります。 眠気、ふらつき、集中力低下、筋弛緩作用など。長期連用や大量服用で依存性が生じる可能性があります。 即効性がありますが、依存性が問題となるため、漫然と長期間使用することは推奨されません。医師の指示された用法・用量を厳守し、自己判断での増量・中止は絶対にしないこと。
三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬 比較的作用が強く、難治性の不安障害や併存するうつ病に対して使用されることがあります。SSRIやSNRIよりも副作用が出やすい場合があります。 口の渇き、便秘、眠気、めまい、立ちくらみ、心電図異常など。 副作用の管理が重要です。他の薬との飲み合わせにも注意が必要です。
タンドスピロン(セロトニン1A受容体刺激薬) 非ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。不安を和らげる効果があり、依存性のリスクが低いとされています。効果が出るまでやや時間がかかる場合があります。[日本医薬品医療機器総合機構(PMDA)が承認した添付文書情報]では、不安障害治療における有効性と安全性がEBMに基づき記載されています。 眠気、ふらつき、胃部不快感など(比較的軽度なことが多い) 効果が出るまで時間がかかる場合があります。他の薬との飲み合わせに注意が必要です。
漢方薬 不安やそれに伴う身体症状(吐き気、胃の不快感、イライラ、不眠など)に対して、体質や症状に合わせて処方されます。例:半夏厚朴湯(吐き気、喉のつかえ)、六君子湯(胃もたれ、吐き気)、柴胡加竜骨牡蛎湯(不安、不眠、動悸)など。 比較的副作用は少ないとされますが、体質に合わない場合は胃部不快感、下痢、発疹などが現れることがあります。 医療用漢方薬も医師の処方が必要です。症状や体質に合わせて選ばれるため、自己判断での服用は避けましょう。他の薬との飲み合わせに注意が必要です。
制吐剤、胃腸薬 吐き気や胃の不快感が強い場合に、一時的に症状を和らげるために処方されることがあります。あくまで対症療法であり、不安そのものに作用するわけではありません。 薬によって異なります。(例:眠気、口の渇きなど) 不安障害の根本的な治療にはならないため、原因である不安障害の治療と並行して使用することが重要です。

これらの薬剤は、患者さんの症状の種類や重症度、体質、他の病気の有無、併用薬などを総合的に判断して医師が選択します。
薬物療法の目的は、症状をコントロールし、患者さんが精神療法などに取り組みやすい状態にすること、そして日常生活の質を向上させることです。

薬物療法を受ける際は、必ず医師の指示通りの用法・用量を守り、自己判断で薬の量を変えたり、服用を中止したりしないことが非常に重要です。
副作用が現れた場合は、自己判断せず速やかに医師に相談しましょう。

精神療法

精神療法は、薬物療法と並んで不安障害の主要な治療法です。
不安を感じやすい思考パターンや行動の癖を修正し、不安への対処スキルを身につけることを目的とします。

  • 認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy): 不安障害の治療として最もエビデンスがある精神療法です。不安を引き起こす「認知(考え方)」や「行動」に焦点を当て、それを修正していくことで不安を軽減します。具体的には、不安を生み出す非合理的な考え方(例:「失敗したら完璧に終わりだ」「人から嫌われるに違いない」)に気づき、より現実的で柔軟な考え方に変える練習をしたり、不安を感じる状況に段階的に慣れていく(曝露療法)などの技法を用います。吐き気に対する恐怖が強い場合は、その恐怖に焦点を当てた認知行動療法が行われることもあります。通常、専門のセラピストと週に1回など定期的にセッションを行い、数週間から数ヶ月かけて進めます。
  • 曝露療法: 不安や恐怖を感じる対象や状況に、安全な環境で段階的に、意図的に身を置くことで、不安に慣れていく治療法です。例えば、電車の中で吐き気がすると不安になる人であれば、短い時間だけ電車に乗ることから始め、徐々に時間や距離を延ばしていく、といった形で進めます。
  • 応用リラクゼーション法: 筋弛緩法などのリラクゼーション技法を習得し、不安を感じ始めた初期の段階でリラクゼーションを実行することで、不安の増大を抑えるスキルを身につけます。
  • 集団療法: 同じような悩みを抱える人たちとグループで話し合い、経験や対処法を共有することで、孤立感を軽減し、新たな視点や対処法を学ぶことができます。

精神療法は、薬物療法と組み合わせることで相乗効果が期待できる場合が多く、不安障害の根本的な回復や再発予防に有効とされています。
自分に合った精神療法やセラピストを見つけることが重要です。

吐き気と不安障害で専門医に相談すべき目安

a young japanese woman beautician (therapist) - クリニック ストックフォトと画像

吐き気や胃の不調が続くけれど、「気のせいかな」「もう少し様子を見よう」と一人で抱え込んでいませんか?
特にそれが不安やストレスに関連しているかもしれないと感じる場合、適切なタイミングで専門医に相談することが非常に重要です。
ここでは、受診を検討すべき具体的な目安と、心療内科・精神科の選び方について解説します。

受診を検討するタイミング

以下のいずれかに当てはまる場合は、医療機関、特に心療内科や精神科への受診を検討することをおすすめします。

  • 吐き気や胃の不調が続く、または悪化している: 数週間以上症状が続いたり、日を追うごとに症状が重くなったりする場合。
  • 日常生活に支障が出ている: 吐き気や不安のために、仕事や学校に行けない、家事ができない、人と会うのがつらい、外出が困難になったなど、普段通りの生活を送ることが難しくなっている場合。
  • 身体的な検査で異常が見つからないのに症状が続く: 内科などで胃カメラなどの検査を受けたが、胃や腸に明らかな病気が見つからず、「異常なし」と言われたにも関わらず、吐き気や不調が続いている場合。
  • 吐き気以外にも様々な身体症状を伴う: 動悸、息苦しさ、めまい、頭痛、体の震え、不眠、倦怠感など、上で述べたような他の身体症状も複数現れている場合。
  • 強い不安や恐怖、気分の落ち込みを感じる: 吐き気だけでなく、常に漠然とした不安がある、特定のことを過剰に心配してしまう、理由もなく強い恐怖に襲われる、気分が沈んで何もする気にならないといった精神的な症状を自覚している場合。
  • セルフケアだけでは改善しない: 休息をとる、リラックス法を試すなど、自分でできる限りのことをしても症状が改善しない場合。
  • 原因が分からない、どうしたら良いか分からないと感じる: なぜこんなに吐き気がするのか、どう対処すれば良いのか分からず、困惑し、つらい気持ちが続いている場合。
  • 食欲不振や体重減少がある: 吐き気のために食事が十分に摂れず、体重が減ってきている場合。これは身体的な病気のサインである可能性もありますが、心因性の可能性も含めて早期の受診が必要です。
  • 死にたい、消えてしまいたいなど、つらい気持ちがある: 精神的に追い詰められているサインです。一刻も早く専門家の助けが必要です。

これらのサインは、「もう一人で抱え込まないで」という心や体からのSOSです。
早期に専門家による適切な診断と治療を受けることが、症状の改善と回復への第一歩となります。

心療内科・精神科の選び方

吐き気や身体症状が中心で、それが精神的なストレスや不安と関連している可能性が高いと感じる場合は、心療内科や精神科の受診が適しています。

  • 心療内科と精神科の違い:
    • 心療内科: 主に精神的な要因が原因で体に症状が現れる「心身症」を専門とします。吐き気、胃痛、頭痛、動悸など、身体症状が主な訴えで、その背景に心理的な問題がある場合に適しています。
    • 精神科: 気分障害(うつ病、双極性障害)、不安障害、統合失調症など、心の病気そのものを専門とします。精神症状(不安、幻覚、妄想、思考障害など)が主な訴えである場合に適しています。
    • どちらの科でも不安障害を診察・治療できますが、吐き気など身体症状が前面に出ている場合は心療内科の方が、精神的なつらさがより強い場合は精神科の方が、アプローチが合う場合があります。迷う場合は、まずは心療内科を受診するか、事前にクリニックに問い合わせてみるのも良いでしょう。
  • クリニック選びのポイント:
    • アクセス: 定期的に通院する必要がある場合もあるため、自宅や職場からの通いやすさを考慮しましょう。
    • 医師との相性: 医師に話しやすく、安心して相談できる雰囲気かどうかも重要です。初診で「合わないな」と感じたら、別のクリニックを探すことも考慮しましょう。
    • 治療方針の説明: 診断結果や治療方針(薬物療法を行うか、精神療法を勧めるかなど)について、丁寧に分かりやすく説明してくれるか確認しましょう。
    • 口コミや評判: インターネット上の口コミや、知人の紹介なども参考にしてみるのも良いでしょう。ただし、口コミはあくまで個人の感想であるため、全てを鵜呑みにせず、複数の情報源を参考にすることが大切です。
    • 予約システム: 予約が取りやすいか、オンライン予約に対応しているかなども確認しておくと便利です。

いきなり専門クリニックに行くのに抵抗がある場合は、まずはかかりつけの内科医に相談してみるのも良い方法です。
内科医が必要と判断すれば、適切な専門医を紹介してくれるでしょう。

最も大切なことは、「つらい症状を一人で我慢しない」ことです。
勇気を出して専門家のドアを叩くことが、改善への大きな一歩となります。

吐き気と不安障害:一人で悩まず専門家へ

患者に症状を説明する男性医師の手 - クリニック ストックフォトと画像

吐き気や胃の不調が続く時、単なる体の問題ではなく、心のサインである「不安障害」が隠れている可能性について解説しました。
強い不安やストレスは、自律神経やストレスホルモンを介して胃腸の働きに影響を与え、吐き気や様々な身体症状を引き起こします。
これは決して「気のせい」ではなく、不安障害という病気によって引き起こされる本当につらい症状です。

この記事でご紹介したように、不安障害による吐き気には、特定の状況で悪化したり、検査で異常が見つからなかったりといった特徴があります。
また、動悸、息苦しさ、めまい、不眠など、吐き気以外にも様々な身体症状を伴うことも少なくありません。

症状を和らげるためには、腹式呼吸やマインドフルネスといったセルフケア、規則正しい生活習慣の見直しも有効ですが、症状が日常生活に支障をきたしている場合や、身体的な病気が否定された後も症状が続く場合は、専門家への相談が必要です。

心療内科や精神科では、問診や検査を通して不安障害を正確に診断し、症状の程度や種類に合わせて薬物療法や認知行動療法などの精神療法を組み合わせた治療を行います。
これらの専門的な治療によって、不安や吐き気といったつらい症状の改善が期待できます。

「もしかして不安障害かも?」と感じたら、勇気を出して専門家のドアを叩いてみてください。
適切なサポートを受けることで、症状は必ず改善に向かいます。
一人で抱え込まず、専門家と一緒に回復への道を歩み始めましょう。
あなたのつらい症状が少しでも和らぎ、安心して毎日を過ごせるようになることを心から願っています。


免責事項:
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個別の症状や健康状態に関するご相談は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導に従ってください。本記事の情報に基づくいかなる行動についても、当方は責任を負いません。

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