生理が8日以上続くのは過長月経?原因と病気のリスク・対処法

生理の期間がいつもより長かったり、一度終わったと思ったのにまた出血があったりすると、「もしかして何か異常なのかな?」と不安になりますよね。特に、生理が8日以上ダラダラと続く状態は「過長月経(かちょうげっけい)」と呼ばれ、何らかの原因が隠れている可能性があります。過長月経は、日常生活に支障をきたすだけでなく、貧血を引き起こしたり、子宮や卵巣の病気のサインであることも少なくありません。ご自身の体の状態を正しく理解し、適切な対応をとることが大切です。この記事では、過長月経の定義から、考えられる様々な原因、具体的な症状、そしていつ病院を受診すべきか、どのような検査や治療があるのかを詳しく解説します。生理の異常で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

過長月経とは?定義と基準

まず、過長月経がどのような状態を指すのか、その定義と基準について解説します。自分の生理期間がこれに当てはまるのかを確認してみましょう。

月経期間の正常範囲

一般的に、女性の月経周期や期間には個人差がありますが、正常とされる範囲があります。日本産科婦人科学会によると、正常な月経期間は3~7日間とされています。月経周期は25~38日程度、出血量は20~140ml程度が目安とされていますが、これらはあくまで一般的な範囲であり、多少のずれがあっても問題ない場合も多くあります。しかし、この範囲から大きく外れる場合は、月経異常の可能性があります。

8日以上の出血は過長月経の目安

過長月経は、月経期間が8日を超える状態を指します。つまり、生理が始まってから完全に終わるまでが9日以上かかる場合です。出血の量は多くなくても、少量の出血がダラダラと長く続く場合も過長月経に含まれます。

たとえば、最初の数日は通常の量の出血があり、その後、数日間にわたってナプキンに少量つく程度の出血が続く場合も過長月経と診断されることがあります。生理が終わったと思ったらまた少量の出血が始まる、というパターンも含まれることがあります。

なぜ8日以上が目安となるのかというと、統計的に見て、この期間を超える出血には何らかの原因が隠れている可能性が高まるからです。単なる体調や周期のばらつきを超えたサインとして捉えられます。

他の月経異常との違い(補足的に)

月経に関連する異常は過長月経だけではありません。過長月経と間違えやすかったり、合併して起こりやすかったりする他の月経異常についても簡単に触れておきましょう。

  • 過多月経(かたげっけい): 月経期間の出血量が異常に多い状態(目安として140mlを超える)を指します。通常サイズのナプキンが1~2時間でいっぱいになる、レバー状の大きな血の塊がたくさん出るなどが典型的な症状です。過長月経の原因となる病気が、同時に過多月経も引き起こすことがよくあります。
  • 過少月経(かしょうげっけい): 月経期間の出血量が異常に少ない状態を指します。生理が2日以内に終わってしまう、ナプキンがほとんど汚れないなどが特徴です。
  • 頻発月経(ひんぱつげっけい): 月経周期が24日より短い状態です。生理が月に2回来る、と感じることもあります。
  • 稀発月経(きはつげっけい): 月経周期が39日より長い状態です。生理が飛んでしまう、なかなか来ない、と感じることがあります。
  • 不正出血(ふせいしゅっけつ): 月経期間以外に性器から出血がある状態を指します。排卵期出血や妊娠初期の出血、病気による出血など、原因は多岐にわたります。過長月経と不正出血を区別することは重要ですが、ダラダラ続く出血が過長月経なのか、あるいは月経とは別の不正出血なのか、自己判断が難しい場合もあります。

過長月経かどうかを判断する際は、まずはご自身の月経期間が8日を超えているかを意識してみてください。そして、もし気になる症状がある場合は、他の月経異常の可能性も考慮し、婦人科で相談することが大切です。

過長月経の主な原因

過長月経は、様々な原因によって引き起こされます。単なる一時的な体の不調の場合もあれば、治療が必要な病気が隠れていることもあります。ここでは、過長月経の主な原因について詳しく見ていきましょう。

ホルモンバランスの乱れ

月経は、脳の視床下部、下垂体、そして卵巣が連携して分泌するホルモンによって厳密にコントロールされています。主にエストロゲン(卵胞ホルモン)プロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが、子宮内膜の増殖と剥離(=月経)を調整しています。

これらのホルモンバランスが崩れると、子宮内膜が適切に発達・維持・剥離されず、月経期間が長くなることがあります。

思春期・更年期などのライフステージ

ホルモンバランスが不安定になりやすい時期として、思春期更年期があります。

  • 思春期: 卵巣機能がまだ十分に成熟しておらず、排卵が起こらなかったり、ホルモン分泌が不安定だったりすることがあります。そのため、月経周期や期間が不規則になりやすく、過長月経が見られることも少なくありません。多くの場合は成長とともに安定していきます。
  • 更年期(特に40代後半から閉経にかけて): 卵巣機能が徐々に低下し、ホルモン分泌が大きく変動します。特にエストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れやすく、これによって月経周期が乱れたり、過長月経や過多月経が起こりやすくなります。この時期の過長月経は、更年期移行期の特徴的な症状の一つでもあります。

機能性出血(排卵性・無排卵性)

器質的な病気がないにも関わらず起こる出血を機能性出血といいます。ホルモンバランスの乱れによるものが多く、排卵がある場合(排卵性機能性出血)と、排卵がない場合(無排卵性機能性出血)があります。

  • 排卵性: 黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が不十分で、子宮内膜が十分に維持できずに月経が長引くことがあります。
  • 無排卵性: 排卵が起こらないため、黄体ホルモンが分泌されず、エストロゲンのみによって子宮内膜が異常に増殖することがあります。その後、ホルモンレベルの低下に伴って子宮内膜が不規則に剥がれ落ち、長期にわたる出血や多量の出血(過多月経と合併)を引き起こすことがあります。思春期や更年期に起こりやすいパターンです。

その他のホルモン異常(甲状腺など)

女性ホルモン以外のホルモン異常も月経周期に影響を与えることがあります。例えば、甲状腺ホルモンの機能異常(甲状腺機能亢進症や低下症)は、月経不順や月経異常の原因となることが知られています。全身の代謝に関わる甲状腺ホルモンは、女性ホルモンの分泌や代謝にも影響を及ぼすと考えられています。

子宮の病気による原因(子宮筋腫・子宮内膜症など)

過長月経の最も一般的な原因の一つとして、子宮に何らかの病気があるケースが挙げられます。

子宮筋腫

子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。多くの女性に見られ、大きさやできる場所によって症状が異なります。特に粘膜下筋腫といって、子宮の内側(子宮内腔)に向かって突出するタイプの筋腫は、過長月経や過多月経の最も代表的な原因となります。筋腫があることで、子宮内膜が異常に増殖したり、子宮の収縮が妨げられたりすることで、出血が長引いたり量が増えたりすると考えられています。

子宮内膜症・子宮腺筋症

子宮内膜症は、本来子宮の内側にのみ存在する子宮内膜組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所で増殖・剥離を繰り返す病気です。強い生理痛や不妊の原因として知られますが、子宮自体の壁の中に子宮内膜組織が入り込んでしまう子宮腺筋症は、子宮の壁全体が厚く硬くなり、過長月経や過多月経、強い生理痛の主要な原因となります。

子宮ポリープ

子宮内膜の一部が異常に増殖してできる、指のような形の良性の突起物です。子宮内腔にできることが多く、小さくても出血の原因となることがあります。月経期間ではない時期の不正出血の原因となることも多いですが、月経期間が長引く原因となることもあります。

子宮頸がん・子宮体がん

子宮にできる悪性の腫瘍です。特に子宮体がんは、初期症状として不正出血や過長月経を伴うことがあります。閉経後の出血は特に注意が必要ですが、閉経前でも可能性はゼロではありません。早期発見のためにも、生理の異常や不正出血が続く場合は、必ず婦人科を受診することが重要です。

機能性出血やその他の原因

前述の通り、ホルモンバランスの一時的な乱れによる機能性出血は、器質的な病気がない過長月経の原因として考えられます。

薬剤性の原因

特定の薬の副作用として、月経異常や出血傾向が見られることがあります。例えば、血液をサラサラにする抗凝固薬や、一部の精神疾患治療薬などが、出血が止まりにくくなることで過長月経の原因となる可能性があります。内服している薬がある場合は、問診時に医師に必ず伝えるようにしましょう。

その他の全身疾患

稀ではありますが、血液の病気(凝固障害など)や肝臓・腎臓の病気など、全身の病気が原因で出血傾向が生じ、過長月経につながる可能性も考えられます。

年齢別の過長月経の原因(特に40代)

過長月経の原因は、年齢によってある程度傾向があります。

  • 思春期: ホルモンバランスの不安定さ(無排卵性周期など)が主な原因です。
  • 生殖可能年齢(20代~30代): 子宮筋腫、子宮内膜症・腺筋症、子宮ポリープなどの器質的な病気が原因であることが多くなります。
  • 40代(更年期移行期): 卵巣機能の低下に伴うホルモンバランスの大きな変動が主な原因となります。特にこの時期は無排卵性周期が増え、子宮内膜が厚くなりすぎて過長月経や過多月経を引き起こしやすいです。また、子宮筋腫や子宮腺筋症がこの年代で症状が顕著になることもあります。子宮体がんの発生率も上昇するため、生理の異常が見られたら自己判断せず、必ず婦人科を受診して検査を受けることが非常に重要です。
  • 閉経後: 本来生理はないはずなので、閉経後の出血は全て不正出血として扱われます。子宮体がんや萎縮性膣炎などが原因として考えられ、すぐに医療機関を受診する必要があります。

ストレスと過長月経の関係

心と体は密接に関係しており、ストレスも過長月経の原因となることがあります。私たちの脳には、月経周期をコントロールする司令塔である「視床下部」があります。視床下部は、脳下垂体を介して卵巣にホルモン分泌の指令を出しています。

過度な精神的ストレスや肉体的疲労は、この視床下部に影響を与え、脳からのホルモン分泌の指令がうまく伝わらなくなったり、卵巣の反応が悪くなったりすることがあります。その結果、エストロゲンやプロゲステロンの分泌バランスが崩れ、排卵が抑制されたり(無排卵)、子宮内膜が不安定になったりして、月経周期が乱れたり、過長月経を引き起こしたりすることがあります。

ストレスが原因の場合、月経期間が長くなるだけでなく、生理周期が不規則になったり、生理痛がひどくなったり、PMS(月経前症候群)が悪化したりすることもあります。しかし、ストレスが原因と決めつける前に、他の原因(特に病気)がないことを医療機関で確認してもらうことが大切です。

過長月経で見られる症状

過長月経の主な症状は「生理期間が長いこと」ですが、期間だけでなく、出血の量や性質、その他の随伴症状にも注意が必要です。

出血がダラダラと続く

過長月経の最も典型的な症状は、月経期間が8日以上ダラダラと続くことです。最初の数日は通常の生理のような出血量でも、その後少量の出血が数日間続くパターンが多く見られます。出血の量はごくわずかでナプキンにつく程度であったり、おりものに血が混ざる程度であったりすることもあります。

一度生理が完全に終わったと思ったのに、数日後や1週間後などに再び少量の出血が見られる場合も、広義には過長月経や不正出血として捉えられ、原因の特定が必要です。

出血量が多い(過多月経を伴う場合)

過長月経の原因となる子宮の病気(子宮筋腫、子宮腺筋症など)がある場合、生理期間が長くなるだけでなく、出血量も異常に多くなる(過多月経を伴う)ことがよくあります。

過多月経の具体的な目安

どれくらいの量から「過多月経」と判断するのか、具体的な目安は以下の通りです。

  • 生理用品の交換頻度が多い: 通常サイズのナプキンが1~2時間も持たずにいっぱいになる、昼間でも夜用の厚手のナプキンが必要になる、夜間に何度もナプキン交換のために起きなければならない。
  • 出血量の全体量が多い: 月経期間全体の出血量が140mlを超える場合(これは計測が難しいですが、上記の交換頻度やナプキン使用枚数などから推測します)。
  • レバー状の血の塊が多い: 経血が固まってできる血の塊(凝血塊)が、握りこぶし大やそれ以上の大きさで頻繁に出る。これは出血量が非常に多いサインです。

過長月経に加えてこれらの過多月経の症状が見られる場合は、貧血のリスクが非常に高くなります。

鮮血や血の塊が出るケース

出血の色は、月経期間中も変化します。一般的には最初が鮮血で、徐々に茶褐色になり、最後は少量のおりものに混ざる程度になります。過長月経の場合、鮮血の期間が長かったり、あるいは期間の終盤になっても鮮血が少量ずつ続いたりすることがあります。

また、前述の通り、レバー状の血の塊が出る場合は、出血量が多い過多月経のサインです。小さな塊が混じる程度なら問題ないことが多いですが、頻繁に大きい塊が出る場合は注意が必要です。

貧血の可能性について

過長月経や過多月経が続くと、出血によって体から鉄分が失われ、鉄欠乏性貧血を引き起こす可能性が高くなります。特に、長期間の出血や多量の出血は、食事からの鉄分摂取だけでは補いきれず、体内の貯蔵鉄も枯渇させてしまいます。

貧血の症状とリスク

貧血になると、体に必要な酸素を運ぶヘモグロビンが不足するため、様々な症状が現れます。

  • 全身倦怠感、疲労感: 体がだるく、疲れやすい。
  • 息切れ、動悸: 少し動いただけでも息が切れる、心臓がドキドキする。
  • めまい、立ちくらみ: 急に立ち上がった時などに目の前が真っ暗になる。
  • 頭痛: 慢性的な頭痛。
  • 顔色や唇、爪の蒼白: 血の気がなく青白い。
  • 爪の異常: 爪が反り返ったり割れやすくなったりする(スプーン状爪)。
  • 異食症: 氷など、通常は食べないものを無性に食べたくなる。

貧血は、集中力の低下やイライラなど精神的な不調にもつながることがあります。重度の貧血を放置すると、心臓に負担がかかるなど、さらに深刻な健康問題を引き起こすリスクもあります。過長月経や過多月経がある方は、貧血になっていないか定期的にチェックすることが大切です。

ひどい生理痛を伴う場合

過長月経の原因となる病気、特に子宮内膜症子宮腺筋症子宮筋腫がある場合、出血期間が長くなるだけでなく、生理痛(月経困難症)も非常に強くなることがよくあります。これらの病気では、子宮内で痛みの原因となるプロスタグランジンという物質が多く作られたり、子宮が腫れて炎症を起こしたりすることで、強い痛みを伴います。

また、出血量が多い場合、経血を排出しようと子宮が過剰に収縮することで、生理痛が悪化することもあります。鎮痛剤が効きにくい、寝込むほどの痛みがあるなど、生理痛がひどい場合は、過長月経と合わせて何らかの病気が隠れている可能性が高いと言えます。

その他(不正出血との鑑別など)

過長月経は、生理の期間が長い状態ですが、生理期間以外にも出血がある場合は「不正出血」として区別されます。しかし、ダラダラと続く少量の出血が、果たして本来の生理が長引いている「過長月経」なのか、あるいは月経周期とは無関係に起こっている「不正出血」なのか、自己判断は難しい場合があります。原因によって診断や治療法が異なるため、気になる出血がある場合は、期間に関わらず医療機関で相談することが重要です。

過長月経になったら?受診の目安

過長月経は、一時的なホルモンバランスの乱れによる場合もありますが、中には早期発見・早期治療が必要な病気が原因となっていることもあります。「いつまで様子を見ていいの?」「どんな症状が出たら病院に行くべき?」と悩む方もいるでしょう。ここでは、過長月経になった場合の受診の目安について解説します。

何日以上続いたら病院へ行くべきか

生理期間が8日以上続く状態が「過長月経」の定義です。したがって、生理が始まってから9日以上出血が続いている場合は、一度婦人科を受診することをおすすめします。

特に、過長月経が毎回のように繰り返される場合や、今回が初めてでも過去にはなかった異常と感じる場合は、積極的に受診を検討しましょう。

こんな症状があればすぐに病院へ

過長月経に加えて、以下のような症状が見られる場合は、単なる過長月経として様子を見るのではなく、できるだけ早く医療機関を受診してください。緊急性の高い場合や、重篤な病気が隠れているサインである可能性があります。

  • 出血量が異常に多い(過多月経を伴う): ナプキンがすぐにいっぱいになる、レバー状の大きな血の塊がたくさん出る、といった過多月経の症状がある場合。
  • 強い貧血症状がある: 出血量が多く、めまい、立ちくらみ、息切れ、動悸、強いだるさなどがひどく、日常生活に支障が出ている場合。顔色が真っ青になるなど、見た目にも貧血が疑われる場合。
  • ひどい腹痛や腰痛を伴う: 我慢できないほどの強い生理痛がある、市販の鎮痛剤が全く効かない場合。
  • 生理期間ではないのに出血がある(不正出血を伴う): 生理が終わったはずなのにまた出血がある、性行為の後に出血があるなど、月経周期と関係なく出血が見られる場合。特に閉経後に再度出血があった場合は、必ずすぐに受診してください。
  • 発熱を伴う: 子宮や卵巣の炎症などが原因の場合があります。
  • 下腹部に強い痛みがあり、出血量も多い場合: 卵巣出血や異所性妊娠(子宮外妊娠)など、緊急性の高い病気の可能性もゼロではありません。
  • 急激な体調不良: 出血多量によるショック症状(意識が朦朧とする、冷や汗が出る、血圧低下など)が見られる場合は、救急車を呼ぶなど緊急対応が必要です。

これらの症状がある場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。

婦人科での検査内容

婦人科を受診すると、過長月経の原因を特定するために様々な検査が行われます。一般的な検査内容を解説します。

問診・内診

まず、医師による詳しい問診があります。

  • 初経の年齢、生理周期、期間、出血量、生理痛の程度など、月経に関する詳細な情報。
  • 出血量や塊の有無、貧血症状(めまい、だるさなど)の有無。
  • 妊娠・出産の経験、既往歴、現在服用している薬(市販薬やサプリメント含む)、アレルギーの有無。
  • 性交渉の経験、将来的な妊娠希望の有無。
  • 家族に婦人科系の病気にかかった人がいるか(家族歴)。
  • ストレスや生活習慣について。

これらの情報は原因特定の手がかりとなるため、正確に伝えるようにしましょう。

次に、内診が行われます。内診では、腟から指を入れて子宮や卵巣の大きさ、形、硬さ、圧痛(押した時の痛み)などを確認します。

超音波検査

経腟超音波検査が最も一般的で、子宮や卵巣の状態を詳しく調べるために非常に有用な検査です。腟の中に細長いプローブ(超音波を発信する器具)を入れて、子宮筋腫の有無・場所・大きさ、子宮腺筋症による子宮の壁の厚み、卵巣の腫れ(卵巣嚢腫など)や子宮内膜の厚みなどを確認します。性交渉の経験がない方や内診が難しい場合は、下腹部にプローブを当てる経腹超音波検査を行うこともあります。

血液検査

血液検査では、主に以下の項目を調べます。

  • 貧血の有無・程度: ヘモグロビン値や貯蔵鉄を示すフェリチン値を測定し、貧血があるかどうか、どの程度の貧血かを確認します。
  • ホルモン値: エストロゲン、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチンなどのホルモン値を測定し、ホルモンバランスの異常や排卵の有無などを確認します。思春期や更年期、無排卵性周期などが疑われる場合に行われます。
  • 甲状腺ホルモン: 甲状腺機能異常が疑われる場合に行われます。
  • 腫瘍マーカー: 悪性腫瘍(がん)の可能性を調べるために、CA125などの腫瘍マーカーを測定することがありますが、腫瘍マーカーの値だけで診断するものではありません。
  • 凝固能: 血液の固まりやすさに異常がないかを調べる場合もあります。

細胞診・組織診

  • 子宮頸がん検診(細胞診): 子宮頸部の細胞を採取して顕微鏡で調べます。子宮頸がんや前がん病変の有無を確認します。
  • 子宮体がん検査(組織診): 子宮内膜の組織を少量採取して顕微鏡で調べます。子宮体がんや子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープなどの診断に用いられます。細い器具を子宮内に入れて組織を擦り取る方法や、子宮鏡で見ながら採取する方法があります。痛みを感じる場合もありますが、診断には非常に重要な検査です。

その他の画像検査(MRIなど)

超音波検査で子宮筋腫の詳しい場所や大きさ、子宮腺筋症の広がりなどが分かりにくい場合や、卵巣の腫瘍と他の組織の鑑別が必要な場合などに、MRI検査を行うことがあります。より詳細な画像情報が得られ、診断の確定に役立ちます。

これらの検査結果を総合的に判断して、過長月経の原因を特定し、適切な治療法が選択されます。

過長月経の診断と治療法

過長月経の診断は、前述の問診や様々な検査の結果に基づいて行われます。そして、治療法は原因によって大きく異なります。ここでは、診断のプロセスと主な治療法について解説します。

過長月経の診断プロセス

婦人科医は、まず患者さんの訴え(問診)と内診、超音波検査の結果から、子宮筋腫や子宮腺筋症、卵巣の腫れなど、器質的な病気の有無を確認します。これらの病気が見つかれば、それが過長月経の主要な原因として診断されます。

器質的な病気が見つからない場合や、ホルモンバランスの乱れが疑われる場合は、血液検査でホルモン値を調べ、機能性出血(無排卵性周期など)やその他のホルモン異常の有無を確認します。

また、不正出血との鑑別が難しい場合や、子宮体がんなどの悪性腫瘍の可能性が否定できない場合は、子宮頸がん検診に加えて子宮体がん検査(組織診)が行われます。

このように、いくつかのステップを経て原因を特定し、診断を確定します。

過長月経の治療方針(原因別)

過長月経の治療は、原因となっている病気や状態に合わせた治療が基本となります。単に出血を止めるという対症療法だけでなく、原因そのものを治療したり、ホルモンバランスを整えたりすることが重要です。

主な原因別の治療方針の例は以下の通りです。

原因疾患 主な治療法
ホルモンバランスの乱れ ホルモン療法(低用量ピル/LEP、黄体ホルモン剤など)、生活習慣改善、ストレスケア
子宮筋腫(過多月経・過長月経) 薬物療法(ホルモン療法、止血剤、鉄剤など)、手術(筋腫核出術、子宮全摘術など)、その他の治療(子宮動脈塞栓術、集束超音波治療など)
子宮内膜症・子宮腺筋症 薬物療法(ホルモン療法、鎮痛剤など)、手術(病巣切除、子宮全摘術など)
子宮ポリープ 子宮鏡下ポリープ切除術
子宮頸がん・子宮体がん 癌の進行度に応じた手術、化学療法、放射線療法
機能性出血 ホルモン療法、止血剤など、経過観察
薬剤性 原因薬剤の中止または変更(医師と相談)、止血剤
貧血を伴う場合 鉄剤の投与(内服または注射)

ホルモン療法について(ピルなど)

ホルモンバランスの乱れによる過長月経や、子宮筋腫・子宮内膜症などによる過多月経・過長月経に対して、ホルモン療法は非常に広く用いられる治療法です。女性ホルモンの分泌を調整することで、子宮内膜の状態をコントロールし、出血のパターンを改善します。

低用量ピル・LEP製剤

最もよく用いられるホルモン療法の一つが、低用量経口避妊薬(OC)LEP製剤(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)です。これらはエストロゲンとプロゲステロンを少量ずつ配合した薬です。

  • 作用: 排卵を抑制し、子宮内膜が厚くなりすぎるのを抑えます。内膜が薄く保たれるため、月経期間の出血量・期間を減らす効果があります。また、ホルモン変動が少なくなるため、月経周期が規則正しくなり、生理痛やPMSの改善にもつながります。
  • LEP製剤: 月経困難症や子宮内膜症の治療薬として保険適用されており、過長月経や過多月経の改善目的でもよく処方されます。様々な種類があり、個々の症状や体質に合わせて選択されます。
  • 注意点: 血栓症(血管の中に血の塊ができる病気)のリスクがわずかに上昇する可能性があるため、喫煙者や特定の既往歴がある方には処方できない場合があります。医師による問診と診察が必要です。

黄体ホルモン療法

プロゲステロン(黄体ホルモン)製剤を服用したり、子宮内に装着したりする治療法です。

  • 作用: 子宮内膜を安定させたり、子宮内膜の増殖を抑えたりする効果があります。出血を止めたり、周期を整えたりする目的で、無排卵性出血や子宮内膜増殖症などによる過長月経に使用されることがあります。
  • 子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS): 子宮内にT字型の器具を挿入し、そこから黄体ホルモンを持続的に放出するシステムです。約5年間効果が持続し、過多月経や月経困難症の治療に非常に有効で、過長月経の改善にもつながります。子宮内膜を非常に薄くするため、月経量が激減したり、ほとんどなくなったりすることもあります。

GnRHアゴニスト・アンタゴニスト

視床下部から分泌されるGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の作用を抑えることで、脳下垂体からのホルモン分泌を抑制し、卵巣からのエストロゲン分泌を低下させる薬です。

  • 作用: 体内の女性ホルモンを閉経後のように非常に低い状態にすることで、子宮内膜を薄くし、子宮筋腫や子宮内膜症の進行を抑え、過長月経・過多月経を改善します。
  • 注意点: ホルモンが低下するため、ホットフラッシュなどの更年期のような症状が現れることがあります。骨密度低下のリスクもあるため、使用期間に制限があることが多いです(通常6ヶ月以内)。注射薬や内服薬があります。

その他の薬物療法(止血剤、鎮痛剤、漢方薬)

過長月経に伴う症状緩和や、ホルモン療法が適さない場合、あるいは原因疾患の治療と並行して、以下のような薬が使用されることがあります。

  • 止血剤: 出血量が特に多い場合に、出血を止める目的で使用されます。トラネキサム酸などが用いられます。
  • 鉄剤: 貧血がある場合に、鉄分を補うために処方されます。内服薬が一般的ですが、吸収が悪い場合や重度の貧血の場合は注射薬が使われることもあります。
  • 鎮痛剤: 強い生理痛がある場合に使用されます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが一般的です。
  • 漢方薬: 体質改善を目指し、補助的に用いられることがあります。過長月経や過多月経、生理痛など、症状や個々の体質に合わせて、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうまる)などが処方されることがあります。漢方薬もれっきとした医薬品ですので、医師や薬剤師に相談の上、使用することが大切です。

手術療法

過長月経の原因が子宮筋腫や子宮ポリープ、子宮腺筋症などで、薬物療法では効果が不十分な場合や、症状が重い場合、あるいは悪性腫瘍が見つかった場合などに手術が検討されます。

子宮内膜掻爬術(しきゅうないまくそうはじゅつ)

子宮内膜を一時的に掻き出す手術です。不正出血の原因を調べたり、緊急の止血目的で行われたりすることがあります。過長月経の診断のために行われることもありますが、再発することも多いです。

子宮鏡下手術(しきゅうきょうかしゅじゅつ)

子宮鏡という細いカメラを腟から子宮内に入れて、子宮内腔にあるポリープや粘膜下筋腫を切除する手術です。お腹を切らずに行えるため、体への負担が比較的少なく、術後の回復も早いことが多いです。

子宮筋腫核出術(しきゅうきんしゅかくしゅつじゅつ)

子宮筋腫だけを取り除く手術です。将来妊娠を希望する場合などに選択されます。筋腫の場所や大きさ、数によって、お腹を大きく開ける開腹手術、小さな穴を数カ所開けて行う腹腔鏡手術、またはロボット支援手術などがあります。

子宮全摘術(しきゅうぜんてきじゅつ)

子宮を全て摘出する手術です。過長月経・過多月経の原因が子宮にあり、薬物療法で改善しない、症状が重い、あるいは悪性腫瘍が見つかった場合などで、かつ将来妊娠を希望しない場合に選択されることがあります。開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術などがあります。卵巣は残すことが多いため、卵巣機能が維持され、すぐに閉経症状が出るわけではありません。

漢方薬や市販薬での対応は可能?(専門家への相談を強調)

過長月経で悩んだ際に、「まずは市販薬や漢方薬で試してみようかな」と考える方もいらっしゃるかもしれません。市販の止血剤や鎮痛剤、あるいはドラッグストアなどで購入できる漢方薬の中には、症状を一時的に和らげる効果が期待できるものもあります。

しかし、過長月経は、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮体がんなど、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。原因が特定されないまま、自己判断で市販薬などを使い続けることは、病気の発見や治療開始を遅らせてしまうリスクがあります。特に、出血量が多い場合は貧血が進行し、体調を崩してしまうこともあります。

市販薬や漢方薬の使用を検討する場合でも、必ず事前に医師や薬剤師に相談し、ご自身の状態や他に服用している薬との飲み合わせなどを確認するようにしてください。そして、症状が改善しない場合や、気になる症状が続く場合は、早めに婦人科を受診し、適切な診断と治療を受けることが最も重要です。

過長月経に関するよくある疑問

過長月経について、患者さんからよく聞かれる疑問にお答えします。

過長月経は自然に治るのか?

過長月経が自然に治るかどうかは、その原因によります。

  • 思春期や更年期: ホルモンバランスの一時的な乱れによるものであれば、年齢とともにホルモンバランスが安定し、自然に改善していく可能性があります。
  • ストレスや一時的な体調不良: 原因となったストレスが解消されたり、体調が回復したりすれば、自然に月経周期や期間が元に戻る可能性があります。
  • 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮ポリープなどの病気: これらの器質的な病気が原因の場合、自然に治ることはほとんどありません。病気の種類や程度に応じた治療が必要となります。特に、子宮筋腫や子宮腺筋症は進行する可能性があり、放置すると貧血が悪化したり、痛みが強くなったりすることもあります。
  • 子宮体がんなど悪性腫瘍: これは自然に治ることはなく、早期に適切な治療を開始する必要があります。

このように、過長月経は単なる体質や一時的な不調ではない可能性が高いため、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、一度婦人科を受診して原因を調べてもらうことが非常に重要です。

生理を止める方法は?

過長月経や過多月経があまりにも辛い場合や、特定の疾患の治療のために、一時的に生理を止めたり、回数を減らしたりすることがあります。医師の管理のもとで、ホルモン療法によって生理をコントロールする方法があります。

  • 低用量ピル/LEP製剤: 連続で服用することで、月経を起こさず(休薬期間をなくすことで)、生理を止めることができます。疾患の治療目的で、医師の指示のもとで行われます。
  • 黄体ホルモン療法: 黄体ホルモンを注射したり、内服したりすることで、子宮内膜の増殖を抑え、出血をコントロールします。
  • 子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS): 子宮内にT字型の器具を挿入し、そこから黄体ホルモンを持続的に放出し、子宮内膜を非常に薄く保ちます。これにより、ほとんど出血がなくなったり、ごく少量になったりすることがあります。
  • GnRHアゴニスト/アンタゴニスト: 女性ホルモンを低下させ、一時的に閉経状態にするため、生理が止まります。

これらの方法は、原因や目的によって医師が最適なものを選択し、処方・管理します。自己判断で生理を止めるための薬剤などを使用することは、健康上のリスクを伴う可能性があるため、絶対に行わないでください。

妊娠と過長月経の関係

過長月経の原因によっては、妊娠に影響を与える可能性があります。

  • 不妊: 過長月経の原因が子宮筋腫(特に粘膜下筋腫)、子宮内膜症子宮腺筋症などである場合、これらの病気が着床を妨げたり、卵管の通過性を悪くしたりすることで、不妊の原因となることがあります。また、無排卵性周期による過長月経の場合は、そもそも排卵がないため自然妊娠が難しくなります。
  • 妊娠初期の出血: 妊娠初期には、着床時の出血や切迫流産、異所性妊娠(子宮外妊娠)などが原因で出血が見られることがあります。これが通常の月経とは違う出血パターンとなり、過長月経や不正出血と間違えてしまう可能性があります。妊娠の可能性がある時期にいつもと違う出血があった場合は、必ず産婦人科を受診して妊娠しているか、出血の原因は何かを確認してもらうことが大切です。
  • 妊娠中の過長月経: 妊娠中は通常生理は停止します。もし妊娠中に月経のような出血が続く場合は、異常な出血であり、流産や早産、前置胎盤などの問題が考えられるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。

過長月経に悩んでおり、将来妊娠を希望する場合は、その旨を医師に伝え、妊娠への影響も考慮した診断・治療計画を立ててもらうことが重要です。

過長月経は不妊の原因になる?

上記の通り、過長月経を引き起こす原因となる病気の中には、不妊の原因となるものがあります。例えば、子宮筋腫や子宮内膜症・腺筋症は、程度によっては卵子の移動や受精、受精卵の着床を妨げる可能性があります。また、ホルモンバランスの乱れによる無排卵性周期が原因の場合、排卵が起こらないため妊娠できません。

したがって、「過長月経があるから必ず不妊になる」というわけではありませんが、不妊の原因となる病気が隠れている可能性があるため、放置しないことが重要です。妊娠を希望する場合は、早めに婦人科を受診して原因を特定し、必要に応じて不妊治療も視野に入れた相談を始めると良いでしょう。

検査や治療は痛い?

婦人科の検査や治療に対する不安を感じる方もいるかもしれません。

  • 内診・超音波検査: 一般的に大きな痛みを伴う検査ではありませんが、個人差があります。力を抜いてリラックスすることで、痛みは軽減されることが多いです。内診に抵抗がある場合や性交渉経験がない場合は、経腹超音波検査が可能か相談することもできます。
  • 子宮体がん検査(組織診): 子宮内膜を採取する際に、痛みを伴うことがあります。生理痛のような痛みや、一瞬チクっとした痛みを感じることが多いです。痛みに弱い方や不安が強い場合は、事前に医師に相談してみましょう。麻酔を使用する場合もあります。
  • 手術: 手術は麻酔下で行われるため、手術中に痛みを感じることはありません。術後に痛みが伴う場合は、鎮痛剤が処方されます。

検査や治療に対する不安は遠慮せずに医師に伝えましょう。安心して検査や治療を受けられるように、配慮してもらえるはずです。

まとめ:過長月経で悩んだら専門医へ相談を

生理が8日以上ダラダラと続く「過長月経」は、多くの女性が経験する可能性のある月経異常の一つです。一時的な体調不良やストレスが原因の場合もありますが、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮体がんなど、治療が必要な病気が隠れていることも少なくありません。

過長月経を放置すると、貧血が進行して日常生活に支障が出たり、隠れた病気が悪化したりするリスクがあります。特に、出血量が多い場合(過多月経)、強い生理痛を伴う場合、あるいは不正出血も気になる場合は、早めに婦人科を受診することが非常に重要です。

婦人科では、問診、内診、超音波検査、血液検査、子宮体がん検査などを行い、過長月経の正確な原因を診断します。原因が特定されれば、ホルモン療法(低用量ピル/LEP製剤、黄体ホルモン療法など)や手術療法など、原因に応じた適切な治療法が選択されます。適切な診断と治療を受けることで、過長月経やそれに伴う辛い症状(過多月経、貧血、生理痛など)は改善されることがほとんどです。

生理の異常で悩んだら、「これくらいで病院に行っていいのかな?」とためらわず、まずは専門医である婦人科医に相談してみましょう。不安な気持ちを打ち明けるだけでも、心が軽くなることもあります。ご自身の体を大切にするためにも、勇気を出して受診することをおすすめします。

【免責事項】
この記事は、過長月経に関する一般的な情報を提供することを目的としており、医学的な診断や助言を代替するものではありません。個々の症状や健康状態については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。この記事の情報に基づいて行われた行動によって生じたいかなる損害についても、当方は一切責任を負いません。

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