日本において、新たな選択肢として経口妊娠中絶薬が承認されたことは、多くの人々にとって重要なニュースでした。
これまで妊娠中絶は主に手術によって行われてきましたが、薬による方法は女性の身体や心に与える影響が異なる可能性があります。
この記事では、日本で承認された経口妊娠中絶薬について、その仕組み、服用できる期間や条件、気になる費用、メリット・デメリット、実際の服用方法や流れ、そしてどこで処方してもらえるのかといった点まで、詳しく解説します。
人工妊娠中絶手術との違いや、服用にあたっての注意点、よくある疑問にもお答えしますので、経口妊娠中絶薬について知りたいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
日本で承認された経口中絶薬(メフィーゴパック)
経口妊娠中絶薬は、薬を服用することによって人工的に妊娠を終了させる方法です。
日本で承認された薬剤は、特定の妊娠週数まで使用可能であり、手術以外の選択肢として注目されています。
日本で初めて製造販売が承認された経口妊娠中絶薬は、「メフィーゴパック」という名称の薬剤です。
この薬剤は、ミフェプリストンとミソプロストールという異なる作用を持つ2種類の錠剤がセットになっています。
ミフェプリストンは、妊娠を維持するために必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きを抑える作用があります。
これにより、子宮内膜から胎芽(たいが)や胎児が剥がれやすくなります。
一方、ミソプロストールは、子宮を収縮させて子宮内容物(胎芽・胎児や子宮内膜など)を体外に排出させる作用があります。
この2種類の薬を順番に服用することで、妊娠初期の段階で人工的に妊娠を終了させる仕組みとなっています。
人工妊娠中絶手術との違い
人工妊娠中絶の方法は、大きく分けて手術による方法と、日本で承認された経口妊娠中絶薬による方法があります。
それぞれの主な違いを比較してみましょう。
人工妊娠中絶手術は、子宮内容物を医療器具を使って体外に取り出す方法です。
一般的に、妊娠初期に行われる吸引法と、妊娠週数が進んだ場合に行われる掻爬法(そうはほう)があります。
手術は通常、麻酔下で行われ、短時間で終了することが多いですが、子宮内に医療器具を挿入するため、身体への侵襲(しんしゅう)があります。
一方、経口妊娠中絶薬による方法は、手術器具を子宮に挿入する必要がなく、薬を服用するだけで完結します。
身体的な負担は手術よりも少ないと感じる人もいますが、薬の作用による出血や痛みが一定期間続きます。
また、服用から完了までの経過に時間がかかる点や、確実に完了したかを確認するための診察が必須である点が異なります。
比較項目 | 経口妊娠中絶薬 | 人工妊娠中絶手術 |
---|---|---|
方法 | 薬(2種類の錠剤)を服用 | 医療器具による子宮内容物の除去(吸引法/掻爬法) |
対象期間 | 妊娠初期(承認された特定の週数まで) | 妊娠初期~中期(中期中絶は対応可能な医療機関限られる) |
身体への侵襲 | 手術器具の挿入なし | 子宮内への医療器具挿入あり |
完了までの時間 | 服用開始から数時間~数日(確認診察含む) | 手術自体は短時間(回復期間は必要) |
服用/施術場所 | 原則として医療機関の管理下 | 医療機関(手術室など)での施術 |
麻酔 | 原則不要(必要に応じて鎮痛剤など使用) | 通常は必要(局所麻酔または全身麻酔) |
精神的な側面 | 自宅に近い環境での経過観察が可能な場合あり(要確認) | 手術に対する抵抗感など |
合併症リスク | 大量出血、不完全流産、感染症など | 出血、子宮穿孔、感染症、頸管損傷など |
完了の確認 | 服用数日~1週間後の診察が必須 | 術後の診察で確認 |
このように、経口妊娠中絶薬は手術とは異なる特徴を持つ選択肢であり、それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、自身の状況や希望に合った方法を選択することが重要です。
経口妊娠中絶薬の対象期間と条件
経口妊娠中絶薬は、どのような状況でも使用できるわけではありません。
使用できる期間や、処方を受けるための条件が定められています。
経口中絶薬は何週まで使用できる?
日本で承認されている経口妊娠中絶薬(メフィーゴパック)は、特定の妊娠週数まで使用が認められています。
具体的には、妊娠9週0日までとされています。
妊娠週数の数え方は、最後の生理が始まった日を「0週0日」として計算します。
超音波検査によって確認された胎児の大きさなどからも、妊娠週数を正確に診断します。
この「妊娠9週0日まで」という期間は、薬の有効性と安全性が確認されている範囲です。
この期間を過ぎた妊娠に対しては、経口妊娠中絶薬を使用することはできません。
処方を受けるための条件
経口妊娠中絶薬は、市販薬のように誰でも購入できるものではありません。
必ず医師による診察を受け、処方してもらう必要があります。
処方を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
主な条件としては、以下の点が挙げられます。
- 妊娠週数が9週0日以内であること: 前述の通り、最も重要な条件です。
超音波検査などで正確な週数を確認します。 - 正常な子宮内妊娠であること: 子宮外妊娠(異所性妊娠)や、胞状奇胎などの特殊な妊娠ではないことが確認されている必要があります。
- 薬の禁忌に該当しないこと: 重篤な循環器疾患や肝疾患、腎疾患など、薬の服用が健康状態に悪影響を与える可能性のある疾患がないかを確認します。
特定の薬剤を服用している場合も禁忌となることがあります。 - 血を固まりにくくする薬(抗凝固薬など)を服用していないこと: 出血のリスクが高まるため、これらの薬剤を服用している場合は原則として使用できません。
- ステロイド薬を継続的に使用していないこと: 一部のステロイド薬との併用は推奨されていません。
- 薬のアレルギー歴がないこと: ミフェプリストンやミソプロストール、または他の成分に対してアレルギー反応を起こしたことがないか確認します。
- 薬の服用手順やリスクについて十分に理解し、同意していること: 医師から薬の作用、服用方法、予測される経過、副作用、失敗した場合の対応などについて十分な説明を受け、納得した上で同意することが必要です。
- 同意書への署名: 本人からの同意書に加えて、原則としてパートナー(配偶者や交際相手など)の同意書も必要となる場合があります。
ただし、DV被害を受けているなど、状況によってはパートナーの同意なしで中絶が可能なケースもありますので、詳細は医療機関に相談が必要です。 - 医療機関の体制: 経口妊娠中絶薬は、服用から完了までの経過観察や、副作用が起こった場合の対応など、緊急時にも対応できる体制が整った医療機関でのみ処方が可能です。
服用も原則として医療機関内で行われます。
これらの条件を満たしているかどうかは、医師の診察、問診、検査(超音波検査、血液検査など)によって判断されます。
経口妊娠中絶薬の費用
経口妊娠中絶薬による方法は、費用についても気になるところです。
手術と比較してどうなのか、保険は適用されるのかなど、詳しく見ていきましょう。
費用はいくらくらい?保険適用は可能か
経口妊娠中絶薬(メフィーゴパック)による中絶は、病気の治療ではないため、健康保険や公的医療保険の適用対象外です。
したがって、費用は全額自己負担となります。
費用は、薬剤費に加えて、診察料、各種検査費用(妊娠確認、週数特定、健康状態の確認など)、薬を服用する際の医療機関での管理費用、服用後の経過観察費用、そして完了を確認するための診察費用など、すべてを含んだ総額として医療機関ごとに設定されています。
現時点では、経口妊娠中絶薬が承認されて間もないため、医療機関によって費用にばらつきが見られます。
報道などによると、総額で10万円程度から20万円を超えるケースまで、幅があるようです。
この費用は、人工妊娠中絶手術(初期妊娠)と比較すると、同等か、あるいはやや高めになる傾向があるとも言われています。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、医療機関の方針や提供されるケアの内容によって大きく異なります。
正確な費用については、必ず事前に医療機関に直接確認することが重要です。
医療機関による費用の違い
経口妊娠中絶薬の費用が医療機関によって異なる主な理由は、自由診療であることに加えて、提供されるサービス内容や体制の違いにあります。
- 薬剤費以外の費用: 診察回数、必要な検査の種類、服用期間中の医療機関での滞在時間やケア体制などが医療機関によって異なります。
例えば、ミソプロストールを服用し、子宮内容物が排出されるまで院内で数時間滞在する必要がある場合、その間の人員配置や設備維持にかかるコストが費用に反映されます。 - 立地や規模: クリニックの場所(都市部か地方かなど)や規模、設備なども費用に影響を与える可能性があります。
- 提供されるケアやサポート体制: 服用前後のカウンセリングの充実度、緊急時の対応体制、精神的なサポートなどが手厚い医療機関では、その分費用が高くなることも考えられます。
医療機関を選ぶ際には、費用だけでなく、どのようなケアやサポートを受けられるのか、服用方法や手順はどうなっているのかなども含めて確認し、納得できる医療機関を選ぶことが大切です。
いくつかの医療機関に問い合わせて比較検討することも有効でしょう。
経口妊娠中絶薬のメリット・デメリット
経口妊娠中絶薬は、人工妊娠中絶の新たな選択肢として注目されていますが、メリットとデメリットの両方があります。
これらを理解することが、自身にとって最適な方法を選択する上で重要です。
メリット
経口妊娠中絶薬の主なメリットは以下の通りです。
- 手術が不要であること: 子宮に医療器具を挿入する必要がないため、手術に対する身体的・精神的な抵抗感が少ない場合があります。
手術による合併症(子宮穿孔、頸管損傷など)のリスクを避けられます。 - 身体への侵襲が比較的少ない: 手術と比較して、身体への負担が少ないと感じる人が多いとされています。
術後の回復期間も手術より短い場合があります。 - 比較的プライベートな環境で経過観察できる可能性がある: ミフェプリストンの服用後、一定期間は自宅で過ごし、その後再び医療機関でミソプロストールを服用して経過観察を行う、という流れが基本です(ミソプロストールの服用や経過観察は原則として医療機関内)。
医療機関によっては、完全に自宅というわけではありませんが、手術室という特別な場所ではなく、個室などで過ごせる場合もあります。 - 麻酔が原則不要: 手術のように麻酔を使用する必要がありません(必要に応じて鎮痛剤は使用します)。
- 次の妊娠への影響が少ない可能性: 手術に比べて子宮内膜への影響が少ないため、次の妊娠に影響を与えにくいと言われています。
ただし、これは今後の臨床データによる確認が必要な点もあります。
これらのメリットは、特に手術を避けたいと考えている方や、身体への負担を最小限に抑えたいと考えている方にとって、重要な選択基準となるでしょう。
デメリット
一方、経口妊娠中絶薬には以下のようなデメリットや注意すべき点があります。
- 完了までに時間がかかる: 手術のように短時間で完了するのではなく、最初の薬を服用してから子宮内容物が完全に排出され、中絶が完了したと確認されるまでに数日~1週間程度かかります。
その間、出血や痛みが続く可能性があります。 - 出血や痛みが伴う: 薬の作用により、生理よりも量が多い出血や、陣痛のような強い腹痛が起こります。
これらの症状は個人差が大きく、強い痛みに対しては鎮痛剤が必要になります。 - 副作用の可能性がある: 吐き気、嘔吐、下痢、発熱、悪寒、頭痛、めまいなどの副作用が起こる可能性があります。
特に吐き気や嘔吐は比較的多く見られます。 - 服用できる期間が限られている: 日本で承認されている薬剤は、妊娠9週0日までしか使用できません。
それ以降の妊娠週数では、この方法を選択することはできません。 - 必ず医療機関の管理下で行う必要がある: 薬の処方から服用、経過観察、完了確認まで、すべて医療機関の管理下で行われなければなりません。
自宅での自己判断による服用はできません。 - 失敗する可能性がある: 一定の割合で、薬を服用しても妊娠が継続したり、子宮内容物が完全に排出されずに不完全流産となったりする「失敗」のリスクがあります。
失敗率について
経口妊娠中絶薬は、100%の成功率ではありません。
承認時の国内臨床試験では、妊娠9週0日までの女性において、経口妊娠中絶薬のみで妊娠が完全に終了した割合(完全流産率)は、約93%と報告されています。
つまり、約7%のケースでは、薬だけでは妊娠が終了しなかったり、不完全流産となったりする可能性があるということです。
失敗した場合は、追加で薬を服用したり、最終的には人工妊娠中絶手術が必要になったりします。
失敗の可能性についても、事前にしっかりと理解しておく必要があります。
大量出血など注意すべき副作用
経口妊娠中絶薬の服用後は、通常生理よりも多い出血があります。
子宮内容物が排出される際には、塊を伴う出血が見られることもあります。
しかし、予測を超えるような大量の出血が続いたり、強い腹痛が鎮痛剤でも改善しない場合、高熱が続く場合などは、合併症の可能性があります。
これらの症状が見られた場合は、すぐに医療機関に連絡し、指示を仰ぐ必要があります。
場合によっては、止血のための処置や、残存した子宮内容物を除去するための手術が必要となることもあります。
医療機関は、これらの緊急時にも対応できる体制を整えている必要があります。
服用後の経過観察や、予測される症状、注意すべき症状について、事前に医療機関から十分な説明を受けることが極めて重要です。
経口妊娠中絶薬の服用方法と流れ
経口妊娠中絶薬は、医師の指導のもと、決められた手順に従って服用する必要があります。
自己判断での服用は絶対に避けてください。
一般的な服用方法と流れを説明します。
医療機関での診察と処方
まず、経口妊娠中絶薬の服用を希望する場合、取り扱いのある医療機関を受診します。
- 初診: 妊娠の確認、妊娠週数の特定(超音波検査など)、子宮内妊娠であることの確認を行います。
- 問診: 既往歴、アレルギー、現在服用中の薬、健康状態などについて詳しく確認されます。
薬の禁忌に該当しないかどうかの判断が行われます。 - 説明と同意: 医師や医療スタッフから、経口妊娠中絶薬の仕組み、服用方法、予測される経過(出血や痛み)、起こりうる副作用、失敗の可能性、失敗した場合の対応、費用、その他注意点について、十分な説明を受けます。
内容を理解し、納得した上で、同意書に署名します(原則としてパートナーの同意も必要)。 - 処方: 同意が得られ、薬の適用が可能と判断された場合に、経口妊娠中絶薬(メフィーゴパック)が処方されます。
2種類の薬の服用手順
メフィーゴパックには、ミフェプリストンとミソプロストールの2種類の薬が入っています。
これらを決められた時間間隔をあけて服用します。
- ミフェプリストンの服用: まず、医療機関内でミフェプリストン錠を服用します。
この薬は、プロゲステロンの働きを抑え、妊娠を維持しにくくする作用があります。
服用後、通常は数時間から数日で出血が始まることがあります。 - ミソプロストールの服用: ミフェプリストンを服用してから、通常は36時間から48時間後に、医療機関内でミソプロストール錠を服用します。
この薬は、子宮を収縮させ、子宮内容物を排出させる作用があります。
ミソプロストールの服用後、数時間以内に腹痛や出血が起こり、流産が進行します。 - 経過観察: ミソプロストール服用後は、医療機関内で数時間、出血や痛みの状態、全身状態などを観察します。
痛みが強い場合は、鎮痛剤が処方されます。
子宮内容物が排出されたかどうかも確認される場合があります。
重要な点として、ミソプロストールの服用とその後の経過観察は、原則として医療機関内で行われます。
これは、大量出血などの重篤な副作用が起こった場合に、速やかに対応できる体制が必要だからです。
服用後の経過と注意点
ミソプロストールの服用後、多くの場合、数時間以内に強い腹痛と出血が始まり、子宮内容物が排出されます。
この時の腹痛は生理痛よりも強く、陣痛のような痛みを感じる人もいます。
出血量も生理よりも多く、血の塊が出ることもあります。
流産が完了した後も、生理のような出血や茶色いおりものが数日から2週間程度続くのが一般的です。
腹痛は通常、子宮内容物の排出とともに軽快していきます。
服用後の経過で注意すべき点は以下の通りです。
- 大量出血: ナプキンが1時間でびしょ濡れになるほどの大量出血が続いたり、めまいや立ちくらみを伴う場合は危険な兆候です。
- 激しい腹痛: 鎮痛剤を服用しても改善しない強い痛みが続く場合。
- 発熱: 38℃以上の発熱が続く場合、感染症の可能性があります。
- 症状がない: 薬を服用しても出血や腹痛が全く起こらない場合。
- 妊娠症状の継続: 服用後もつわりなどの妊娠初期症状が続く場合、流産が完了していない可能性があります。
これらの症状が見られた場合は、迷わずすぐに医療機関に連絡し、指示を受けてください。
服用後の確認診察
経口妊娠中絶薬による方法では、服用後の確認診察が非常に重要です。
通常、ミソプロストールを服用してから数日後(多くの場合、1週間後程度)に再度医療機関を受診し、超音波検査などで子宮内に内容物が残っていないか、妊娠が完全に終了しているかを確認します。
この確認診察で流産が完了していないと判断された場合(不完全流産や妊娠継続)、追加の薬による治療や、人工妊娠中絶手術が必要となります。
確認診察は、この方法の成功を判断し、必要に応じて次の対応を判断するために不可欠です。
自己判断で完了したと判断せず、必ず医療機関の指示に従って確認診察を受けてください。
経口妊娠中絶薬の取り扱い医療機関
経口妊娠中絶薬は、どの医療機関でも処方してもらえるわけではありません。
承認された薬剤は、特定の条件を満たし、必要な体制が整った医療機関でのみ取り扱いが認められています。
日本国内で処方可能な病院・クリニック
日本国内で経口妊娠中絶薬(メフィーゴパック)の処方が可能なのは、以下のような条件を満たし、製薬会社と連携した医療機関です。
- 産婦人科の医師が常勤していること: 妊娠や流産に関する専門的な知識と経験を持つ医師がいることが必須です。
- 服用期間中の管理と緊急時対応が可能な体制: ミソプロストール服用後の経過観察や、大量出血などの合併症に対して迅速に対応できる人員や設備(手術室、輸血体制など)が整っている必要があります。
原則としてミソプロストールの服用や経過観察は医療機関内で行われるため、それに対応できる設備が必要です。 - 適切な研修を受けた医療従事者がいること: 薬剤の適正な使用方法や、副作用への対応について十分な知識を持った医師や看護師がいることが求められます。
- 必要に応じて人工妊娠中絶手術への移行が可能な体制: 薬による方法が失敗した場合や、合併症が発生した場合に、速やかに手術に切り替えて対応できる体制が必要です。
これらの要件を満たした上で、製薬会社が提供する適正使用のための登録や研修を受け、この薬剤を取り扱うことが認められた医療機関が、処方を行うことができます。
取り扱い病院の探し方
経口妊娠中絶薬の処方を受けたい場合、取り扱いのある医療機関を探す必要があります。
探し方としては、以下のような方法が考えられます。
- 製薬会社のウェブサイト: 薬剤を製造販売している製薬会社のウェブサイトに、取り扱い医療機関の情報が掲載されている場合があります。
ただし、公開されている情報は限定的かもしれません。 - 学会などの情報: 日本産科婦人科学会など、関連学会が適正使用に関する情報を公開している場合があります。
これらの情報源も参考になります。 - 都道府県医師会・産婦人科医会への問い合わせ: 地域によっては、都道府県医師会や産婦人科医会に問い合わせることで、取り扱い可能な医療機関を紹介してもらえることがあります。
- 地域の医療機関への問い合わせ: 近隣の総合病院や産婦人科クリニックに直接問い合わせて、経口妊娠中絶薬の取り扱いがあるかどうかを確認する方法です。
その際、上記のような体制が整っているかどうか(例: 服用後の院内待機が可能か、緊急時の対応体制など)も合わせて確認すると良いでしょう。 - オンライン検索: 「経口妊娠中絶薬 処方 〇〇市(お住まいの地域)」などで検索し、情報を提供している医療機関を見つける方法です。
ただし、検索結果に表示される全ての医療機関が確実に要件を満たしているとは限らないため、必ず事前に医療機関に直接問い合わせて詳細を確認することが重要です。
取り扱い医療機関はまだ限られている可能性があり、地域によって availability(利用可能性)が異なる場合があります。
複数の情報源にあたって、信頼できる医療機関を見つけるようにしましょう。
経口中絶薬に関する注意点
経口妊娠中絶薬は、医療機関で適切に処方・管理されるべき薬剤です。
自己判断や不適切な方法での入手・使用は非常に危険です。
個人輸入や通販で購入できるか?
絶対にできませんし、行ってはいけません。
日本で承認された経口妊娠中絶薬(メフィーゴパック)は、「処方箋医薬品」であり、医師の診察と処方がなければ入手できません。
医療機関の管理下でのみ服用が認められています。
インターネット上の個人輸入サイトや海外の通販サイトなどで、「中絶薬」として販売されているものを見かけることがあるかもしれません。
しかし、これらは日本の医薬品医療機器等法(薬機法)に基づいた承認を受けていない無承認・無許可の医薬品です。
個人輸入や通販で購入した無承認の「中絶薬」には、以下のような危険性があります。
- 偽造薬の可能性: 表示されている有効成分が全く含まれていない、量が足りない、あるいは全く異なる成分や有害な不純物が含まれている可能性があります。
- 効果がない、または予測できない効果: 有効成分が不確かであるため、期待する効果が得られない(中絶が失敗する)だけでなく、予測できない副作用や健康被害を引き起こす可能性があります。
- 適切なサポートがない: 副作用が起こった場合や、流産が完了しなかった場合でも、医療機関のサポートを受けられません。
自己判断で対応することは非常に危険です。 - 違法性: 日本国内で無承認・無許可の医薬品を個人輸入し、使用することは薬機法に抵触する可能性があります。
安全と健康を守るため、経口妊娠中絶薬は必ず医療機関を受診し、医師の処方のもとで、医療機関の指示に従って使用してください。
薬局での購入は不可能
前述の通り、経口妊娠中絶薬は「処方箋医薬品」です。
これは、医師の診断に基づき、医師が発行した処方箋がなければ、薬剤師が調剤したり販売したりしてはならない医薬品です。
したがって、街の薬局やドラッグストアで、処方箋なしに経口妊娠中絶薬を購入することは不可能です。
必ず、この薬を取り扱っている医療機関を受診する必要があります。
経口妊娠中絶薬に関するよくある質問
経口妊娠中絶薬について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
経口妊娠中絶薬は入院が必要ですか?
日本で承認された経口妊娠中絶薬の場合、原則として入院は必要ありません。
ただし、ミソプロストールの服用と、その後の子宮内容物が排出されるまでの経過観察は、大量出血などの緊急時に対応するため、医療機関内で数時間から半日程度行うことが一般的です。
ミフェプリストン服用後は一度帰宅できる場合が多いですが、ミソプロストール服用時は医療機関の管理下に置かれます。
医療機関によっては、患者さんの状態や希望に応じて、個室などで過ごせるような体制を整えている場合もあります。
詳細については、処方を受ける医療機関に確認してください。
経口妊娠中絶薬の副作用について教えてください。
経口妊娠中絶薬の主な副作用は、薬の作用によって起こるものです。
- 出血: 生理よりも量が多く、塊を伴う出血が数日~2週間程度続きます。
流産完了後も生理のような出血がしばらく続きます。 - 腹痛: 子宮収縮に伴う痛みで、生理痛よりも強く、陣痛のような痛みを感じることもあります。
多くは子宮内容物の排出とともに軽快しますが、痛みが強い場合は鎮痛剤が必要です。 - 吐き気、嘔吐: 比較的多く見られる副作用です。
- 下痢: 起こることがあります。
- その他: 頭痛、めまい、発熱、悪寒などが起こる可能性もあります。
多くの場合、これらの副作用は一時的なものですが、予測を超える大量出血や激しい痛み、高熱など、注意すべき症状が見られた場合は、すぐに医療機関に連絡する必要があります。
副作用の程度や種類には個人差があります。
経口妊娠中絶薬の成功率は?
経口妊娠中絶薬の成功率(薬の服用のみで妊娠が完全に終了する確率)は、100%ではありません。
日本国内の臨床試験では、約93%と報告されています。
これは、約7%のケースでは薬だけでは妊娠が終了せず、不完全流産となったり、妊娠が継続したりする可能性があることを意味します。
薬による方法が失敗した場合は、追加で薬を使用したり、人工妊娠中絶手術に移行したりする必要があります。
成功率についても、事前に医療機関から十分な説明を受けることが重要です。
まとめ:経口妊娠中絶薬を検討中のあなたへ
日本で承認された経口妊娠中絶薬は、妊娠初期における人工妊娠中絶の新たな選択肢として加わりました。
手術を伴わないため、身体への負担が少ないと感じる人がいる一方で、完了までに時間がかかる、出血や痛みが伴う、一定の失敗率がある、必ず医療機関の管理下で行う必要がある、といった特徴があります。
経口妊娠中絶薬の服用を検討する際は、まず妊娠週数が9週0日以内であること、そして禁忌に該当しないことなど、処方を受けるための条件を満たしているかを確認する必要があります。
費用は全額自己負担となり、医療機関によって異なるため、事前に確認することが重要です。
最も大切なのは、自己判断で薬を入手したり服用したりせず、必ず医療機関を受診し、医師から十分な説明を受け、納得した上で、医療機関の指示に従って適切なプロセスを踏むことです。
個人輸入された無承認の薬剤の使用は、偽造薬である危険性や、予測できない健康被害を引き起こすリスクがあり、非常に危険です。
経口妊娠中絶薬も人工妊娠中絶手術も、それぞれにメリットとデメリットがあります。
自身の状況や希望、身体の状態などを考慮し、医療機関の専門家とよく相談しながら、最適な方法を選択してください。
この記事の情報が、その一助となれば幸いです。
免責事項: 本記事は情報提供のみを目的としており、医学的アドバイスを代替するものではありません。
経口妊娠中絶薬に関する正確な情報、服用方法、費用、リスク、および自身の健康状態については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
情報は日々更新される可能性があり、最新の状況や詳細は、必ず厚生労働省や関連学会、または医療機関にご確認ください。
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