毛じらみの原因・症状・治療法|自分でできる見つけ方

毛じらみは、主に陰毛に寄生するシラミの一種「ケジラミ」によって引き起こされる寄生虫症です。
強いかゆみを伴うことが多く、感染に気づかずに放置してしまうと、症状が悪化したり、周囲の人に感染を広げてしまったりする可能性があります。
しかし、毛じらみは適切な治療を行えば比較的簡単に治すことができる病気です。

この記事では、毛じらみの原因や症状、正しい治療法について、専門的な知識に基づきながら詳しく解説します。
もし「もしかして?」と感じることがあっても、一人で悩まず、まずは毛じらみについて正しく理解し、早期発見・早期治療に繋げましょう。

毛じらみとは?特徴と寄生場所

毛じらみ(ケジラミ)は、ヒトに寄生するシラミ3種類のうちの一つです。
頭髪に寄生するアタマジラミ、衣類に寄生するコロモジラミとは異なり、主に陰毛などの太い毛に寄生します。
学名は Pthirus pubis といい、その名の通り恥部(pubis)を主な生息域とします。
成虫は吸血して栄養を摂取するため、寄生された部位にかゆみなどの症状を引き起こします。

毛じらみの見た目(卵含む)

毛じらみは非常に小さく、見慣れないと発見しにくいかもしれません。
しかし、注意深く観察すれば肉眼でも確認できます。

  • 成虫:
    • 大きさは約1~2mm程度。
    • 色は灰色から褐色で、吸血後は赤黒くなることもあります。
    • カニのような、平たく横幅のある特徴的な形をしています。
    • 脚には大きな爪があり、これで毛をしっかりと掴んでいます。動きはアタマジラミなどに比べて鈍いです。
  • 幼虫:
    • 成虫よりさらに小さいですが、形は似ています。
    • 卵から孵化し、3回の脱皮を経て成虫になります。この間も吸血します。
  • 卵(シラミの卵):
    • 大きさは約0.5mm程度。
    • 白っぽい楕円形で、毛の根元近くにセメントのような物質でしっかりと固定されています。簡単には取れません。
    • 孵化する前の卵は光沢があり、中に黒い点(幼虫)が見えることもあります。
    • 卵は「シラミの卵」と呼ばれ、毛じらみの感染を示す明確なサインの一つです。

成虫や幼虫、卵は、特に陰毛を分けながら、毛の根元を重点的に探すと見つけやすいです。

主な寄生場所

毛じらみの主な寄生場所は、その名の通り陰毛です。
陰毛は太く断面が三角形に近いため、毛じらみがしっかりと掴んで生息するのに適しています。

しかし、陰毛以外の体毛にも寄生することがあります。
具体的には、陰毛に近い部位の太ももお腹の毛、そして脇毛などに寄生することがあります。
稀に、眉毛まつ毛、男性のなどに寄生するケースが報告されていますが、これは主に子供や高齢者、皮膚のバリア機能が低下している人などに見られることが多く、健康な成人の陰毛以外の部位への寄生は比較的まれです。

毛じらみは宿主の体温と血液がないと長く生存できません。
そのため、衣類の中や体の表面を活発に動き回ることは少なく、毛をしっかりと掴んでじっとしていることが多いです。

毛じらみの原因と感染経路

毛じらみは、ヒトからヒトへ感染します。
主な感染経路は限られており、感染原因を理解することで、予防や対策にも繋がります。

主な感染原因

毛じらみの感染原因として最も多いのは、性行為による直接的な体の接触です。
毛じらみは毛から毛へと移動するため、感染している人と性的な接触を持つことで、毛じらみが陰毛から相手の陰毛へと移動し、感染が成立します。
特に、陰部と陰部が密着する行為は感染リスクが非常に高いと考えられます。

毛じらみは宿主の体温(約37℃)と血液がないと長く生きられません。
そのため、性行為のように両者の体が長時間密着し、体温が保たれる状況は、毛じらみが移動・定着しやすい環境と言えます。

性行為以外の感染経路(お風呂など)

性行為が最も一般的な感染経路ですが、それ以外の方法で感染する可能性もゼロではありません。
これを間接的な感染と呼びます。

  • 衣類、寝具、タオルなどの共有: 毛じらみが付着した衣類、シーツ、布団、タオルなどを共有することで感染する可能性があります。毛じらみは毛を掴む力が強いため、毛から剥がれてこれらの物に付着することは比較的少ないですが、可能性はあります。ただし、これらの物の上では毛じらみは飢餓や乾燥により24時間程度しか生存できないと言われています。
  • 公衆浴場、サウナなど: 不特定多数が利用する場所で、バスマットやタオル、椅子などを介して感染する可能性も理論上は考えられます。しかし、毛じらみがこれらの場所で長時間生存し、かつ次の人の体毛にうまく移動するという状況はあまり頻繁に起こるとは考えにくいです。

これらの間接的な感染経路での感染確率は、性行為による直接感染に比べてかなり低いと考えられています。
しかし、家族間などで寝具などを共有している場合には注意が必要です。
子供が感染するケースで、保護者からの間接的な感染が疑われる場合もあります(ただし、子供は陰毛がないため眉毛やまつ毛への寄生が多くなります)。

感染確率について

具体的な感染確率を数字で示すことは難しいですが、毛じらみの感染力は比較的強いと言えます。
特に、性行為においては、感染者との一度の接触でも感染するリスクは高いと考えられます。
毛じらみは卵を産んで繁殖するため、放置すればするほど虫の数が増え、感染力も高まります。

また、パートナーが毛じらみに感染している場合、同時に治療を受けない限り、ピンポン感染(相手から自分へ、自分から相手へ再び感染させること)を繰り返し、完治が難しくなります
そのため、毛じらみが発見された場合は、パートナーも検査・治療を受けることが非常に重要です。

毛じらみの症状

毛じらみに感染した場合、最も特徴的な症状は強いかゆみです。
しかし、感染初期には自覚症状がない場合もあります。

特徴的なかゆみ

毛じらみによるかゆみは、寄生された部位、特に陰部を中心に現れます。
このかゆみにはいくつかの特徴があります。

  • 強いかゆみ: 我慢できないほど強いかゆみを感じることが多いです。
  • 夜間にかゆみが強くなる: 毛じらみは夜間に吸血活動を活発化させることが知られており、そのため夜寝る前や就寝中にかゆみが強くなる傾向があります。
  • 特定の部位のかゆみ: 陰毛のある部分や、その周辺の太もも、お腹などに限定されたかゆみが見られます。かゆみの範囲が広がっていくこともあります。
  • アレルギー反応: かゆみの原因は、毛じらみが吸血する際に注入する唾液に対する体のアレルギー反応と考えられています。そのため、寄生されてからかゆみを感じ始めるまでに数週間かかることもあります。感染初期にはかゆみがなくても、虫が繁殖するにつれて症状が現れることがあります。

強いかゆみのために、掻きむしってしまい、皮膚を傷つけてしまうこともあります。
掻き傷から細菌が入り、二次感染を起こして湿疹や化膿を伴うこともあります。

肉眼での見つけ方(虫・血糞)

かゆみを感じたら、毛じらみが寄生しているかどうか、自分で確認してみることが重要です。
以下のものを探してみてください。

  • 毛じらみ(虫体):
    • 陰毛を根元から毛先に向かって丁寧に見ていきます。
    • 毛の根元近くに、灰色~褐色の小さな点が付着しているように見えます。
    • よく見ると、カニのような形をしており、毛をしっかりと掴んでいます。動きは非常にゆっくりしています。
    • 特に、皮膚に近い毛の根元にいることが多いです。
  • シラミの卵(卵鞘):
    • 毛の根元近くに、白っぽい約0.5mm程度の粒が毛に固く付着しています。フケのように簡単には取れません。
    • 複数の卵が固まって付着していることもあります。
    • 生きている卵は光沢があり、死んだ卵や孵化後の殻は白っぽくくすんでいます。
  • 血糞(血糞):
    • 毛じらみが吸血した際に排出する排泄物です。
    • 下着や寝具に、ゴマ粒よりも小さい赤褐色や黒っぽい点状の汚れとして付着していることがあります。
    • 水に濡らすと赤く滲むのが特徴です。これは吸血した血液の色です。

自分で確認する際は、明るい場所で、拡大鏡などを使うとより見つけやすくなります。
恥ずかしいと感じるかもしれませんが、早期発見が早期治療に繋がります。

男女別の症状

毛じらみの症状は、基本的に男女で大きな違いはありません。
主な寄生部位が陰毛であり、そこからくる強いかゆみが中心的な症状となります。

ただし、女性の場合は陰毛だけでなく、大陰唇や会陰部、肛門周囲の毛にも寄生することがあります。
また、男性に比べて脇毛に寄生する頻度が高い可能性も指摘されています。
症状であるかゆみは同じですが、寄生部位が広がることで、かゆみを感じる範囲が広がることはあります。

稀に、かゆみがほとんどなく、虫や卵の付着によって初めて気づく人もいます。
特に感染初期や、寄生している虫の数が少ない場合には、かゆみが軽度であることもあります。
症状の有無にかかわらず、毛じらみの寄生が確認された場合は治療が必要です。

毛じらみの検査・診断方法

毛じらみの診断は、主に医療機関で行われます。
かゆみなどの症状があり、自己チェックで虫や卵らしきものが見つかった場合は、医療機関を受診することをお勧めします。

医療機関では、医師がまず問診を行い、症状が現れた時期や性行為の有無、パートナーの状況などを詳しく聞きます。
その後、視診によって陰毛などの寄生が疑われる部位を詳しく観察します。

診断を確定させるためには、顕微鏡を使った確認が最も確実です。
医師がピンセットなどで毛に付着した虫体や卵を採取し、顕微鏡で観察します。
毛じらみ特有の形態(カニのような形)や、毛に固く付着した卵鞘が確認できれば、毛じらみ症と診断されます。

視診と顕微鏡検査は比較的簡単に行うことができ、その場で診断が確定することがほとんどです。

毛じらみの検査・診断は、皮膚科で行われるのが一般的です。
性感染症に関連する可能性も考慮し、泌尿器科(男性)や婦人科(女性)、性感染症科でも対応可能な場合があります。
どの科を受診すべきか迷う場合は、まず皮膚科に相談するのが良いでしょう。

毛じらみの治療法

毛じらみの治療は、主に殺虫成分を含む薬剤を使用し、寄生している毛じらみや卵を駆除することによって行われます。
同時に、衣類や寝具などの環境対策も重要です。

薬による治療(市販薬・スミスリン)

現在、毛じらみの治療薬として最も広く使用されているのは、ピレスロイド系の殺虫成分を含んだ薬剤です。
この成分は毛じらみの神経系に作用して駆除効果を発揮します。

日本では、ピレスロイド系のフェノトリンという成分を含む「スミスリン」シリーズが、医療用医薬品としても市販薬としても使用されています。
一般的には、市販されているスミスリンシャンプーやスミスリンパウダーで十分な治療効果が得られることが多いです。
医療機関を受診した場合も、多くの場合スミスリンが処方されます。

スミスリン以外の薬剤としては、海外ではローションやクリームタイプの薬剤が使用されることもありますが、日本ではスミスリンシリーズが一般的です。

シャンプー・パウダーの種類と使い方

「スミスリン」シリーズには、シャンプータイプやパウダータイプがあります。
それぞれの特徴と正しい使い方を理解することが重要です。

薬剤の種類 主な形態 主な使い方 特徴・注意点
スミスリンシャンプーL シャンプー 寄生部位の毛に塗布し、泡立てて数分放置後に洗い流す 毛じらみ(成虫・幼虫)には高い効果があるが、卵には効果が低い。複数回使用が必要。
スミスリンパウダー パウダー 衣類や寝具などに散布する 直接体に塗布するものではない。環境対策用。

スミスリンシャンプーLの使い方:

  1. 事前に準備: 寄生部位以外の毛(頭髪など)にかからないように注意が必要です。必要に応じてタオルなどで覆います。
  2. 塗布: 寄生している毛全体に、薬剤を塗布します。毛の根元から毛先まで、しっかりと薬剤がなじむように塗布します。
  3. 泡立て・放置: 薬剤を塗布した部分を軽くマッサージして泡立てます。その後、製品の説明書に記載された時間(一般的には5分程度)放置します。
  4. 洗い流し: 薬剤を塗布した部分を、水またはぬるま湯で十分に洗い流します。
  5. 乾燥: 清潔なタオルで水分を拭き取ります。
  6. くしで梳かす: 付属の専用くし(すきぐし)や目の細かい歯ブラシなどで、毛に付着した卵や死んだ虫体を根元から毛先に向かって丁寧に梳かして取り除きます。この作業は非常に重要です。
  7. 繰り返しの使用: スミスリンシャンプーは卵には効果が低いため、卵から孵化した幼虫を駆除するために、3日おきに3~4回繰り返して使用することが推奨されています。例えば、1日目に使用したら、4日目、7日目、10日目に再度使用します。この繰り返し使用を怠ると、卵が孵化して再び感染が広がる可能性があります。

スミスリンパウダーの使い方:

スミスリンパウダーは、衣類や寝具などの環境対策として使用します。
洗濯や乾燥機での熱処理が難しいものに対して、補助的に使用することがあります。
使い方の詳細は製品の説明書を確認してください。
これは直接体に使用するものではありません。

薬剤の使用にあたっては、製品の説明書をよく読み、用法・用量を守ることが非常に重要です。
また、目や口に入らないように注意し、もし入った場合はすぐに洗い流してください。

毛の処理(剃毛)

毛じらみの治療において、寄生部位の毛を剃る(剃毛)ことは、必須ではありませんが、治療効果を高める可能性があります。

剃毛のメリット:

  • 薬剤が届きやすくなる: 毛がなくなることで、薬剤が皮膚や毛の根元にいる虫体や卵に直接触れやすくなります。
  • 虫や卵を取り除く: 毛と一緒に虫体や卵を物理的に除去することができます。
  • 観察しやすくなる: 毛がない方が、治療後の虫体や卵の有無を確認しやすくなります。

ただし、剃毛は必須ではありません。
剃毛に抵抗がある場合や、寄生部位が広範囲にわたる場合は、薬剤による治療だけでも十分な効果が期待できます。
剃毛する場合は、カミソリなどで皮膚を傷つけないように注意し、剃った毛はすぐにビニール袋などに入れて密封し、適切に処分してください。

その他の対処法(アルコール消毒など)

薬剤による治療と並行して、感染源となった可能性のある衣類や寝具、タオルなどの環境対策を行うことが、再感染や感染拡大を防ぐために非常に重要です。

  • 衣類、寝具、タオルの洗濯・乾燥: 毛じらみや卵は、55℃以上の熱に数分さらされると死滅すると言われています。そのため、使用した衣類、下着、パジャマ、シーツ、枕カバー、タオルなどは、洗濯機で洗濯した後、乾燥機にかけるか、アイロンをかけるなどして熱処理を行うのが最も効果的です。毎日使うものだけでなく、感染期間中に使用した可能性のあるものすべてに対して行います。
  • 洗濯できないものへの対応: 洗濯や熱処理が難しいコートやぬいぐるみなどについては、ビニール袋などに密封して数日間(毛じらみが宿主から離れて生きられない期間、約1週間程度)放置することで、虫や卵が死滅すると考えられます。
  • 共有物の清掃: トイレの便座、ソファ、クッションなど、感染部位が触れた可能性のある共有部分についても、念のため清掃しておくと安心です。ただし、毛じらみが宿主から離れてこれらの場所に長時間生存し、次の人に感染させる可能性は低いと考えられています。
  • アルコール消毒: 毛じらみに対するアルコール消毒の効果は限定的です。毛じらみの外皮はアルコールに対する抵抗性があるため、虫体そのものを死滅させる効果は期待できません。したがって、毛じらみ対策としてアルコール消毒を過信しないようにしましょう。衣類や寝具の消毒には、洗濯と熱処理が推奨されます。

これらの環境対策は、薬剤による治療とセットで行うことで、毛じらみの根絶に繋がりやすくなります。
また、治療期間中は、パートナーや家族への感染を防ぐためにも、衣類や寝具の共有は避けるようにしましょう。

毛じらみを放置するとどうなる?(自然治癒はしない)

毛じらみに感染しても、「そのうち治るだろう」「恥ずかしいから誰にも相談したくない」と考えて放置してしまうと、いくつかの問題が生じます。

まず、毛じらみは自然に治癒することはありません
毛じらみは人間の血液を吸って生き、体毛に卵を産み付けて繁殖します。
宿主である人間がいなくなるか、適切な駆除が行われない限り、寄生は続き、虫の数は増え続けます。
毛じらみが宿主から離れた場所(衣類や寝具など)で生存できる期間は非常に短いため、「勝手にいなくなる」ということはありません。

放置した場合、以下のような影響が考えられます。

  • かゆみの悪化: 虫の数が増えるにつれて、吸血される回数が増え、アレルギー反応も強くなるため、かゆみがさらにひどくなります。
  • 皮膚症状の悪化: 強いかゆみで掻きむしることで、皮膚が傷つき、湿疹や化膿、色素沈着などを引き起こす可能性があります。
  • 精神的な負担: 常に続くかゆみや、誰かに感染させてしまうのではないかという不安は、大きな精神的ストレスになります。
  • 感染拡大: 放置している間に、性行為や共有物(特に家族間)を介して、パートナーや家族など周囲の人に感染を広げてしまうリスクが高まります。
  • 他の性感染症の見落とし: 毛じらみは性行為によって感染することが多いため、同時に他の性感染症(クラミジア、淋病、梅毒、HIVなど)に感染している可能性も考えられます。毛じらみだけを放置することで、これらのより重篤な感染症の発見と治療が遅れてしまうリスクがあります。

毛じらみは、早期に発見し、適切な治療を始めれば比較的短期間で治すことができます。
放置することにメリットは一つもありません。
かゆみなどの症状に気づいたり、虫や卵を見つけたりした場合は、恥ずかしがらずに医療機関を受診するか、市販薬での治療を検討しましょう。

毛じらみの予防と再発対策

毛じらみの感染を防ぐこと、そして一度治療した後に再び感染することを防ぐことは可能です。

毛じらみの予防:

最も効果的な予防策は、感染リスクのある性行為を避けることです。
具体的には、不特定多数の相手との性行為を控えたり、新しいパートナーとの関係においては性感染症のリスクについて話し合ったりすることが考えられます。
コンドームは他の性感染症予防には有効ですが、毛じらみはコンドームで覆えない陰毛部分に寄生するため、毛じらみ自体の感染を完全に防ぐ効果は期待できません。

また、感染者がいる可能性のある状況で、安易に衣類や寝具、タオルなどを共有しないことも、間接的な感染を防ぐために有効です。

毛じらみの再発対策:

一度毛じらみの治療を受けた後に再び感染してしまう原因としては、主に以下の二つが考えられます。

  1. 治療が不十分だった: 薬剤の使用回数が足りなかった(特に卵が孵化するタイミングを考慮しなかった)、環境対策が不十分だった(洗濯や乾燥が徹底されなかった)などにより、虫や卵が完全に駆除されなかった場合。
  2. パートナーからの再感染: パートナーが毛じらみに感染しているにも関わらず、パートナーが治療を受けなかった場合。自分だけが治療を終えても、性行為によってパートナーから再び感染してしまいます。

これらの原因による再発を防ぐためには、以下の対策が重要です。

  • 治療薬を正しく、指示された回数・期間使用する: 特に市販薬のスミスリンシャンプーを使用する場合は、3日おきに3~4回繰り返すという用法を厳守することが非常に重要です。これにより、治療の間に卵から孵化した幼虫を駆除することができます。
  • 衣類、寝具、タオルなどの環境対策を徹底する: 使用した可能性のあるものは全て、洗濯と乾燥機(またはアイロン)による熱処理を複数回行います。治療期間中はもちろん、治療後しばらくも念のため対策を続けるとより安心です。
  • パートナーの検査・治療を促す: これが再発を防ぐ上で最も重要な点の一つです。毛じらみは性行為で感染することが圧倒的に多いため、自分に感染が見つかったということは、パートナーも感染している可能性が非常に高いです。パートナーにも協力を求め、同時に検査を受け、必要であれば一緒に治療を開始することが、お互いの完治と再発防止のために不可欠です。

治療が終了した後も、しばらくは患部を観察し、かゆみの再燃や虫体・卵の付着がないか確認することも再発の早期発見に繋がります。

不安な場合は専門機関へ相談を

「もしかして毛じらみかも?」と不安に感じたり、自己治療でうまくいかないと感じたりする場合は、一人で悩まずに専門機関である医療機関に相談することをお勧めします。

医療機関では、医師が正確な診断を行います。
自己判断ではフケや他の皮膚疾患と間違えてしまう可能性もありますが、医療機関では顕微鏡で虫や卵を確認し、確実に診断してもらえます。

また、適切な治療法についてアドバイスを受けることができます。
市販薬の使い方について不安がある場合や、かゆみが強い場合、広範囲に寄生している場合などは、医師に相談することで症状に合わせた治療法や、市販薬のより効果的な使い方について指導を受けられます。

さらに、毛じらみは性感染症の一つであるため、医療機関を受診することで、同時に他の性感染症の検査を受ける機会を得られます。
毛じらみと同時に他の性感染症に感染している可能性も十分にありますので、この機会に検査を受けておくことはご自身の健康を守る上で非常に重要です。

毛じらみの検査・治療が可能な主な診療科:

  • 皮膚科: 毛じらみの診断・治療を行う最も一般的な診療科です。皮膚の症状やかゆみについても専門的に対応してもらえます。
  • 泌尿器科(男性): 男性の場合、性感染症や陰部のトラブルとして泌尿器科でも対応可能です。
  • 婦人科(女性): 女性の場合、性感染症やデリケートゾーンのトラブルとして婦人科でも対応可能です。
  • 性感染症科: 性感染症全般を専門とする科です。他の性感染症の検査も同時に受けたい場合に適しています。

どの科を受診しても基本的には適切な診断と治療を受けることができます。
受診をためらってしまうかもしれませんが、毛じらみは決して珍しい病気ではありません。
医師は多くの症例を診ており、プライバシーに配慮して対応してくれます。
安心して相談してください。

専門機関に相談することで、早期に正しい診断を受け、適切な治療を開始し、不安を解消することができます。

【まとめ】毛じらみは早期発見・早期治療が大切

毛じらみは、主に陰毛に寄生するケジラミによって引き起こされる病気で、強いかゆみが特徴的な症状です。
多くの場合、性行為によって感染しますが、衣類や寝具などの共有による間接的な感染の可能性もゼロではありません。

かゆみなどの症状に気づいたり、陰毛に小さな虫や卵、下着に血糞らしきものを見つけたりした場合は、毛じらみを疑いましょう。
毛じらみは自然に治ることはなく、放置すると症状が悪化したり、周囲の人に感染を広げたりするリスクがあります。

治療は、市販薬を含む殺虫成分入りの薬剤(スミスリンシリーズなど)を正しく使用すること、そして衣類や寝具を熱処理するなど環境対策を徹底することが基本です。
特に、卵から孵化した幼虫を駆除するため、薬剤を複数回使用することが重要です。
そして最も大切な対策の一つが、パートナーが感染している可能性を考慮し、一緒に検査・治療を受けることです。

自己判断や自己治療で不安がある場合や、症状が改善しない場合は、皮膚科などの専門機関に相談しましょう。
専門家による正確な診断と適切な治療を受けることで、毛じらみを根絶し、再発を防ぐことができます。

毛じらみは、誰にでも感染する可能性のある病気です。
一人で悩まず、正しく対処することで、必ず治すことができます。
この記事が、毛じらみについて悩んでいる方の不安を少しでも和らげ、適切な行動に繋がる一助となれば幸いです。


免責事項: 本記事は毛じらみに関する一般的な情報提供を目的としています。
個々の症状、診断、治療については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
本記事の情報によって生じたいかなる結果についても、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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