腹腔鏡手術(LSC手術)とは?傷口、痛み、回復期間を解説

LSC手術(腹腔鏡下仙骨腟固定術)は、骨盤臓器脱に対する手術療法の一つとして注目されています。おもに子宮や膀胱、直腸といった骨盤内の臓器が本来の位置から下がってきてしまうことで起こる様々な不快な症状を改善するために行われます。この記事では、LSC手術とは具体的にどのような手術なのか、そのメリットやデメリット、手術のプロセス、回復期間、費用について詳しく解説します。骨盤臓器脱にお悩みの方や、LSC手術について知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

LSC手術とは?定義と概要

LSC手術とは、「Laparoscopic Sacrocolpopexy(ラパロスコピック・サクロコルポペキシー)」の頭文字をとった略称で、正式名称は「腹腔鏡下仙骨腟固定術」といいます。これは、下がってしまった子宮や腟を、人工のメッシュや自己組織を用いて、仙骨(骨盤の一部)に固定することで、骨盤臓器を本来あるべき位置に戻す手術です。
この手術の主な目的は、骨盤臓器脱によって引き起こされる症状(例:下垂感、尿失禁、排尿困難、便秘など)を改善し、患者さんのQOL(生活の質)を向上させることです。特に、再発リスクを低く抑えることが期待できる手術として、近年広く行われるようになっています。
LSC手術は、単に臓器を固定するだけでなく、骨盤底全体の支持構造を再建することを目指します。これにより、長期的な安定性と機能の回復を図ることが可能です。

LSC手術は腹腔鏡手術の一種

LSC手術は、開腹手術とは異なり、腹腔鏡(内視鏡)を用いて行われる低侵襲手術です。腹腔鏡手術では、お腹に数ヶ所(通常3~5ヶ所)の小さな穴を開け、そこからカメラ(腹腔鏡)や手術器具を挿入して行います。
カメラで映し出されるお腹の中の映像をモニターで見ながら、細長い器具を使って手術を行います。これにより、お腹を大きく切開することなく、手術を行うことができます。
腹腔鏡手術の大きな特徴は、傷口が小さいこと、出血量が少ないこと、術後の痛みが比較的少ないことなどが挙げられます。これらの特徴は、LSC手術にもそのまま当てはまります。開腹手術に比べて体への負担が少ないため、入院期間や回復期間が短縮される傾向があります。
ただし、腹腔鏡手術は高度な技術を要するため、すべての医療機関でLSC手術が可能なわけではありません。専門的なトレーニングを受けた医師や、十分な設備を持つ医療機関で行われることが重要です。

LSC手術の対象となる疾患

LSC手術の主な対象となる疾患は、骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse: POP)と呼ばれる病態です。骨盤臓器脱は、出産や加齢、肥満、慢性的な咳、便秘などにより、骨盤底を支える筋肉や靭帯が緩むことで起こります。具体的には、以下のような疾患がLSC手術の対象となり得ます。

  • 子宮脱: 子宮が腟を通して下がってくる状態です。ひどい場合は、子宮が体外に出てしまうこともあります。
  • 膀胱瘤: 膀胱が腟前壁を通して下がる状態です。尿失禁や排尿困難の原因となります。
  • 直腸瘤: 直腸が腟後壁を通して下がる状態です。排便困難や残便感の原因となります。
  • 小腸瘤(ヘルニア): 小腸が腟の壁を通して下がる状態です。
  • 腟断端脱: 子宮摘出術を受けた後に、腟の先端が下がる状態です。

これらの骨盤臓器脱に対して、保存的治療(骨盤底筋体操やリングペッサリーなど)や、メッシュを使わない経腟手術など、様々な治療法が存在します。LSC手術は、これらの治療法と比較して、特に再発率が低いとされており、活動性の高い方や、より長期的な効果を期待する方に適していると考えられています。また、複数の臓器が同時に脱出している場合や、以前に骨盤臓器脱の手術を受けて再発した場合などにも、LSC手術が選択されることがあります。
どの治療法が最適かは、患者さんの年齢、全身状態、脱出の程度、症状、活動性、将来の妊娠希望の有無などを考慮して、医師と十分に相談して決定されます。

LSC手術のメリット

LSC手術には、開腹手術や一部の経腟手術と比較して、いくつかの大きなメリットがあります。これらのメリットが、LSC手術が近年推奨される理由となっています。

  • 低侵襲: 腹腔鏡を用いて行うため、お腹の切開創が小さく済みます。通常、5mmから1cm程度の傷が数ヶ所できるのみです。これにより、術後の痛みが少なく、早期の回復が期待できます。
  • 出血量の減少: 小さな傷口から行うため、手術中の出血量が開腹手術に比べて少ない傾向があります。
  • 回復の早さ: 体への負担が少ないため、手術後の入院期間が短縮され、日常生活への復帰も早くなります。多くの場合、術後数日で歩行が可能になり、1週間程度で退院できます。
  • 再発率の低さ: 人工メッシュを用いて骨盤臓器を仙骨にしっかりと固定するため、他の手術法と比較して、骨盤臓器脱の再発率が低いことが多くの研究で示されています。特に腟断端脱や重度の脱出に対して、その有効性が報告されています。
  • 整容性の高さ: 傷口が小さく目立たないため、術後の外見への影響が少ないです。
  • 腹腔内からの骨盤支持構造の再建: お腹の中から骨盤底全体の支持構造を再建するため、解剖学的に正常に近い状態に戻すことが期待できます。これにより、将来的な新たな臓器脱の予防にもつながる可能性があります。

これらのメリットは、特に活動的な女性や、早期に社会生活に復帰したい女性にとって、非常に大きな利点となります。

LSC手術のデメリットとリスク

LSC手術には多くのメリットがありますが、一方でデメリットや起こりうるリスクも存在します。これらの点を十分に理解した上で、手術を選択することが重要です。

  • 手術時間の長さ: 腹腔鏡下での細かい操作が必要となるため、開腹手術や一部の経腟手術と比較して、手術時間が長くなる傾向があります。手術時間が長くなると、麻酔や体への負担が大きくなる可能性があります。
  • 高度な技術が必要: 腹腔鏡下での仙骨への固定やメッシュの縫合には、高度な技術と経験が必要です。そのため、LSC手術を行える施設や医師が限られる場合があります。
  • 麻酔のリスク: 全身麻酔で行われるため、全身麻酔に伴う一般的なリスク(薬剤アレルギー、呼吸器・循環器系の合併症など)が存在します。
  • 出血: 手術中に血管を損傷するなどして出血が起こる可能性があります。まれに輸血が必要になったり、止血のために開腹手術に移行したりする場合があります。
  • 感染: 手術部位や留置したメッシュが感染するリスクがあります。感染した場合は、抗生物質による治療や、場合によってはメッシュを抜去する手術が必要となることがあります。
  • 隣接臓器の損傷: 骨盤内の密接した位置にある膀胱、尿管、直腸、腸管などを傷つけてしまうリスクがあります。損傷した場合は、修復手術が必要となります。
  • 神経損傷: 仙骨周辺には多くの神経が走行しているため、手術中に神経を損傷し、術後に足の痛みやしびれなどの神経症状が出現するリスクがまれにあります。
  • 血栓塞栓症: 長時間同じ姿勢で手術を受けることや、術後の安静によって、足の血管に血栓ができ、それが肺などに飛んでしまう(肺塞栓症)リスクがあります。予防のために、弾性ストッキングの着用やフットポンプの使用、早期離床などが推奨されます。
  • メッシュ関連合併症: LSC手術で用いられる人工メッシュに関連する合併症として、以下のようなものがあります。
    • メッシュ露出・びらん: メッシュが腟の壁を突き破って露出したり、びらんを形成したりすることがあります。これにより、出血、痛み、性交時の不快感などが生じることがあります。露出した部分を切除する手術が必要となる場合があります。
    • メッシュの収縮: メッシュが術後に収縮し、疼痛や性交痛の原因となることがあります。
    • 異物反応: 体がメッシュを異物と認識し、炎症反応を起こすことがあります。

これらのリスクについて、手術前に医師から十分に説明を受け、納得した上で手術に臨むことが重要です。合併症が起こる頻度は比較的低いとされていますが、ゼロではないことを理解しておく必要があります。

LSC手術のプロセス

LSC手術は、以下のようなプロセスを経て行われます。これは一般的な流れであり、患者さんの状態や医療機関の方針によって多少異なる場合があります。

  1. 術前検査: 手術に耐えられる全身状態であるかを確認するため、血液検査、尿検査、心電図、胸部X線検査などが行われます。骨盤臓器脱の評価のために、MRIや超音波検査などが行われることもあります。
  2. 入院: 手術前日または当日に医療機関に入院します。入院後は、手術の説明、麻酔の説明、術前の処置(浣腸、剃毛など)が行われます。
  3. 手術: 手術室に入り、麻酔がかけられます。その後、腹部に数ヶ所の小さな切開が行われ、腹腔鏡や手術器具が挿入されます。炭酸ガスでお腹を膨らませ、視野を確保します。下がってしまった臓器を確認し、腟の壁に人工メッシュを縫合糸で固定します。次に、このメッシュを仙骨の前にある靭帯(前縦靭帯)に縫合糸やタッカー(医療用ステープル)で固定します。これにより、腟や子宮が仙骨から吊り上げられ、本来の位置に戻ります。必要に応じて、他の臓器の脱出や尿失禁に対する手術が同時に行われることもあります。最後に、挿入した器具を抜き、切開創を縫合または医療用テープで閉じます。手術時間は、脱出の程度や合併手術の有無によって異なりますが、一般的に2〜4時間程度かかります。
  4. 術後: 手術後は回復室で覚醒し、病室に戻ります。術後は痛みや吐き気がある場合がありますが、痛み止めなどでコントロールされます。早期離床が推奨され、体調が安定すれば術後数時間で歩行が促されます。

LSC手術の麻酔方法

LSC手術は、通常、全身麻酔で行われます。全身麻酔は、麻酔薬を点滴から投与したり、吸入させたりすることで、意識を完全に消失させ、手術中の痛みを感じなくさせる方法です。また、筋肉も弛緩させるため、腹腔鏡手術に必要な視野を確保しやすくなります。
麻酔の方法や管理は、麻酔科医によって行われます。手術前に麻酔科医から麻酔についての説明があり、麻酔方法やリスクについて確認します。

LSC手術にかかる時間

LSC手術にかかる時間は、患者さんの個々の状態や、骨盤臓器脱の程度、手術の難易度、同時に行う他の手術の有無によって大きく異なります。一般的には、2時間から4時間程度が目安とされています。
例えば、子宮を残して腟を固定する場合、子宮を摘出してから腟断端を固定する場合、膀胱瘤や直腸瘤、小腸瘤なども同時に修復する場合など、手術の内容によって時間は変動します。また、手術を行う医師の経験や、施設の設備などによっても手術時間は変わることがあります。
手術時間については、術前に担当医から具体的な目安について説明を受けることが重要です。

LSC手術後の回復期間

LSC手術は低侵襲手術であるため、開腹手術と比較して回復期間は短い傾向があります。しかし、体への負担はゼロではないため、適切な回復期間を設け、無理のない範囲で日常生活に戻っていくことが大切です。
手術直後は、術後の痛み、吐き気、倦怠感などがある場合があります。これらの症状は、時間とともに軽減していきます。早期離床が回復を早めるために重要であり、術後数時間で歩行を促されます。
術後数日間は、食事の摂取や排尿・排便の状態を確認しながら、徐々に回復していきます。傷口のケアや、必要に応じて留置されたドレーン(体内の液体を排出する管)の管理が行われます。
自宅に戻ってからの回復期間も重要です。手術の種類や個人の回復力によって異なりますが、一般的に術後数週間は、重いものを持つ、激しい運動をするなど、腹圧のかかる動作は避ける必要があります。日常生活の多くの活動は術後2週間程度で可能になりますが、完全に元の生活に戻るまでには1ヶ月〜2ヶ月程度かかることもあります。
性生活については、腟の治癒を待つ必要があるため、通常は術後6週間から8週間程度は控えるように指導されます。再開時期については、必ず医師に相談してください。
回復期間中に、術後の痛み、出血、発熱、排尿困難などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡することが重要です。

LSC手術後の入院期間目安

LSC手術後の入院期間は、手術の内容、患者さんの全身状態、回復の状況、医療機関の方針によって異なります。
一般的には、術後5日から1週間程度が入院期間の目安となります。
入院中は、術後の痛みの管理、食事・排泄状況の確認、傷口のチェック、歩行訓練などが行われます。合併症がなく、自宅での生活に戻る準備が整えば退院となります。
ただし、高齢の方や合併症のある方、術後の回復がゆっくりな方などは、入院期間が長くなる場合もあります。逆に、比較的若く健康な方や、手術が単純だった場合は、これより短くなる可能性もゼロではありません。入院期間については、術前に担当医から目安について説明を受けましょう。

LSC手術の費用と保険適用

LSC手術は、健康保険が適用される手術です。そのため、医療費の自己負担額は、加入している健康保険の種類や年齢によって異なります。
LSC手術の費用(自己負担額)は、以下の要素によって変動します。

  • 手術の内容: 単純な腟の固定のみか、子宮摘出や他の臓器脱の手術を同時に行うかによって費用は異なります。
  • 入院期間: 入院が長くなれば、その分費用も増えます。
  • 個室利用の有無: 個室を利用した場合は、別途差額ベッド代がかかります。
  • 医療機関: 医療機関の種類(大学病院、市立病院、個人病院など)によって、施設基準などが異なるため、費用が若干異なる場合があります。
  • 年齢・所得: 自己負担割合は、年齢(70歳以上など)や所得によって決められています。

一般的な目安として、3割負担の場合、LSC手術とそれに伴う入院にかかる医療費の自己負担額は、20万円から40万円程度となることが多いようです。ただし、これはあくまで目安であり、個々のケースで大きく異なる可能性があります。
高額な医療費がかかる場合でも、高額療養費制度を利用することで、自己負担額には上限が設けられています。この制度を利用すれば、所得に応じた上限額を超えた分の医療費が払い戻されます。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関での支払いを自己負担上限額までとすることができます。

所得区分 月額の自己負担上限額(多数回該当※)
区分ア (年収約1,160万円以上) 252,600円 + (総医療費 – 842,000円) × 1% (140,100円)
区分イ (年収約770万円~約1,160万円未満) 167,400円 + (総医療費 – 558,000円) × 1% (93,000円)
区分ウ (年収約370万円~約770万円未満) 80,100円 + (総医療費 – 267,000円) × 1% (44,400円)
区分エ (年収約370万円未満) 57,600円 (44,400円)
区分オ (住民税非課税者等) 35,400円 (24,600円)
※多数回該当:過去12ヶ月以内に3回以上高額療養費の支給を受けている場合
70歳以上
現役並み所得者 区分ア、イ、ウに準ずる
一般所得者 18,000円(外来のみ) / 57,600円 (44,400円)
低所得者 II (住民税非課税者で低所得者 I 以外) 24,600円
低所得者 I (住民税非課税者で年金収入80万円以下等) 15,000円

* 上記は一般的な自己負担上限額の例です。詳細はご加入の健康保険組合や市町村窓口にご確認ください。
また、民間の医療保険に加入している場合、手術給付金や入院給付金が支給されることがあります。ご自身の保険契約内容を確認し、保険会社に問い合わせてみることをお勧めします。
手術費用について不安がある場合は、手術を検討している医療機関の医療相談室や医事課に相談し、具体的な費用概算や高額療養費制度の利用方法について確認しておくと安心です。

他の治療法との比較

骨盤臓器脱の治療には、LSC手術以外にもいくつかの選択肢があります。それぞれの治療法には特徴があり、患者さんの状態や希望に応じて最適な方法が選択されます。ここでは、代表的な治療法と比較してみましょう。

治療法 概要 メリット デメリット・リスク 適応
LSC手術 腹腔鏡でメッシュを使い、仙骨に固定 低侵襲、回復早い、再発率低い、整容性◎ 技術必要、手術時間長め、メッシュ関連合併症、まれな神経損傷リスク 重度脱出、腟断端脱、活動性の高い方、再発例
経腟手術 (メッシュ使用) 腟からメッシュを挿入し、骨盤底を補強 腟からのアプローチで比較的容易、手術時間短め、回復早い メッシュ関連合併症(露出、痛み、収縮)のリスクが高いと言われる、性交痛のリスク 中〜重度脱出、腟からのアプローチを希望する方
経腟手術 (自己組織使用) 腟から自己組織(靭帯や筋膜)を縫い合わせて補強 メッシュ関連合併症のリスクがない、比較的低侵襲 メッシュ使用に比べて再発率がやや高い傾向、自己組織の強さに依存 軽〜中度脱出、メッシュ使用を避けたい方
リングペッサリー 腟内にシリコン製のリング状の器具を挿入し、臓器の下垂を物理的に支える 非手術的、外来で処置可能、体に負担がかからない、比較的安価 定期的な交換・洗浄が必要、異物感、帯下増加、腟壁びらん、感染、重度脱出には効果が限定的 保存的治療、手術を希望しない・受けられない方、高齢者、一時的な対処として
骨盤底筋体操 骨盤底の筋肉を収縮・弛緩させる運動 体に負担がない、自宅でできる、費用がかからない、初期の軽症に有効 効果が現れるのに時間がかかる、重度脱出には効果が限定的、継続が必要 軽度脱出、予防、手術後の補助

LSC手術は、特に再発率の低さや長期的な安定性において優位性があると考えられていますが、メッシュ関連合併症のリスクや手術の技術的な難しさといったデメリットも考慮する必要があります。経腟手術は、腟からのアプローチであるため腹部の傷がなく、手術時間も短いことが多いですが、一部の術式ではLSC手術よりも再発率が高いとされたり、メッシュ関連合併症のリスクがあったりします。リングペッサリーや骨盤底筋体操は、手術を避けたい場合や軽症の場合の選択肢となります。
どの治療法を選択するかは、医師による診断と、患者さんの希望や生活背景などを総合的に判断して決定されます。十分な情報を得て、納得のいく選択をすることが大切です。

LSC手術について よくある質問

LSC手術について、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q: LSC手術後、性生活はいつから可能ですか?

A: LSC手術後は、腟の組織が完全に治癒するまで、通常は術後6週間から8週間程度、性生活を控えるように指導されます。これは、手術で縫合した部分が傷ついたり、感染したりするのを防ぐためです。回復には個人差があるため、性生活を再開する前に、必ず担当医に相談し、許可を得るようにしてください。術後の診察で腟の状態を確認してもらった上で判断することが重要です。

Q: LSC手術を受けられない人はいますか?

A: LSC手術は全身麻酔で行われる手術であり、また腹腔鏡手術であるため、以下のような方は手術が難しい、あるいは適さない場合があります。

  • 全身状態が手術に耐えられない方: 重度の心疾患、肺疾患、腎疾患などがある方。
  • 高度な肥満の方: 腹腔鏡手術の視野確保や操作が困難になる場合があります。
  • 過去に腹部の大きな手術を受けた方: 腹腔内の癒着が強く、腹腔鏡での操作が困難な場合があります。
  • 重度の凝固異常がある方: 出血のリスクが高まります。
  • 妊娠の可能性のある方: 人工メッシュを使用するため、将来の妊娠を強く希望される方には一般的に勧められません(子宮を摘出する場合も同様)。

これらの条件に当てはまるかどうかは、術前の検査や医師の診察によって判断されます。担当医と十分に相談し、手術の適応について確認してください。

Q: LSC手術で使用するメッシュは一生体内にあるのですか?

A: はい、LSC手術で使用される人工メッシュ(ポリプロピレンなどの素材でできたシート状のもの)は、原則として一生体内にとどまることになります。メッシュは骨盤底の組織を補強し、再脱出を防ぐために使用されます。体内に留まることによる問題(メッシュ露出や感染など)が発生した場合には、その部分だけを切除するなどの処置が必要になることがありますが、通常は体内で安定して機能し続けます。

Q: LSC手術後に骨盤臓器脱が再発する可能性はありますか?

A: LSC手術は、他の手術法と比較して骨盤臓器脱の再発率が低いことが報告されています。しかし、完全にゼロではありません。再発のリスクは、手術前の脱出の程度、患者さんの体質、術後の生活習慣(重いものを持つ、慢性的な便秘、咳など)、加齢などによって異なります。再発を防ぐためには、術後も骨盤底筋体操を続けたり、腹圧を上げるような動作を避けたり、体重管理をしたりすることが推奨されます。万が一再発した場合でも、症状に応じて再手術や他の治療法が検討されます。

Q: LSC手術以外に骨盤臓器脱の治療法はありますか?

A: はい、LSC手術以外にも多くの治療法があります。主なものとしては、リングペッサリー(腟内に挿入する器具)、骨盤底筋体操、そして経腟手術(メッシュを使うもの、メッシュを使わないものなど様々な術式があります)などがあります。これらの治療法の中から、脱出の程度、症状、年齢、全身状態、患者さんの希望などを考慮して、最も適した治療法が選択されます。担当医と十分に話し合い、ご自身の状況に合った治療法を選ぶことが大切です。

【まとめ】LSC手術は骨盤臓器脱の有効な選択肢

LSC手術(腹腔鏡下仙骨腟固定術)は、骨盤臓器脱に対する手術療法として、特に再発率の低さと早期回復の点で大きなメリットを持つ治療法です。お腹に小さな傷しか残らない腹腔鏡手術で行われるため、患者さんの体への負担も比較的少ないとされています。
この手術は、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、腟断端脱など、様々な骨盤臓器脱に対して有効であり、下がってしまった臓器を人工メッシュや自己組織を用いて仙骨に固定することで、骨盤底の構造を再建し、本来あるべき位置に戻します。
一方で、LSC手術には手術時間が長くなる傾向があることや、メッシュ関連合併症を含むリスクが存在することも理解しておく必要があります。また、高度な技術を要するため、全ての医療機関で実施できるわけではありません。
LSC手術は健康保険が適用されますが、費用や入院期間は個々の状況によって異なります。高額療養費制度なども活用できるため、費用について不安がある場合は医療機関に相談してみましょう。
骨盤臓器脱の治療法はLSC手術以外にも複数存在します。ご自身の症状や状態、ライフスタイルに最適な治療法を見つけるためには、骨盤臓器脱の診療経験が豊富な専門医に相談することが最も重要です。医師と十分に話し合い、メリットとデメリットを理解した上で、納得のいく治療法を選択してください。この記事が、LSC手術について理解を深める一助となれば幸いです。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨したり、個々の診断や治療方針を示すものではありません。医療に関する決定は、必ず医師にご相談の上で行ってください。本記事の情報に基づいた行為によって生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です