子宮頸管炎かな?不安な症状・原因・治療法をチェック

子宮頸管炎は、女性にとって比較的よく見られる疾患ですが、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
この記事では、子宮頸管炎の主な原因、見過ごされがちな症状、正確な診断方法、そして適切な治療法について詳しく解説します。
また、予防策や、もし気になる症状が出た場合にいつ医療機関を受診すべきかについても触れます。
ご自身の体の変化に気づき、早めの受診につながる一助となれば幸いです。

子宮頸管炎

子宮頸管炎とは?原因と感染経路

子宮頸管炎の概要

子宮頸管炎とは、子宮の入り口である子宮頸部に炎症が起きる状態を指します。
子宮頸管は、膣と子宮本体をつなぐ筒状の部分で、通常は粘液栓によって細菌などが子宮内部へ侵入するのを防ぐバリアの役割を果たしています。
しかし、様々な原因によってこのバリア機能が低下したり、病原体が侵入したりすることで炎症が生じます。

子宮頸管炎は、原因によって大きく「感染性」と「非感染性」に分けられますが、その大半は感染性によるものです。
また、炎症が急激に起こる「急性子宮頸管炎」と、炎症が長引く「慢性子宮頸管炎」に分類されることもあります。

子宮頸管炎は、特に性的に活動的な若い女性に多く見られますが、年齢に関わらず誰にでも起こりうる病気です。

子宮頸管炎の主な原因

子宮頸管炎の最も一般的な原因は感染です。
様々な病原体が子宮頸部に感染することで炎症を引き起こします。
主な感染性の原因には以下のようなものがあります。

  • 性感染症(STI)を引き起こす病原体:
    • クラミジア・トラコマチス: 子宮頸管炎の最も頻繁な原因の一つです。
      感染しても自覚症状がほとんどないことが多いため、気づかないうちに進行させてしまうことがあります。
    • 淋菌: クラミジアと同様に性行為によって感染します。
      クラミジアよりも比較的症状が出やすい傾向がありますが、やはり無症状の場合も少なくありません。
    • 単純ヘルペスウイルス(HSV): 性器ヘルペスの原因ウイルスです。
      子宮頸部に感染すると、潰瘍や水疱を伴う炎症を起こすことがあります。
    • ヒトパピローマウイルス(HPV): 子宮頸がんの主な原因となるウイルスですが、炎症を引き起こすこともあります。
    • トリコモナス原虫: 性感染症の一つで、膣炎の原因としても知られますが、子宮頸管炎を引き起こすこともあります。
  • 一般細菌: 性行為とは関係なく、膣内に常在する細菌などが子宮頸部に感染して炎症を起こすことがあります。
    大腸菌や連鎖球菌などが原因となることがあります。
  • 非感染性の原因: 感染以外の原因で炎症が起こることもあります。
    • アレルギー反応: 殺精子剤、膣洗浄剤、避妊具(ラテックスなど)に対するアレルギー反応が子宮頸部に炎症を引き起こすことがあります。
    • 物理的・化学的刺激: 膣内に入れるタンポンや医療機器、薬剤による刺激が原因となることも稀にあります。

このように、子宮頸管炎の原因は多岐にわたりますが、特にクラミジアや淋菌といった性感染症が関わっているケースが多いため、感染経路を理解し、適切な予防策を講じることが重要です。

子宮頸管炎の感染経路

子宮頸管炎の主な感染経路は、原因となる病原体によって異なります。

  • 性行為による感染:
    クラミジア、淋菌、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、トリコモナス原虫などの性感染症を引き起こす病原体は、主に性行為(膣性交、アナルセックス、オーラルセックス)を通じて子宮頸部に感染します。
    感染したパートナーとの性行為によって、ウイルスや細菌が子宮頸部に直接接触し、炎症を引き起こします。
    これらの病原体は、症状がないまま感染している場合も多いため、自覚症状がなくても感染を広げてしまうリスクがあります。
  • 膣からの上行感染:
    膣内に常在する細菌や、外陰部からの細菌が、子宮頸管を経由して上行し、子宮頸部に炎症を引き起こすことがあります。
    これは性行為が直接の原因ではなくても起こり得ますが、性行為や膣洗浄などによって膣内の細菌バランスが崩れたり、子宮頸管のバリア機能が一時的に低下したりした場合に起こりやすくなります。
  • 出産や流産後の感染:
    出産や流産の後、子宮頸管が開いている期間があり、この間に細菌が侵入しやすくなることで感染を起こすことがあります。

このように、子宮頸管炎の感染経路は様々ですが、性行為が関与するケースが多い点を理解しておくことが、予防や早期発見のために非常に重要です。
特に、新たなパートナーとの性行為や不特定のパートナーとの性行為がある場合は、感染リスクが高まるため注意が必要です。

子宮頸管炎の症状とセルフチェック

子宮頸管炎の症状は、原因となる病原体や炎症の程度によって異なります。
また、多くの場合、症状がほとんどない(無症状)か、非常に軽微なため見過ごされやすいという特徴があります。

子宮頸管炎の症状:おりもの異常や出血

子宮頸管炎で比較的多く見られる症状は、おりものの変化です。
健康な時のおりものとは異なり、以下のような特徴が現れることがあります。

  • おりものの量が増える
  • おりものの色が変わる: 透明から黄色や黄緑色になる。
    膿が混じったような色になることもあります。
  • おりものの性状が変わる: サラサラしているものから、ネバネバとした粘液性のもの、あるいは泡状になることもあります(トリコモナス感染の場合など)。
  • おりものの臭いが強くなる: 魚が腐ったような不快な臭いがすることがあります(細菌性膣症を合併している場合など)。

また、不正出血も子宮頸管炎の比較的よく見られる症状の一つです。

  • 性交時の出血(接触出血): 性行為の際、子宮頸部に刺激が加わることで出血しやすくなります。
    これは炎症を起こした子宮頸部が非常にデリケートになっているために起こります。
  • 生理期間以外の出血: 生理とは無関係の時期に少量の出血が見られることがあります。

これらの症状は、子宮頸管炎以外の婦人科疾患(膣炎、子宮内膜炎、子宮頸部ポリープ、子宮がんなど)でも見られることがあるため、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。

子宮頸管炎のその他の症状:腹痛や排尿時の不快感

おりもの異常や不正出血以外にも、子宮頸管炎によって以下のような症状が現れることがあります。
ただし、これらの症状は子宮頸管炎だけが原因であるとは限らず、他の疾患との鑑別が必要です。

  • 下腹部の痛みや不快感: 炎症が子宮頸部の周囲に広がったり、軽度の骨盤内炎症性疾患に進行したりした場合に、下腹部に鈍い痛みや重い感じ、違和感が生じることがあります。
  • 排尿時の痛みや不快感(排尿痛、残尿感): 子宮頸管の炎症が尿道に波及したり、原因となる病原体(特にクラミジアや淋菌)が同時に尿道にも感染したりしている場合に起こることがあります。
    膀胱炎と似た症状ですが、膀胱炎特有の頻尿などが目立たない場合もあります。
  • 性交時の痛み(性交痛): 性行為の際に子宮頸部に刺激が加わることで、痛みを伴うことがあります。

これらの症状は、子宮頸管炎が原因でなくても、婦人科や泌尿器科の様々な疾患で起こりうるため、症状だけでは子宮頸管炎と断定することはできません。
しかし、おりもの異常や不正出血と併せてこれらの症状が見られる場合は、子宮頸管炎を含む何らかの炎症や感染が起きている可能性が高いと考えられます。

子宮頸管炎が無症状の場合

前述の通り、子宮頸管炎は無症状であることが非常に多いという重要な特徴があります。
特に、クラミジアによる子宮頸管炎は、約80%が無症状であると言われています。
淋菌による子宮頸管炎も、約50%が無症状と報告されています。

症状がない場合、本人は感染に気づかないまま日常生活を送ることになります。
しかし、炎症は静かに進行し、放置することで後述するような重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります
また、無症状であっても、性行為によってパートナーに病原体をうつしてしまう可能性もあります。

無症状であるにも関わらず、子宮頸管炎が発見されるのは、以下のような場合がほとんどです。

  • パートナーが性感染症と診断されたため、ご自身も検査を受けた場合
  • 婦人科の定期検診(特に子宮頸がん検診)を受けた際に、偶然炎症や異常が見つかった場合
  • 他の理由(不妊検査など)で婦人科を受診し、検査を行った結果発見された場合

無症状の場合が多いため、「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、性的な活動がある方は定期的な性感染症検査を検討することが重要です。

子宮頸管炎が疑われるサイン

子宮頸管炎を疑うべきサインは、ご自身の普段の状態とは異なる変化に気づくことです。
特に以下のいずれかに当てはまる場合は、子宮頸管炎の可能性を考え、医療機関を受診することを検討しましょう。

  • これまでと違うおりものの変化: 量、色(黄色、黄緑色)、性状(ネバネバ、泡状)、臭い(魚臭いなど)に異常を感じる。
  • 生理期間以外の出血: 特に性交後に出血が見られる。
  • 下腹部の鈍い痛みや違和感が続く。
  • 排尿時に痛みや不快感がある。
  • 性交時に痛みを感じる。
  • 性行為のパートナーが性感染症(クラミジアや淋菌など)と診断された

これらの症状は、子宮頸管炎以外の病気でも起こりうるため、自分で診断することはできません。
しかし、これらのサインに気づいたら、ためらわずに婦人科を受診することが大切です。
早期に原因を特定し、適切な治療を開始することが、合併症を防ぐ上で非常に重要になります。

子宮頸管炎の診断方法

子宮頸管炎が疑われる場合、医療機関では問診、内診、そして各種検査を組み合わせて診断を行います。
症状がなくても、検査によって偶然発見されることも少なくありません。

子宮頸管炎の診断:問診と内診

医療機関での診断は、まず医師による問診から始まります。
以下の情報が診断のヒントとなります。

  • 現在の症状: おりものの変化、不正出血、腹痛、排尿時の不快感、性交痛など、具体的な症状の有無や程度、いつから始まったかなどを詳しく聞かれます。
  • 月経周期: 最終月経日や生理の状況を確認します。
  • 性行為の状況: 性的な活動があるか、パートナーの人数、新たなパートナーの有無、性感染症の既往歴やパートナーの感染状況などを聞かれることがあります。
    これらの情報は、性感染症が原因である可能性を判断するために重要です。
  • 既往歴: 過去の婦人科疾患、性感染症、アレルギー、現在服用している薬などを確認します。

次に、内診が行われます。

  • 視診: 膣鏡(クスコ)を用いて膣の内部と子宮頸部を観察します。
    子宮頸管炎がある場合、子宮頸部が赤く腫れていたり、ただれていたり(びらん)、触れると出血しやすくなっていたりといった炎症の兆候が見られることがあります。
    また、子宮頸管から膿のような粘液(粘液膿性分泌物)が出ているのを確認できる場合があります。
  • 触診: 内診台で医師が指を使って子宮や卵巣の大きさ、形、圧痛の有無などを確認します。
    炎症が子宮頸部の奥に広がっていないかなどを評価します。

問診と内診は、子宮頸管炎の可能性を判断するための最初のステップです。
特に内診での子宮頸部の観察は、診断において非常に重要です。

子宮頸管炎の診断:細菌検査や病原体検査

子宮頸管炎が疑われる場合、原因となっている病原体を特定するために様々な検査が行われます。
これらの検査結果に基づいて、適切な治療法が決定されます。

  • おりもの検査(細菌培養検査): 子宮頸管から採取したおりものを培養し、どのような細菌が増殖しているか、またどのような抗生物質が効果的か(薬剤感受性試験)を調べます。
    淋菌や一般細菌による感染を診断するのに有用です。
  • クラミジア・トラコマチス/淋菌検査(核酸増幅法など): 子宮頸管から採取した検体を用いて、クラミジアや淋菌の遺伝子を検出する検査です。
    感度が高く、現在の診断において中心的な役割を果たします。
    尿検査でこれらの病原体を調べることもありますが、女性の場合は子宮頸管からの検体の方が正確性が高いとされています。
  • 単純ヘルペスウイルス(HSV)検査: 子宮頸部に潰瘍や水疱がある場合に、その部分から検体を採取してウイルスを検出する検査です。
  • トリコモナス検査: おりものを顕微鏡で観察したり、培養したりしてトリコモナス原虫の有無を調べます。

これらの検査によって、子宮頸管炎の原因が性感染症によるものなのか、あるいは他の細菌によるものなのかを特定します。
原因を正確に診断することが、適切な治療を選択し、合併症を防ぐために不可欠です。

子宮頸管炎と子宮頸部細胞診(抹片檢查)

子宮頸部細胞診(パップテスト)は、主に子宮頸がんの検診として広く行われている検査です。
子宮頸部から採取した細胞を顕微鏡で調べ、がん細胞や前がん病変がないかを確認します。

子宮頸部細胞診は、直接的に子宮頸管炎の原因菌を特定する検査ではありません。
しかし、炎症が起きている子宮頸部の細胞は、健康な細胞とは異なる形態を示すことがあります。
そのため、細胞診の結果に「炎症性変化」や「活動性炎症」といった所見が見られることがあります。

細胞診で炎症所見が見つかった場合、それは必ずしも重篤な病気を示すものではありませんが、子宮頸管炎などの炎症が実際に起きているサインとなり得ます。
細胞診の結果に炎症所見があった場合、医師は必要に応じて、より詳細な検査(前述の細菌検査や病原体検査など)を追加で行い、炎症の原因を調べ、適切な治療を開始することがあります。

つまり、子宮頸部細胞診はがん検診が主目的ですが、子宮頸管炎の存在を示唆する情報を提供することもあるという関連性があります。
細胞診で炎症を指摘された場合は、放置せず医師に相談し、必要であれば追加検査を受けるようにしましょう。

子宮頸管炎の治療法と治療期間

子宮頸管炎と診断された場合、原因に応じて適切な治療が行われます。
治療の中心は薬物療法であり、特に細菌感染が原因の場合は抗生物質が使用されます。

子宮頸管炎の主な治療:薬物療法

子宮頸管炎の治療は、原因となっている病原体に対する薬物療法が基本となります。

  • 細菌性子宮頸管炎(クラミジア、淋菌、一般細菌など):
    これらの細菌が原因の場合は、抗生物質が処方されます。
    使用される抗生物質の種類は、原因菌によって異なります。
    • クラミジア: マクロライド系抗生物質(アジスロマイシンなど)やテトラサイクリン系抗生物質(ドキシサイクリンなど)が主に使われます。
      多くの場合、短期間(1日または7日間程度)の服用で治療が完了します。
    • 淋菌: セフトリアキソンなどの注射薬や、アジスロマイシンなどの内服薬が使用されます。
      近年、淋菌は薬剤耐性を持つものが増えているため、治療には注意が必要です。
    • 一般細菌: 培養検査の結果を参考に、原因となっている細菌に効果のある抗生物質が選択されます。

    細菌性子宮頸管炎の場合、パートナーも同時に治療を受けることが非常に重要です。
    パートナーが治療を受けないと、治癒しても再び感染してしまう(ピンポン感染)可能性があるためです。
    パートナーにも医療機関を受診してもらい、一緒に検査・治療を受けるようにしましょう。

  • ウイルス性子宮頸管炎(単純ヘルペスウイルスなど):
    単純ヘルペスウイルスが原因の場合は、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)が処方されます。
    ウイルスの増殖を抑え、症状を軽減し、治癒を早める効果があります。
    性器ヘルペスは再発しやすい病気ですが、再発抑制療法として抗ウイルス薬を継続的に内服することもあります。
  • その他の原因(トリコモナスなど):
    トリコモナス原虫が原因の場合は、メトロニダゾールなどの抗原虫薬が使用されます。

原因が特定できない場合や、複数の病原体による混合感染が疑われる場合は、複数の種類の薬が処方されることもあります。
自己判断で服用を中止せず、医師の指示通りに最後まで薬を飲み切ることが大切です。

子宮頸管炎の治療にかかる期間

子宮頸管炎の治療期間は、原因となる病原体や使用する薬の種類によって異なります。

  • クラミジア感染: 多くの場合、アジスロマイシンを1回服用、またはドキシサイクリンを7日間服用といった比較的短期間の治療で効果が得られます。
  • 淋菌感染: 通常、注射薬による1回の治療、または内服薬を7日間服用といった短期間の治療が一般的です。
  • 一般細菌感染: 細菌の種類や重症度によって異なりますが、通常は1週間から2週間程度の抗生物質の内服が必要となることが多いです。
  • 単純ヘルペスウイルス感染: 初感染の場合は7〜10日間程度の抗ウイルス薬の内服が一般的です。
    再発の場合や症状の程度によっては期間が異なることがあります。

薬を服用し始めて数日で症状が改善することもありますが、自覚症状がなくなったからといって自己判断で薬を中止することは絶対に避けましょう
薬を途中でやめると、病原体が完全に排除されず、再燃したり、薬剤耐性菌が出現したりするリスクがあります。
医師から指示された期間、しっかりと治療を完了することが重要です。

治療後には、病原体が排除されたかを確認するための再検査が必要になる場合が多いです。
特にクラミジアや淋菌の場合は、治療効果判定のために必ず再検査を受けましょう。

子宮頸管炎は自然に治るのか?

子宮頸管炎が自然に治癒する可能性は低いと考えられます。

特にクラミジアや淋菌といった性感染症が原因の場合、これらの病原体は自然に体から排除されることはほとんどなく、放置すると炎症が慢性化したり、子宮の奥や骨盤内へと進行したりするリスクが高まります

一般細菌による軽度の炎症であれば、体の免疫力によって自然に改善する可能性もゼロではありませんが、原因を特定せず放置することは、症状の悪化や他の合併症を引き起こす危険を伴います
例えば、膣内の細菌バランスが崩れて起きた炎症が自然に改善せず、慢性化してしまうこともあります。

症状が軽い場合や無症状の場合でも、炎症は子宮頸部の組織に影響を与え続けています。
また、原因菌が存在する限り、パートナーへの感染リスクも持続します。

したがって、「もしかして?」と思ったり、検査で異常が見つかったりした場合は、「自然に治るだろう」と安易に考えず、必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが極めて重要です。
早期に治療を開始することで、合併症を防ぎ、自身の健康とパートナーの健康を守ることができます。

子宮頸管炎治療中の注意点

子宮頸管炎の治療中は、薬を正しく服用することに加えて、いくつかの注意点があります。
これらを意識することで、治療効果を高め、再感染やパートナーへの感染を防ぐことができます。

  • 医師の指示通りに薬を服用する: 決められた量と回数、期間、薬の種類を守って服用しましょう。
    症状が改善しても自己判断で中止しないことが最も重要です。
  • パートナーも一緒に検査・治療する: 性感染症が原因の場合、パートナーも感染している可能性が非常に高いです。
    パートナーが治療を受けないと、治っても再び感染してしまう「ピンポン感染」を繰り返すことになります。
    必ずパートナーにも医療機関の受診を勧め、一緒に検査・治療を受けてもらいましょう。
  • 治療期間中の性行為は避ける: 治療が終わるまで、または医師から許可が出るまでは性行為を控えましょう。
    これは、パートナーへの感染を防ぐためであると同時に、治療中の子宮頸部に刺激を与えないため、そして再感染を防ぐためです。
  • 再検査を受ける: 特にクラミジアや淋菌などの性感染症が原因の場合、治療が完了した後に治療効果を確認するための再検査が必要です。
    多くの場合、治療終了後1週間~数週間後に再検査を行います。
    検査で陰性であることが確認できて初めて、完全に治癒したと判断できます。
    再検査を受けずに自己判断で治癒したと思い込まないようにしましょう。
  • 清潔を保つ: 外陰部を清潔に保つことは重要ですが、過度な膣洗浄はかえって膣内の良い菌まで洗い流してしまい、細菌バランスを崩す可能性があるため避けましょう。
    石鹸で優しく洗い流す程度で十分です。
  • アルコールとの相互作用: 薬によってはアルコールとの飲み合わせが問題になる場合があります(特にメトロニダゾールなど)。
    服用している薬とアルコールの影響については、医師や薬剤師に確認しましょう。

これらの注意点を守ることで、子宮頸管炎を確実に治療し、健康な状態を取り戻すことができます。

子宮頸管炎の改善方法:治療以外の対策

子宮頸管炎の治療は薬物療法が中心ですが、治療効果をサポートし、体の回復を促すために、治療以外の側面からもできることがあります。
これらは病気を直接治すものではありませんが、体調を整える上で役立ちます。

  • 十分な休息と栄養: 免疫力を高め、体が炎症と闘うのを助けるためには、十分な睡眠とバランスの取れた食事が必要です。
    特に、ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜、果物、タンパク質などを積極的に摂りましょう。
  • ストレスの軽減: 過度なストレスは免疫力を低下させる可能性があります。
    リラクゼーション法を取り入れたり、趣味などで気分転換をしたりして、ストレスを溜め込まないように心がけましょう。
  • 冷えを避ける: 体が冷えると血行が悪くなり、回復が遅れることがあります。
    特に下半身を冷やさないように注意しましょう。
  • 生理中のケア: 生理中は子宮頸管が開くため、感染しやすい状態になります。
    ナプキンやタンポンをこまめに交換し、清潔を保つことが大切です。
  • 特定のサプリメントや食品: 膣内の良い菌である乳酸菌を増やす働きを持つヨーグルトやサプリメントなどが、膣内の環境を整えるのに役立つ可能性があります。
    ただし、これらはあくまで補助的なものであり、子宮頸管炎の治療薬の代わりにはならないことに注意が必要です。
    また、サプリメントなどを摂取する際は、医師に相談することをお勧めします。

これらの対策は、あくまで適切な診断と薬物療法を基本とした上で取り入れるべきものです。
体調を整え、体の回復力を高めることで、治療効果をより確実なものにすることを目指しましょう。

子宮頸管炎を放置するリスクと合併症

子宮頸管炎は、症状が軽かったり、無症状だったりするために見過ごされがちですが、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
子宮頸管の炎症が子宮の奥やその周辺の臓器へと広がることで、様々な問題が発生します。

子宮頸管炎から進行する骨盤内炎症性疾患(PID)

子宮頸管炎を放置した場合の最も重大なリスクの一つは、炎症が子宮頸管からさらに上へと広がり、骨盤内炎症性疾患(Pelvic Inflammatory Disease; PID)に進行することです。

PIDは、子宮内膜、卵管、卵巣、骨盤内の腹膜などに炎症が広がる状態を指します。
特にクラミジアや淋菌による子宮頸管炎は、無症状のままPIDに進行することが多いため注意が必要です。

PIDの症状には、下腹部の強い痛み、発熱、悪寒、吐き気、異常なおりもの、不正出血などがあります。
しかし、PIDも無症状の場合や、症状が軽微で気づかれにくい場合があります。

PIDは、適切な治療を受けないと慢性的な下腹部痛や不妊症、子宮外妊娠のリスク増加など、女性の生殖機能に深刻な影響を与える可能性があります。
入院による点滴での抗生物質治療が必要となる場合もあります。

子宮頸管炎の段階で適切に治療することで、PIDへの進行を防ぐことが非常に重要です。

子宮頸管炎と不妊症

子宮頸管炎が骨盤内炎症性疾患(PID)に進行した場合、不妊症の原因となるリスクが高まります。

PIDによって卵管に炎症が起きると、卵管が腫れたり、癒着したり、最終的には卵管が詰まってしまう(卵管閉塞)ことがあります。
卵管は、卵子と精子が出会い受精する場所であり、受精卵が子宮へと運ばれる通り道です。
卵管が閉塞したり、動きが悪くなったりすると、卵子と精子が出会えなくなったり、受精卵が子宮にたどり着けなくなったりするため、自然妊娠が困難になります。

特にクラミジア感染による子宮頸管炎やPIDは、症状が軽微であるにも関わらず卵管のダメージを引き起こしやすいことが知られています。
無症状で放置された子宮頸管炎が、後に不妊検査を受けた際に卵管の異常として発見されることも少なくありません。

PIDによる卵管の損傷は、治療によって完全に回復しないこともあります。
そのため、子宮頸管炎の段階で早期に発見し、適切な治療を行うことが、将来の妊娠の可能性を守る上で非常に重要です。

子宮頸管炎と妊娠への影響

妊娠中に子宮頸管炎にかかると、母体だけでなく胎児や新生児にも様々な影響を及ぼす可能性があります。

  • 早産: 妊娠中の子宮頸管の炎症が、子宮の収縮を引き起こし、早産や切迫早産の原因となることがあります。
    特に上行感染が進み、子宮内膜や卵膜に炎症が及ぶと、早期の破水や陣痛につながることがあります。
  • 絨毛膜羊膜炎: 子宮頸管の病原体が子宮内へと侵入し、胎児を包む膜(絨毛膜と羊膜)や羊水に感染を起こすことがあります。
    これは絨毛膜羊膜炎と呼ばれ、早産や帝王切開の増加、新生児への感染のリスクを高めます。
  • 新生児への感染: 分娩時に、産道にいる病原体(特にクラミジアや淋菌、単純ヘルペスウイルス)が新生児に感染することがあります。
    • クラミジア: 新生児に結膜炎(クラミジア性結膜炎)肺炎(クラミジア性肺炎)を引き起こす可能性があります。
    • 淋菌: 新生児に淋菌性結膜炎(新生児眼炎)を引き起こす可能性があり、放置すると失明に至ることもあります。
    • 単純ヘルペスウイルス: 新生児に感染すると、播種性ヘルペス感染症という全身性の重篤な感染症を引き起こし、命に関わることもあります。

妊娠を希望している方や妊娠中の方は、子宮頸管炎の原因となる性感染症などにかからないように予防に努め、もし感染が疑われる症状があれば、速やかに産婦人科医に相談することが極めて重要です。
妊娠中の子宮頸管炎も、適切な診断と治療を行うことで、これらのリスクを減らすことができます。

子宮頸管炎の予防と再診の重要性

子宮頸管炎は、その原因の多くが性感染症であることから、予防策を講じることが非常に有効です。
また、治療が完了した後も、再発を防ぐための注意や、治癒確認のための再診が重要となります。

子宮頸管炎の予防策

子宮頸管炎、特に性感染症を原因とするものを予防するためには、以下の対策が有効です。

  • コンドームの正しい使用: 性行為の際にコンドームを最初から最後まで正しく使用することは、クラミジア、淋菌、トリコモナス、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルスなどの性感染症の感染リスクを減らす上で最も効果的な方法の一つです。
    ただし、コンドームで完全に予防できるわけではありません。
  • 特定のパートナーとの関係: パートナーの人数が多いほど、性感染症のリスクは高まります。
    信頼できる特定のパートナーとの関係を持つことが、リスクを減らすことにつながります。
  • パートナーとのコミュニケーション: パートナーと性感染症について話し合い、お互いの既往歴や検査結果を共有することは、安心して性的な関係を築く上で大切です。
  • 定期的な性感染症検査: 性的に活動的な方、特にパートナーが変わった際などは、定期的に性感染症の検査を受けることを検討しましょう。
    無症状で感染している場合でも早期に発見し、治療を開始できます。
  • ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種: HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となる特定の型のHPV感染を予防します。
    HPVは子宮頸管炎の原因となることもありますので、予防効果が期待できます。
  • 過度な膣洗浄を避ける: 膣内を洗いすぎると、膣内の常在菌のバランスが崩れ、感染しやすくなる可能性があります。
    膣洗浄は医師から指示があった場合にのみ行い、普段は外陰部を優しく洗う程度にしましょう。

これらの予防策を日常生活に取り入れることで、子宮頸管炎のリスクを減らすことができます。

子宮頸管炎治療後の再診について

子宮頸管炎の治療が終わったからといって安心せず、必ず医師の指示通りに再診を受けることが重要です。

特にクラミジアや淋菌などの性感染症が原因であった場合は、治療薬を飲み終えた後に、病原体が本当に体から排除されたかを確認するための「治癒確認検査」が必要です。
この検査は、治療終了後すぐではなく、薬の効果が体内から十分になくなった1週間〜数週間後に行うのが一般的です。
検査のタイミングについては、医師の指示に従ってください。

再検査で陰性であることが確認できれば、治療は成功したと判断できます。
しかし、もし陽性であった場合は、治療がうまくいかなかったか、再感染したかのどちらかであり、追加の治療が必要となります。

再診を怠ると、治っていないのに治ったと思い込み、炎症が慢性化したり、パートナーに再びうつしてしまったり、あるいは前述の骨盤内炎症性疾患などの合併症に進行してしまうリスクがあります。

医師は、病原体が完全に排除されたことを確認し、再発予防のアドバイスなどを行うためにも再診を求めています。
自身の健康のため、そしてパートナーの健康のためにも、必ず再診の予約を守り、治癒確認検査を受けましょう

子宮頸管炎の再発予防

子宮頸管炎は、原因によっては再発する可能性があります。
特に性感染症が原因の場合、再感染を防ぐ対策が重要です。

  • パートナーの同時治療: 性感染症が原因の場合、パートナーも同時に検査・治療を受けることが最も重要な再発予防策です。
    パートナーが感染したままだと、治癒してもすぐに再感染してしまいます(ピンポン感染)。
  • 治癒確認検査の徹底: ご自身だけでなく、パートナーも一緒に治癒確認検査を受け、お互いの陰性を確認することが理想的です。
  • 性行為における予防策の継続: 新たなパートナーとの性行為や不特定のパートナーとの性行為を行う場合は、引き続きコンドームを正しく使用するなど、性感染症の予防策を徹底しましょう。
  • 定期的な検査: 性感染症のリスクがある場合は、症状がなくても定期的に検査を受けることで、再発や新たな感染を早期に発見できます。
  • 膣内環境の維持: 非感染性の原因や一般細菌による子宮頸管炎の場合は、膣内の良い菌(乳酸菌など)のバランスを保つことが再発予防につながる可能性があります。
    過度な膣洗浄を避け、健康的な生活を心がけましょう。

一度子宮頸管炎を経験した方は、原因や体質によって再発しやすい場合があります。
不安なことや、予防についてさらに詳しく知りたいことがあれば、遠慮なく医師に相談しましょう。

こんな時は子宮頸管炎を疑って病院へ

もし、ご自身の体に以下のような変化を感じたら、子宮頸管炎を含む何らかの婦人科疾患が起きている可能性があります。「これくらいなら大丈夫だろう」と軽視せず、早めに医療機関(婦人科)を受診することをお勧めします

症状 具体的な状態 受診目安
おりものの変化 量が増えた、黄色や黄緑色になった、ネバネバしている、泡状になった、魚臭いなど不快な臭いがする ご自身の普段の状態と明らかに異なる変化に気づいた場合。
特に数日経っても改善しない場合。
不正出血 生理期間以外に出血がある。
特に性交後に出血が見られる。
性交後に出血が見られた場合や、生理とは関係なく少量の出血が続く場合。
下腹部の痛み 鈍い痛み、重い感じ、違和感が続く。 痛みが続く場合や、おりもの異常・出血と併せて痛む場合。
強い痛みの場合は速やかに受診。
排尿時の不快感 排尿時の痛み、残尿感がある。 症状が続く場合や、おりもの異常・出血と併せて見られる場合。
性交時の痛み 性行為の際に痛みを感じる。 性交痛がある場合。
パートナーの感染 性行為のパートナーが性感染症(クラミジア、淋菌など)と診断された。 ご自身に症状がなくても、必ず検査を受けましょう。
その他 特に症状はないが、性感染症の可能性のある性行為があった、定期的な性感染症検査を受けたい。 症状がなくても検査を受けたい場合、あるいは定期的な検診の時期。

これらのサインは、子宮頸管炎だけでなく、膣炎、子宮内膜炎、子宮頸部ポリープ、子宮頸がん、膀胱炎など、様々な婦人科や泌尿器科の疾患によっても起こり得ます。
自己判断で「きっと大丈夫」と決めつけず、専門家である医師に相談することが、正確な診断と適切な治療への第一歩です。

特に、パートナーが性感染症と診断された場合は、ご自身に全く症状がなくても感染している可能性が非常に高いため、速やかに婦人科を受診し、検査を受けることが強く推奨されます。
無症状の子宮頸管炎は、放置すると将来の不妊や合併症につながるリスクがあるため、早期発見・早期治療が何よりも重要です。

まとめ

子宮頸管炎は、子宮頸部に炎症が起きる疾患であり、その多くは性感染症を原因とします。
おりものの異常や不正出血といった症状が現れることがありますが、無症状の場合も多く、見過ごされやすい点が特徴です。

症状がないまま放置すると、炎症が子宮の奥に広がり、骨盤内炎症性疾患(PID)に進行したり、将来の不妊症や妊娠中の合併症(早産、新生児感染など)のリスクを高めたりする可能性があります。

子宮頸管炎の診断は、問診、内診、そして子宮頸管から採取した検体を用いた細菌検査や病原体検査によって行われます。
特にクラミジアや淋菌といった性感染症の検査は重要です。

治療は、原因となっている病原体に応じた薬物療法が基本となります。
原因が細菌であれば抗生物質、ウイルスであれば抗ウイルス薬が処方されます。
医師の指示通りに薬を最後まで服用すること、そして性感染症が原因の場合はパートナーも一緒に検査・治療を受けることが非常に重要です。

また、治療が完了した後には、病原体が完全に排除されたかを確認するための治癒確認検査を必ず受けるようにしましょう。

子宮頸管炎を予防するためには、コンドームの正しい使用、信頼できるパートナーとの関係、定期的な性感染症検査などが有効です。

もし、おりものの変化、不正出血、下腹部痛など、ご自身の体の変化に気づいたら、あるいはパートナーが性感染症と診断された場合は、症状が軽くても、あるいはなくても、ためらわずに医療機関(婦人科)を受診してください

早期に発見し、適切な診断と治療を受けることが、子宮頸管炎を完治させ、自身の健康と将来の妊娠の可能性を守る上で何よりも大切です。

免責事項:
この記事で提供する情報は一般的な知識に関するものであり、個別の病状や治療に関する医学的なアドバイスではありません。
ご自身の健康状態については、必ず専門の医療機関で医師にご相談ください。
この記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる結果についても、当方では責任を負いかねますのでご了承ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です