子宮頸部異形成とは?言われたら知るべき原因・検査・治療・経過観察

子宮頸部異形成について、「検診で異常があった」「よく耳にするけど、どんな状態か分からない」など、さまざまな不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この子宮頸部異形成は、子宮頸がんに進む可能性がある「前がん病変」と呼ばれる状態です。しかし、早期に発見し適切に対応すれば、その多くは子宮頸がんになるのを防ぐことができます。
この記事では、子宮頸部異形成の原因から検査、治療、経過、予防までを分かりやすく解説します。

子宮頸部異形成とは?原因と基礎知識

子宮頸部異形成は、子宮の入り口部分(子宮頸部)の粘膜にできる、がんになる前の異常な細胞のことです。正常な細胞とは異なる形をしており、放っておくと一部が子宮頸がんに進行する可能性があります。ただし、異形成が見つかったからといって、すぐに子宮頸がんになるわけではありません。多くは自然に正常に戻ったり、ごくゆっくりと進行したりします。

子宮頸部異形成の主な原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)

子宮頸部異形成のほぼ全ては、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で起こります。
HPVは非常にありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性の多くが一生に一度は感染すると言われています。HPVには100種類以上のタイプがあり、その中で子宮頸がんや異形成を引き起こしやすい「ハイリスク型HPV」と、尖圭コンジローマなどを引き起こす「ローリスク型HPV」に分けられます。

ハイリスク型HPVに感染しても、多くの場合は自己の免疫力によってウイルスが自然に排除されます。しかし、一部の人ではウイルスが長期間体内に残り、子宮頸部の細胞に変化(異形成)を引き起こすことがあります。この状態がさらに続くと、ごく一部が子宮頸がんに進行するのです。

HPVは主に性交渉によって感染しますが、性交渉経験があれば誰でも感染する可能性があります。感染しているかどうかは、通常自覚症状がないため分かりません。

子宮頸部異形成に自覚症状はほとんどない

子宮頸部異形成の最も重要な特徴の一つは、ほとんどの場合、自覚症状がないということです。
不正出血やおりものの異常といった症状が出ることがありますが、これは異形成が進行して、より広い範囲に広がったり、炎症を伴ったりした場合などであり、初期の段階ではまず症状はありません。

そのため、子宮頸部異形成は自覚症状が出てから発見されるのではなく、定期的な子宮頸がん検診によって偶然発見されることがほとんどです。
症状がないからといって検診を受けないでいると、知らないうちに異形成が進行し、発見されたときには子宮頸がんになっていた、というケースも少なくありません。
だからこそ、定期的な検診が非常に大切なのです。

子宮頸部異形成の診断・進行度(軽度・中等度・高度異形成)

子宮頸部異形成は、細胞や組織の異常の程度によって、いくつかの段階に分類されます。この分類は、異形成がどれくらい進んでいるか、将来がんになる可能性がどれくらいあるかを知る上で非常に重要です。

診断名と進行度(CIN分類)

子宮頸部異形成の進行度は、主に「CIN(サーヴィカル・イントラエピセリアル・ネオプラジア)」という分類が用いられます。これは、子宮頸部の細胞の異常が上皮(表面の層)のどの深さまで及んでいるかを示すものです。

  • CIN1(軽度異形成)
  • CIN2(中等度異形成)
  • CIN3(高度異形成)

このCIN分類は、細胞診や組織診の結果をもとに医師が診断します。

軽度異形成(CIN1)とは

軽度異形成(CIN1)は、異形成の中で最も程度が軽い段階です。子宮頸部の上皮の一番下の層(基底膜に近い部分)に限局した細胞の異常が見られます。
CIN1の多くは、免疫力によってHPVが排除されるのに伴い、自然に正常な細胞に戻ることが期待できます。
がんへ進行する可能性も比較的低いとされています。

中等度異形成(CIN2)とは

中等度異形成(CIN2)は、軽度と高度の中間の段階です。細胞の異常が上皮の基底膜から約3分の2程度の深さまで及んでいる状態です。
CIN2の一部は自然に正常に戻ることもありますが、CIN1に比べると自然治癒の可能性は低くなります。
また、一部は高度異形成やごく早期の子宮頸がんに進行する可能性もあります。そのため、医師は経過観察とするか、積極的な治療を行うかを慎重に判断します。

高度異形成(CIN3)とは

高度異形成(CIN3)は、異形成の中で最も程度が重い段階です。子宮頸部の上皮のほとんど全体にわたって強い細胞の異常が見られます。
CIN3は「前がん病変」の中でも、子宮頸がんになる可能性が比較的高い状態とされています。
厳密にはがんと診断される状態ではありませんが、放っておくと数年以内に一部が子宮頸がんに進行すると考えられているため、原則として治療が必要となります。

軽度異形成は自然治癒することが多い?

はい、軽度異形成(CIN1)は、自然に正常な状態に戻る可能性が高いとされています。
統計的には、CIN1と診断された方の約60%~70%が2年以内に自然治癒すると言われています。これは、体の免疫システムがHPVを排除し、それによって異常な細胞も正常な状態に戻るためと考えられています。

ただし、全てのCIN1が自然治癒するわけではありません。一部はそのままの状態が続いたり、ごくまれに中等度や高度の異形成、あるいはがんに進行することもあります。そのため、CIN1と診断された場合でも、定期的な経過観察が重要になります。

高度異形成は子宮頸がんの一歩手前

高度異形成(CIN3)は、しばしば「子宮頸がんの一歩手前」と表現されます。これは、CIN3の細胞の異常は、子宮頸がんのごく初期の段階である「上皮内がん(がん細胞が上皮の層の中にとどまっている状態)」と区別することが難しい場合があるためです。

CIN3は、放っておくと約10%~20%が浸潤がん(がん細胞が上皮の下の組織に広がる状態)に進行すると考えられています。浸潤がんに進行するまでにかかる期間には個人差がありますが、数年程度であることが多いとされています。

CIN3は、まだがんと診断される状態ではありませんが、将来のがん化リスクが高いため、積極的な治療が推奨されます。
治療によって異常な細胞を取り除くことで、子宮頸がんになるリスクを大幅に減らすことができます。

子宮頸部異形成の主な検査方法

子宮頸部異形成や子宮頸がんの診断は、いくつかの検査を組み合わせて行われます。子宮頸がん検診で「要精密検査」となった場合、以下のような詳しい検査が必要になります。

細胞診(子宮頸がん検診)

細胞診は、子宮頸がん検診の最も基本的な検査です。子宮頸部の表面をブラシなどでこすり取り、採取した細胞を顕微鏡で調べて異常な細胞がないかを確認します。
痛みはほとんどなく、数分で終わる簡単な検査です。

細胞診の結果は、国際的な分類(ベセスダシステムなど)に基づいて報告されます。主な結果は以下の通りです。

診断名 略称 意味
異常なし NILM 正常な細胞
意義不明な異型扁平上皮細胞 ASC-US 軽度の異常が疑われるが断定できない細胞
異型扁平上皮細胞(高度異形成を否定できない) ASC-H 高度異形成や上皮内がんが疑われる細胞
軽度扁平上皮内病変 LSIL 軽度異形成(CIN1)やHPV感染による変化
高度扁平上皮内病変 HSIL 中等度~高度異形成(CIN2, CIN3)、上皮内がんが強く疑われる
腺癌 Adenocarcinoma 腺組織に発生したがん細胞

細胞診で異常(ASC-US以上など)が見つかった場合に、精密検査が必要となります。

コルポスコピー検査

コルポスコピー検査は、細胞診で異常が見つかった場合に行われる精密検査の一つです。
コルポスコープという拡大鏡を使って、子宮頸部を拡大して詳細に観察します。
同時に、酢酸やヨードといった特殊な染色液を塗ることで、異常な細胞がある部分が白く見えたり、染まらなかったりするなど、肉眼では分かりにくい変化を分かりやすくすることができます。

この検査によって、細胞の異常が子宮頸部のどこに、どのくらいの範囲で、どの程度の強さで存在するかを把握することができます。医師はコルポスコピーの観察結果をもとに、次に説明する組織診(生検)を行う場所を決定します。

組織診(生検)

組織診(生検)は、子宮頸部異形成や子宮頸がんの確定診断を行うための最も重要な検査です。
コルポスコピーで観察し、異常が疑われる部分の組織を小さく切り取って採取します。
採取された組織は病理医が顕微鏡で詳しく調べ、細胞の形や並び方、異常の程度を確認し、CIN分類(CIN1, CIN2, CIN3)やがんかどうかを最終的に診断します。

組織を採取する際に、少しチクっとした痛みや出血があることがありますが、通常は麻酔なしで行われます。
検査後、数日から1週間程度で結果が出ます。
この組織診の結果に基づいて、今後の治療方針が決定されます。

HPV検査

HPV検査は、子宮頸部にハイリスク型HPVウイルスが存在するかどうかを調べる検査です。子宮頸がんの原因となるHPVに感染しているかどうかを知ることで、将来の異形成やがんのリスクを予測することができます。

HPV検査は、細胞診と同時に、または細胞診の結果がASC-USなどの場合に補助的に行われることがあります。
特に、細胞診で軽度の異常が見つかった場合にHPV検査を併用することで、がん化リスクの高い人をより正確に判別し、経過観察の頻度や精密検査の必要性を判断するのに役立ちます。

【検査方法の比較】

検査方法 目的 費用(目安) 痛み
細胞診(検診) 異常な細胞のスクリーニング 数千円~1万円 ほとんどなし
コルポスコピー検査 子宮頸部の詳細観察、生検部位決定 数千円~1万円 ほとんどなし
組織診(生検) 異形成・がんの確定診断 数千円~1万円 少し(生検時)
HPV検査 ハイリスクHPVの有無確認 数千円~1万円 細胞診と同じ

※費用は医療機関や保険適用状況によって異なります。

子宮頸部異形成の治療法(ステージ別・手術について)

子宮頸部異形成の治療方針は、診断された異形成の進行度(CIN分類)に基づいて決定されます。
すべての異形成に治療が必要なわけではありません。

軽度異形成(CIN1)の治療方針:経過観察が基本

軽度異形成(CIN1)と診断された場合の基本的な方針は、積極的な治療は行わず、定期的な経過観察となります。
これは、前述の通りCIN1の多くが自然に正常に戻る可能性が高く、すぐにがん化するリスクが非常に低いからです。

経過観察では、通常3~6ヶ月ごとなどに細胞診やHPV検査を行います。
数回の経過観察で異常がなくなれば、通常の検診に戻ります。
もし、経過観察中に異形成が悪化したり、長期間異常な状態が続いたりする場合には、次のステップの検査や治療が検討されます。

CIN1の段階で不要な治療を行うと、子宮頸部が短くなったり硬くなったりして、将来の妊娠・出産に影響を与える可能性もゼロではありません。そのため、過剰な治療は避け、慎重に経過を見守ることが一般的です。

中等度異形成(CIN2)の治療方針:経過観察または治療

中等度異形成(CIN2)と診断された場合は、経過観察とするか、治療を行うかを、患者さんの年齢、妊娠の希望、異形成の範囲や形態、HPVのタイプなどを総合的に考慮して判断します。

CIN2も一部は自然に治癒することがありますが、軽度異形成に比べるとその可能性は低くなります。また、高度異形成や早期がんに進行するリスクもゼロではないため、特に将来の妊娠を強く希望しない場合や、異形成の範囲が広い場合などは、治療が推奨されることがあります。

治療を選択する場合は、後述する円錐切除術やレーザー蒸散術などが検討されます。治療法を選択する際には、メリット・デメリットや将来の妊娠への影響などを医師とよく相談することが大切です。

高度異形成(CIN3)の治療方針:原則として治療(手術)

高度異形成(CIN3)と診断された場合は、原則として治療が推奨されます。
これは、CIN3が子宮頸がんへの進行リスクが高く、特に早期の浸潤がんとの区別が難しい場合があるためです。

CIN3の主な治療法は、異常な細胞がある子宮頸部の一部を切り取る子宮頸部円錐切除術です。
その他にも、病変が小さい場合などにレーザーや凍結療法が用いられることもありますが、根治性や病理診断の確実性の観点から、円錐切除術が最も広く行われています。

治療によって異常な細胞を取り除くことで、子宮頸がんになるリスクを大幅に減らすことができます。

子宮頸部円錐切除術とは?(手術方法)

子宮頸部円錐切除術は、子宮頸部の一部を円錐形に切り取る手術です。
主に高度異形成(CIN3)やごく早期の子宮頸がん(上皮内がんなど)の治療として行われます。

この手術の目的は、異常な細胞がある部分を完全に切除すること、そして切除した組織を詳しく病理検査することで、診断が正しかったか(本当にCIN3だったか、あるいは早期のがんではなかったか)、病変が取り切れているかを確認することです。

手術は、通常、全身麻酔または下半身麻酔で行われます。電気メスやレーザーメス、または超音波メスなどを用いて行われ、手術時間自体は比較的短時間で済みます。
多くの場合、数日間の入院が必要となります。

【円錐切除術のメリット・デメリット】

メリット デメリット
異常な細胞を確実に取り除ける 出血、感染のリスクがある
切除組織の病理検査で診断・治療効果を確認できる 術後に出血やおりものが続くことがある
子宮を温存できるため、妊娠の可能性を残せる 子宮頸部が短くなり、早産のリスクが高まる可能性
子宮頸管が狭くなり、不妊の原因になる可能性(まれ)

円錐切除術後の病理結果について

円錐切除術で切り取られた子宮頸部の組織は、病理医によって顕微鏡で詳しく調べられます。この病理検査の結果は非常に重要で、以下の点を確認します。

  1. 最終的な診断: 手術前の組織診と同じく、病変が本当にCIN3だったのか、それとも早期のがん(上皮内がんや微小浸潤がん)だったのかを確定します。
  2. 断端(だんたん)の状態: 切り取った組織の「きわ」の部分に異常な細胞が残っていないかを確認します。断端が陰性(異常なし)であれば、病変は取り切れたと考えられます。断端が陽性(異常あり)の場合は、追加の治療が必要となることがあります。
  3. 浸潤の有無と深さ: もしがん細胞が見つかった場合、それが上皮内にとどまっているのか(上皮内がん)、あるいはどのくらいの深さまで下の組織に広がっているのか(浸潤がん)を確認します。

この病理結果に基づいて、今後のフォローアップの方針(定期検診の頻度など)が決定されます。

高度異形成で手術をしない選択肢はあるか

高度異形成(CIN3)と診断された場合、原則として治療(手術)が推奨されますが、医学的に「手術をしない選択肢が全くない」わけではありません。

特に、若い方で将来の妊娠を強く希望される場合や、異形成の範囲が非常に小さい、形態的にがん化リスクが低いと判断される場合には、慎重な経過観察を選択することもあります。ただし、これはあくまで限定的なケースであり、がん化のリスクを許容し、厳密な定期検診を必ず受診することが前提となります。

手術をしない場合は、3~6ヶ月ごとなどにコルポスコピーや組織診を繰り返して病変の変化を厳重に監視する必要があります。
少しでも進行が疑われたり、長期間改善が見られなかったりする場合は、やはり手術を含めた治療が検討されます。

手術をしない選択は、医師と患者さんでリスクとメリットを十分に話し合った上で、慎重に決定されるべきです。一般的には、がん化リスクを下げるために手術が推奨されます。

子宮頸部異形成から子宮頸がんへ進行する期間

子宮頸部異形成から子宮頸がんに進行するスピードには個人差が大きく、一概に「○年でがんになる」と断定することはできません。しかし、一般的な目安として以下のように考えられています。

  • 軽度異形成(CIN1): 多くの場合は自然治癒しますが、一部が悪化した場合でも、中等度→高度異形成を経てがんになるまでには、通常数年から10年以上かかるとされています。
  • 中等度異形成(CIN2): 高度異形成やがんへの進行リスクはCIN1より高まりますが、それでも多くは数年かかると考えられています。
  • 高度異形成(CIN3): 高度異形成から浸潤がんへ進行するまでには、一般的に数ヶ月から数年(平均数年程度)かかるとされています。

このように、異形成の段階から浸潤がんになるまでには、多くの場合比較的長い期間があります。
子宮頸がん検診は、この「異形成」という前がん病変の段階や、ごく早期の上皮内がんの段階で異常を発見することを目的としています。
早期に発見して適切な対応をすれば、子宮頸がんになるのを防ぐことができる、あるいはごく早期で治療できる可能性が高いのです。

だからこそ、症状がなくても定期的に検診を受けることが、子宮頸がん予防のために非常に重要になります。

治療後の経過観察と注意点

子宮頸部異形成の治療(円錐切除術など)を受けた後も、それで終わりではありません。
治療によって異常な細胞を取り除いたとしても、再発の可能性や、新たな異形成が発生するリスクはゼロではないため、定期的な経過観察が必要になります。

治療後の定期検診の重要性

子宮頸部異形成の治療後、医師の指示に従って定期的な検診を必ず受診することが重要です。
検診の内容や頻度は、治療の種類や病理結果、患者さんの状態によって異なりますが、一般的には以下の検査が組み合わせて行われます。

  • 細胞診: 治療した部位に再び異常な細胞が現れていないかを確認します。
  • HPV検査: ハイリスク型HPVが再感染または持続感染していないかを確認します。HPVが持続していると、再び異形成ができるリスクが高まります。
  • コルポスコピー検査: 必要に応じて、子宮頸部を拡大して詳細に観察します。

これらの検診を定期的に受けることで、もし再び異常が発生した場合でも、早期に発見し、必要に応じて迅速に対応することができます。
治療で一度異常がなくなったからといって油断せず、指示された通りのスケジュールで検診を受け続けましょう。

再発の可能性について

子宮頸部異形成や子宮頸がんの治療後、一定の割合で再発する可能性があります。
再発の主な原因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 治療で異常な細胞を取り切れなかった場合: 特に円錐切除術の断端に異常な細胞が残っていた場合など。
  • 新たなHPV感染: HPVは広く存在するウイルスなので、再び感染する可能性があります。
  • 体内に残っていたHPVによる新たな病変: 治療によって異常な細胞がなくなったとしても、原因ウイルスであるHPVがまだ体内に残っており、時間が経ってから再び細胞に変化を引き起こすことがあります。
  • 他のタイプのHPVに感染した場合: 子宮頸がんを引き起こすハイリスク型HPVにはいくつかの種類があり、一度治療しても別のタイプのHPVに感染する可能性があります。

再発のリスクは、治療前の病変の程度、治療方法、HPVの状態などによって異なりますが、一般的に数パーセントから10数パーセント程度と言われています。
再発は治療後数年以内に起こることが多いため、特に治療後数年間はより頻繁な検診が必要になることがあります。

定期的な検診によって再発を早期に発見できれば、再度の治療も比較的簡単なもので済む可能性が高まります。自己判断で検診をやめたり、受診間隔を延ばしたりしないようにしましょう。

子宮頸部異形成の予防について

子宮頸部異形成や子宮頸がんのほとんどはHPV感染が原因であるため、HPV感染を防ぐことが最も効果的な予防法となります。

HPVワクチンの接種

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVの感染を防ぐためのワクチンです。
現在日本で主に使われているワクチンは、特に子宮頸がんの原因の多くの割合を占めるHPV16型と18型、尖圭コンジローマの原因となる6型と11型の4種類(4価ワクチン)または9種類(9価ワクチン)の感染を防ぐ効果があります。

HPVワクチンの接種は、子宮頸部異形成や子宮頸がんを予防するために非常に有効であることが、多くの研究で証明されています。
性交渉を経験する前に接種することが最も効果的ですが、性交渉経験がある方でも一定の効果が期待できます。

日本では、小学6年生から高校1年生相当の女子を対象に、HPVワクチンの定期接種が行われています。対象年齢の方は、自治体からのお知らせなどを確認し、接種を検討しましょう。
また、対象年齢を過ぎた方でも、任意接種として接種を受けることができます。

HPVワクチン接種については、メリットだけでなくごくまれな副反応のリスクなども知った上で、医師とよく相談して判断することが大切です。

定期的な子宮頸がん検診

前述の通り、子宮頸部異形成や初期の子宮頸がんは自覚症状がほとんどありません。
そのため、症状がないうちから定期的に子宮頸がん検診(細胞診)を受けることが、異形成やがんを早期に発見し、重症化を防ぐための最も重要な対策となります。

日本の厚生労働省では、20歳以上の女性に対し、2年に1回の子宮頸がん検診を推奨しています。
自治体によっては検診費用の助成がある場合も多いので、お住まいの地域の情報をご確認ください。

HPVワクチンを接種した方も、子宮頸がん検診は引き続き必要です。なぜなら、ワクチンは全ての子宮頸がんの原因となるHPVのタイプをカバーできるわけではないからです。

定期的な検診は、自分自身の体を守るための大切な習慣です。「忙しいから」「恥ずかしいから」と先延ばしにせず、ぜひ定期的に受診しましょう。

パートナー(彼氏)への伝え方

子宮頸部異形成と診断されたことを、パートナー(彼氏)にどのように伝えるべきか悩む方もいらっしゃるかもしれません。
HPV感染が原因と聞くと、お互いに不安や誤解が生じる可能性もあります。

伝える際には、以下の点を念頭に置くと良いでしょう。

  1. HPVは非常にありふれたウイルスであること: HPVは性交渉経験のある人なら誰でも感染しうるウイルスであり、特定の相手が原因とは限らないこと、感染していても症状がないことがほとんどであることを説明しましょう。
  2. パートナーの「せい」ではないこと: HPVは数年~10年以上前に感染していたウイルスが原因となっている可能性もあり、いつ、誰から感染したかを特定することは非常に困難です。相手を責めるような伝え方にならないように注意しましょう。
  3. 男性もHPVに感染すること: HPVは女性だけでなく男性も感染します。男性の場合、尖圭コンジローマなどの病気を引き起こすことがありますが、多くは無症状です。
  4. パートナーが受けるべき検査や治療は基本的にはないこと: 現在のところ、男性がHPVに感染しているかどうかのルーチン検査や、パートナーに感染した場合の治療法は確立されていません。したがって、パートナーが特別な検査や治療を受ける必要は基本的にありません。
  5. 今後の性交渉について: 通常、異形成の診断や治療によって、性交渉に特別な制限が生じることはありません。ただし、円錐切除術の術後などは、出血や感染を防ぐために一定期間の性交渉を控えるよう医師から指示されることがあります。その期間は医師の指示に従いましょう。

パートナーに伝えることは、お互いの健康について話し合う良い機会にもなり得ます。
不安や疑問があれば、一緒に医師に相談することも検討できます。
率直に、そしてお互いを尊重する気持ちを持って話し合うことが大切です。

よくある質問(Q&A)

子宮頸部異形成について、よくある質問とその回答をまとめました。

子宮頸部異形成は完治しますか?

はい、子宮頸部異形成は完治する可能性が十分にあります。

  • 軽度異形成(CIN1)の多くは、自然に免疫力によってHPVが排除され、細胞が正常に戻ることで自然治癒します。
  • 中等度異形成(CIN2)や高度異形成(CIN3)の場合でも、適切な治療(手術など)によって異常な細胞を取り除くことで、病変は消失し、治癒した状態となります。

ただし、治療後も再発のリスクはゼロではないため、医師の指示に従って定期的な経過観察を続けることが重要です。

手術の入院期間や費用は?

子宮頸部円錐切除術の場合、入院期間は一般的に数日(2泊3日~4泊5日程度)が多いです。ただし、病院の方針や患者さんの状態、手術の方法によって異なる場合があります。

費用については、保険適用となる手術ですので、医療費の自己負担割合に応じて異なります。
一般的に、数万円から10万円程度(3割負担の場合)が目安となることが多いですが、入院期間や個室利用の有無、病院の種類(公立・私立など)によって変動します。高額療養費制度の対象となる場合もあります。
正確な費用については、受診する医療機関に事前に確認することをおすすめします。

妊娠・出産への影響はありますか?

子宮頸部異形成の診断や治療が、将来の妊娠・出産に影響を与える可能性はゼロではありません。

  • 軽度異形成(CIN1)や、CIN2/3の経過観察の場合、基本的には妊娠への影響はありません。
  • 子宮頸部円錐切除術を受けた場合、子宮頸部の一部が短くなるため、早産のリスクがわずかに高まる可能性があります。
    また、子宮頸管が狭くなり、不妊の原因になる可能性もごくまれにあります。
    しかし、多くの場合は無事に出産に至ります。
    妊娠中には、子宮頸管の長さを測定するなど、より注意深い管理が行われることがあります。
  • 高度異形成(CIN3)で妊娠を強く希望される場合は、がん化リスクと妊娠への影響を考慮し、治療開始を遅らせて厳重に経過観察を行うなどの選択肢を医師と相談することがあります。

妊娠を希望される方は、異形成の診断を受けた段階で、必ず医師にその旨を伝え、最適な治療方針やフォローアップについて相談することが重要です。

【まとめ】子宮頸部異形成は早期発見と適切な対応が大切

子宮頸部異形成は、子宮頸がんになる可能性のある前がん病変です。HPV感染が原因であり、初期には自覚症状がほとんどありません。異形成の段階は軽度(CIN1)、中等度(CIN2)、高度(CIN3)に分類され、進行度に応じて治療方針が異なります。

  • 軽度異形成(CIN1)は自然治癒が多く、経過観察が基本です。
  • 中等度異形成(CIN2)は経過観察か治療を選択します。
  • 高度異形成(CIN3)は原則として治療(主に円錐切除術)が必要です。

異形成は、子宮頸がん検診によって早期に発見されることがほとんどです。
定期的な検診を受けること、そしてHPVワクチンを接種することは、子宮頸部異形成や子宮頸がんを予防するための非常に重要な手段です。

もし子宮頸部異形成と診断されても、過度に不安になる必要はありません。
適切な検査と対応によって、がんになるのを防いだり、早期に治療したりすることが可能です。
一人で悩まず、医師とよく相談し、ご自身の体の状態に合わせた最善の方法を選択してください。
定期的な検診を受け、自分の体を守りましょう。

【免責事項】
この記事は、子宮頸部異形成に関する一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や状態に関する診断や治療方針については、必ず医療機関で医師にご相談ください。記事の内容は、医療の進歩や研究によって変更される可能性があります。最新の情報については、専門機関や医師にご確認ください。

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