骨盤腹膜炎の症状は?高熱・下腹部痛の原因と治療、死亡リスクまで解説

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骨盤腹膜炎は、女性の骨盤内に存在する子宮や卵巣、卵管などを覆う腹膜に炎症が起きる病気です。下腹部の激しい痛みや高熱などを伴い、重症化すると生命に関わることもあります。また、適切な治療を受けずに放置すると、不妊症や慢性的な痛みの原因となる可能性があり、女性の健康にとって非常に重要な疾患です。

この病気は、早期発見と適切な治療が何よりも大切です。症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診することが後遺症を防ぐために不可欠です。この記事では、骨盤腹膜炎の症状、原因、診断、治療法、そして放置することの危険性について、詳しく解説します。性行為がなくても発症するケースについても触れ、正しい知識を持って早期受診に繋がるようお伝えします。

骨盤腹膜炎とは

骨盤腹膜炎とは、骨盤内にある臓器(子宮、卵巣、卵管など)の周りにある腹膜(骨盤腹膜)に炎症が及んだ状態を指します。腹膜は、腹部の臓器を覆う薄い膜であり、この膜に炎症が起きると、激しい痛みや発熱など様々な症状を引き起こします。

骨盤内炎症性疾患(PID)との関連

骨盤腹膜炎は、「骨盤内炎症性疾患(Pelvic Inflammatory Disease; PID)」と呼ばれる一連の病気の一つ、あるいはその中でも炎症が進行した状態と位置づけられます。米国CDCによると、PIDは子宮内膜炎、卵管炎、卵巣膿瘍、骨盤腹膜炎など、女性の上部生殖器における様々な炎症性疾患の総称です。(出典:米国CDC)

済生会によると、これらの炎症は多くの場合、膣から細菌が子宮内、卵管、そして骨盤腹膜へと上行性に広がることで発生します。子宮に炎症が起きる子宮内膜炎から始まり、卵管炎、卵巣炎へと進行し、最終的に骨盤腹膜にまで炎症が及ぶと骨盤腹膜炎となります。(出典:済生会)

つまり、骨盤腹膜炎はPIDの中でも、比較的炎症の範囲が広く、重症化しやすい病態と言えます。

卵管炎・子宮内膜炎との違い

卵管炎や子宮内膜炎も骨盤内炎症性疾患(PID)の一部ですが、炎症が起きている場所が異なります。

  • 子宮内膜炎: 子宮の内側を覆う粘膜(子宮内膜)の炎症。不正出血や下腹部痛、発熱などの症状が出ることがあります。
  • 卵管炎: 子宮と卵巣をつなぐ卵管の炎症。骨盤内感染症で最も頻繁に起こる炎症の一つです。下腹部痛、発熱、性交痛などの症状が出ることがあります。
  • 骨盤腹膜炎: 子宮、卵管、卵巣などを覆う骨盤内の腹膜の炎症。子宮内膜炎や卵管炎が進行し、炎症が卵管から骨盤内の腹膜に波及することで起こります。卵管炎や子宮内膜炎よりも広範囲に炎症が及んでいるため、一般的に症状がより強く、重症化しやすい傾向があります。

炎症が子宮内膜→卵管→骨盤腹膜と段階的に広がるケースが多いですが、必ずしも全てがこの順番で進行するわけではありません。しかし、骨盤腹膜炎と診断された場合は、すでに炎症が比較的広範囲に及んでいる可能性が高いと考えられます。

骨盤腹膜炎の主な症状

骨盤腹膜炎の症状は、炎症の程度や範囲によって異なりますが、典型的には以下のような症状が現れます。これらの症状は、風邪や他の病気と間違われやすいため、注意が必要です。特に、複数の症状が同時に現れたり、症状が急激に悪化したりする場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

丸岡産婦人科クリニックによると、急性期の骨盤腹膜炎では突然の激しい下腹部痛や38度以上の高熱が特徴です。悪寒や戦慄(ひどい寒気)を伴うこともあり、吐き気や嘔吐、食欲不振、全身倦怠感などの全身症状も見られます。(出典:丸岡産婦人科クリニック)

下腹部痛(痛む場所・特徴)

骨盤腹膜炎で最もよく見られる症状です。

  • 痛む場所: 下腹部全体、特に骨盤の中央や左右どちらか、あるいは両側に痛みを感じます。卵管や卵巣の炎症が強い場合は、その部分に対応する下腹部の片側または両側に強い痛みが出ることがあります。
  • 特徴:
    • 持続的な痛み: 多くの場合は持続的な痛みです。
    • 動くと増悪: 体を動かしたり、歩いたり、性行為をしたりすると痛みが強くなる傾向があります。
    • 圧痛: お腹を押さえると痛みが増します。内診の際に子宮や卵巣を触れると非常に強い痛みを感じることも特徴的です。
    • 痛みの性質: 鈍い痛みから、差し込むような激しい痛みまで様々です。炎症が強いほど痛みが強くなる傾向があります。

痛みの感じ方には個人差があり、軽度な違和感程度で済む場合から、日常生活が困難になるほどの激痛を伴う場合まであります。

発熱

骨盤腹膜炎では、発熱もよく見られる症状です。

  • 多くの場合、38℃以上の高熱が出ます。丸岡産婦人科クリニックの報告でも、急性期の特徴的な症状として38度以上の高熱が挙げられています。(出典:丸岡産婦人科クリニック)
  • 悪寒(寒気)を伴うこともあります。
  • 炎症が強いほど、熱が高くなる傾向があります。
  • 発熱があっても、他の症状が軽いために風邪と間違えてしまうこともあります。

性器からの出血や分泌物

  • 不正出血: 月経期間以外に出血が見られることがあります。出血量は少量であることが多いですが、炎症の場所によっては月経のような多量の出血が見られることもあります。
  • おりものの変化: おりものの量が増えたり、色(黄色、緑色など)、匂い(悪臭)が変化したりすることがあります。これは、原因となる細菌の種類や、炎症が子宮頸部や膣にも及んでいる場合に起こりやすい症状です。

その他の全身症状(吐き気など)

炎症が全身に及ぶにつれて、以下のような全身症状が現れることがあります。丸岡産婦人科クリニックも、急性期には吐き気や嘔吐、食欲不振、全身倦怠感などの全身症状が見られることがあると指摘しています。(出典:丸岡産婦人科クリニック)

  • 吐き気、嘔吐
  • 食欲不振
  • 全身の倦怠感、だるさ
  • 下痢、便秘などの消化器症状
  • 頭痛
  • 関節痛、筋肉痛

これらの症状は、炎症による全身の反応として起こります。特に吐き気や嘔吐が強い場合は、脱水症状に注意が必要です。

症状の重症度による違い

骨盤腹膜炎の症状の現れ方は、軽度なものから重篤なものまで幅広く、必ずしも症状の強さが炎症の範囲や重症度を正確に反映するわけではありません。

症状の重症度 特徴
軽度 下腹部痛やおりものの変化など、比較的軽微な症状のみ。発熱がないことも。他の病気と区別がつきにくく、見過ごされやすい。
中等度 持続的な下腹部痛や38℃程度の発熱、おりものの変化など、典型的な症状が現れる。日常生活に支障が出ることがあるが、歩行や活動はある程度可能。
重度 激しい下腹部痛(動けないほど)、38.5℃以上の高熱、悪寒、強い吐き気・嘔吐、全身の倦怠感など。入院治療が必要となることが多い。
超重度 敗血症や腹膜全体の炎症(汎発性腹膜炎)に進行した状態。意識障害、血圧低下、呼吸困難など、生命に関わる重篤な症状が現れる。救急対応が必要。

症状が軽い場合でも、炎症が体内で進行している可能性があります。特に、クラミジア感染が原因の場合は、症状が非常に軽微、あるいは無症状のことも多く、気づかないうちに炎症が進行し、不妊症などの後遺症を残すことがあります。そのため、「これくらい大丈夫だろう」と自己判断せず、少しでも異常を感じたら医療機関を受診することが非常に重要です。

骨盤腹膜炎の原因

骨盤腹膜炎の主な原因は、細菌感染です。膣や子宮頸部に存在する細菌が、何らかの原因で子宮、卵管、そして骨盤腹膜へと上行性に広がっていくことで発生します。

細菌感染(性感染症含む)

骨盤腹膜炎の原因となる細菌として最も多いのは、クラミジア・トラコマチス淋菌です。これらの細菌は性感染症(STI)の原因菌として知られており、性交渉によって感染します。

米国CDCの報告でも、骨盤内炎症性疾患の一般的な病原菌としてクラミジア・トラコマチスと淋菌が挙げられています。(出典:米国CDC)

  • クラミジア: 女性の場合、感染しても自覚症状がほとんどないことが多いため、感染に気づかないままパートナーにうつしたり、体内で炎症が進行したりすることが問題となります。静かに子宮頸部から上行し、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎を引き起こします。
  • 淋菌: クラミジアと同様に性感染症の原因菌です。クラミジアよりも症状が出やすい傾向がありますが、無症状の場合もあります。進行が早く、炎症が急速に広がる可能性があります。

性感染症の原因菌以外にも、膣や腸内に存在する常在菌が原因となることもあります。

  • 大腸菌などの腸内細菌: 腸に存在する細菌が、婦人科処置や手術後などに骨盤内に侵入して炎症を起こすことがあります。
  • 連鎖球菌、ブドウ球菌などの常在菌: これらの細菌が膣から上行して炎症を引き起こすこともあります。
  • マイコプラズマ・ジェニタリウム: 最近注目されている性感染症の原因菌で、骨盤内炎症性疾患の原因となることがわかっています。

多くの場合、複数の細菌が混合して感染していると考えられています。

丸岡産婦人科クリニックによると、骨盤腹膜炎の危険因子には性感染症(クラミジアや淋病)、子宮内医療処置、骨盤内手術などが含まれます。(出典:丸岡産婦人科クリニック)

性行為なしでの発症ケース

骨盤腹膜炎は性感染症が原因となることが多いですが、性行為の経験がない女性でも発症することがあります。以下のようなケースが考えられます。

  • 婦人科処置後: 人工妊娠中絶、子宮内避妊具(IUD)の挿入・抜去、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査、分娩や流産後など、子宮の中に器具を挿入するような医療処置の後に、膣や子宮頸部にいた細菌が子宮内に持ち込まれて感染し、上行性に広がるリスクがあります。丸岡産婦人科クリニックも、子宮内医療処置を危険因子として挙げています。(出典:丸岡産婦人科クリニック)特に IUD 装着後は、装着後数週間に骨盤内炎症性疾患の発症リスクがわずかに高まることが知られています。
  • 腹腔内の他の臓器の炎症からの波及: 虫垂炎(盲腸炎)や憩室炎など、骨盤内やその周辺の臓器の炎症が、腹膜を介して波及して骨盤腹膜炎を引き起こすことがあります。
  • 血行性感染: 体のどこか別の場所で起きた感染症の原因菌が、血液の流れに乗って骨盤腹膜に運ばれ、炎症を起こすことは非常に稀ですが可能性はあります。

したがって、「性行為がないから大丈夫」と自己判断せず、下腹部痛や発熱などの症状が現れた場合は、原因を特定するために医療機関を受診することが重要です。

感染経路(上行性感染)

骨盤腹膜炎は、ほとんどの場合、「上行性感染」によって起こります。これは、細菌が膣から始まり、以下の経路をたどって骨盤腹膜に到達する感染様式です。

済生会によると、子宮内膜炎は腟から細菌が入り、子宮内、卵管を通じておなかの中まで広がっていく上行性感染によって子宮に炎症が発生します。炎症が卵管まで広がると卵管炎、卵巣まで広がると卵巣炎となり、さらに炎症が骨盤内臓器を覆う腹膜まで広がると骨盤腹膜炎となります。(出典:済生会)この説明にあるように、細菌は子宮頸部を通過し、子宮、卵管へと上行していきます。

  1. 膣・子宮頸部: 細菌はまず性交渉やその他の機会に膣や子宮頸部に付着します。子宮頸管粘液は通常、細菌の侵入を防ぐバリアの役割をしていますが、性感染症や生理中、婦人科処置後などはバリア機能が低下しやすい状態になります。
  2. 子宮: バリアを突破した細菌が子宮の内側(子宮内膜)に達し、子宮内膜炎を起こします。
  3. 卵管: さらに細菌が子宮から卵管へと上行し、卵管炎を起こします。卵管は非常に細く複雑な構造をしており、一度炎症が起きると治りにくく、炎症が広がりやすい場所です。
  4. 卵巣・骨盤腹膜: 卵管の先端は腹腔内に開いているため、卵管の炎症がさらに骨盤内の腹腔、特に卵巣や子宮を覆う骨盤腹膜に波及し、骨盤腹膜炎を引き起こします。炎症がさらに広範囲に及ぶと、腹膜全体に炎症が広がる汎発性腹膜炎となることもあります。

月経中は子宮内膜が剥がれ落ち、子宮頸管が開いているため、細菌が上行しやすい状態となり、感染リスクが高まることが知られています。

骨盤腹膜炎の診断方法

骨盤腹膜炎の診断は、単一の検査だけでなく、複数の情報や検査結果を総合的に判断して行われます。症状、既往歴、診察、様々な検査を組み合わせて、炎症の有無、範囲、原因菌などを特定します。

問診と内診

診断の第一歩は、詳細な問診と丁寧な内診です。

  • 問診:
    • 現在の症状(下腹部痛の場所、強さ、いつから始まったか、動くとどうなるかなど)、発熱の有無、おりものの状態、不正出血の有無などを詳しく聞きます。
    • 月経周期、最終月経、妊娠の可能性について確認します。
    • 性交渉の状況(新しいパートナー、複数のパートナーの有無など)、性感染症の既往や治療歴について確認します。
    • 過去の骨盤内炎症性疾患の既往、人工妊娠中絶や分娩、流産、IUD装着などの婦人科処置の既往について確認します。丸岡産婦人科クリニックも、危険因子として性感染症や子宮内医療処置、骨盤内手術などを挙げています。(出典:丸岡産婦人科クリニック)
    • アレルギーや現在服用中の薬について確認します。
  • 内診:
    • 膣や子宮頸部の状態を観察し、おりものの異常や炎症の兆候がないか確認します。
    • 双合診(片方の指を膣に入れ、もう片方の手をお腹に当てて内側の臓器を触診する)を行い、子宮や卵巣の大きさ、形、位置、圧痛(押さえると痛いか)、動きの制限(炎症により周囲と癒着していると動きが悪くなる)などを確認します。骨盤腹膜炎が疑われる場合、子宮頸部を動かした際に強い痛み(子宮頸部移動痛)を感じることが特徴的な所見の一つです。

血液検査

血液検査で、体内の炎症の程度や全身の状態を確認します。

  • 白血球数: 炎症があると増加します。
  • CRP(C反応性タンパク): 体内の炎症反応を示すマーカーです。炎症の程度が強いほど高値になります。
  • 赤沈(赤血球沈降速度): 炎症があると亢進します。
  • 肝機能・腎機能検査: 重症化した場合や、抗生剤治療を行う際に、全身の状態を確認するために行われます。
  • 妊娠反応: 異所性妊娠(子宮外妊娠)でも下腹部痛などの症状が出ることがあるため、鑑別のために妊娠の有無を確認します。

超音波(エコー)検査

超音波検査は、骨盤内の臓器の状態を非侵襲的に確認できる有用な検査です。

  • 経腟超音波: 膣から超音波のプローブを挿入して行う検査で、子宮、卵管、卵巣を詳細に観察できます。骨盤内炎症性疾患の診断において最も重要な画像検査の一つです。
    • 子宮内膜の厚みや状態(子宮内膜炎の兆候がないか)
    • 卵管の腫れ(卵管炎)、中に膿や液体が溜まっていないか(卵管留膿症、卵管留水症)
    • 卵巣の腫れ(卵巣炎)、膿瘍(卵巣膿瘍)ができていないか
    • 骨盤内に腹水が溜まっていないか
    • 骨盤内に膿瘍(ダグラス窩膿瘍など)ができていないか
  • 経腹超音波: お腹の上から行う検査です。経腟超音波ができない場合や、腹腔全体の評価が必要な場合に行われることがあります。

細菌検査(おりもの検査など)

炎症の原因となっている細菌を特定するために行われる検査です。

  • 子宮頸部や膣分泌物の培養検査・PCR検査: 子宮頸部や膣から採取したおりものや分泌物を検体とし、クラミジア、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウム、その他一般細菌などの有無を調べます。原因菌を特定することで、最も効果的な抗生剤を選択することができます。米国CDCの報告でも、骨盤内炎症性疾患の治療は、クラミジアや淋菌などの一般的な病原菌に対応できるよう調整された抗生剤療法が中心であるとされています。(出典:米国CDC)
  • 血液培養検査: 重症で全身への細菌感染(敗血症)が疑われる場合に行われ、血液中に細菌が存在するかどうかを調べます。
  • 膿瘍液の培養検査: 膿瘍が形成されている場合、ドレナージなどで採取した膿を培養し、原因菌を特定します。

CTやMRI検査

超音波検査で診断が難しい場合や、炎症の範囲、膿瘍の大きさや位置、他の臓器への影響などをより詳しく評価する必要がある場合に行われます。

  • CT検査: 短時間で広範囲を撮影でき、炎症の広がりや膿瘍の有無、腸管などの他の臓器との関係を評価するのに有用です。造影剤を使用することで、炎症を起こしている部位がより明確になります。
  • MRI検査: CTよりも骨盤内の軟部組織(子宮、卵巣、卵管など)を詳細に描出するのに優れており、複雑な膿瘍や癒着の評価に有用です。

診断方法の比較

検査方法 目的 特徴
問診・内診 症状の把握、身体所見の確認、圧痛部位の特定 診断の基本。患者情報と医師の診察による初期評価。(出典:丸岡産婦人科クリニックでも危険因子として性感染症などを挙げており、問診の重要性が示唆されます)
血液検査 全身の炎症反応の評価、全身状態の把握 炎症の程度を数値化。他の病気との鑑別にも役立つ。
超音波(エコー)検査 骨盤内臓器の状態(腫れ、膿瘍、腹水など)の評価 非侵襲的で簡便。特に経腟超音波は骨盤内臓器の詳細な観察に優れる。診断の初期段階で重要。
細菌検査 原因菌の特定 原因菌に応じた適切な抗生剤選択に不可欠。治療効果の判定にも用いられる。(出典:米国CDCでも原因菌に応じた抗生剤治療が推奨されています)
CT・MRI検査 炎症範囲、膿瘍の詳細評価、他の臓器との関係の評価 より詳細な画像情報を提供。診断が困難な場合や重症例、手術を検討する場合に有用。被ばくや検査時間、費用などを考慮して行われる。

これらの検査結果を総合的に判断し、最終的に骨盤腹膜炎の診断が確定されます。

骨盤腹膜炎の治療法

骨盤腹膜炎の治療は、炎症を抑え、原因菌を排除し、後遺症を防ぐことを目的とします。治療の中心は抗生剤による薬物療法ですが、炎症の程度や合併症の有無によって、入院治療や手術が必要になることもあります。早期に診断し、適切な治療を開始することが非常に重要です。

抗生剤による薬物療法

骨盤腹膜炎の治療で最も重要かつ基本的なのが、抗生剤による薬物療法です。原因菌(クラミジア、淋菌、一般細菌など)に対して効果のある抗生剤が使用されます。多くの場合、複数の種類の抗生剤を組み合わせて使用します。

米国CDCの報告でも、骨盤内炎症性疾患の治療は抗生剤療法が中心であり、クラミジアや淋菌などの一般的な病原菌に対応できる薬剤が推奨されています。(出典:米国CDC)

  • 投与経路:
    • 点滴静注: 重症の場合や入院治療が必要な場合は、効果が早く確実に得られる点滴静注で抗生剤を投与します。
    • 内服: 症状が比較的軽い場合や、点滴治療で症状が改善した後には、内服薬に切り替えます。
  • 使用される主な抗生剤:
    • セファロスポリン系(例:セフトリアキソン)
    • テトラサイクリン系(例:ドキシサイクリン)
    • マクロライド系(例:アジスロマイシン)
    • ニューキノロン系(例:レボフロキサシン)
    • クリンダマイシン
    • メトロニダゾール(嫌気性菌に効果)

原因菌の種類が特定できれば、その菌に最も有効な抗生剤を選択しますが、結果が出るまでに時間がかかるため、診断時には複数の原因菌を想定して広範囲の細菌に効果のある抗生剤が選択されることが一般的です。

抗生剤は、医師から指示された期間(通常10~14日間程度)、症状が改善しても必ず最後まで飲み切ることが非常に重要です。途中で止めると、細菌が完全に死滅せず、再発したり、抗生剤が効きにくい耐性菌が発生したりするリスクがあります。

入院治療の必要性

骨盤腹膜炎と診断された場合、必ずしも全てのケースで入院が必要なわけではありませんが、以下のような場合は入院して集中的な治療を行うことが推奨されます。

  • 高熱(38.5℃以上)や強い腹痛があり、経口抗生剤の内服が困難な場合
  • 強い吐き気や嘔吐があり、脱水症状を伴う場合
  • 経口抗生剤による治療で改善が見られない場合
  • 骨盤内に膿瘍(膿の溜まり)が形成されている場合
  • 妊娠中の場合(母体や胎児への影響を考慮)
  • 重症で、全身への感染拡大(敗血症)の危険性がある場合
  • 診断がはっきりせず、他の重篤な病気(虫垂炎、異所性妊娠など)との鑑別が必要な場合

入院中は、点滴による抗生剤治療だけでなく、安静、鎮痛剤による疼痛管理、補液(水分や電解質の補給)など、全身状態を改善させるための治療も並行して行われます。

膿瘍形成時の処置(ドレナージなど)

骨盤腹膜炎が進行すると、炎症を起こした場所に膿が溜まった「膿瘍」が形成されることがあります。骨盤内、特に直腸と子宮の間のスペース(ダグラス窩)にできることが多いですが、卵管や卵巣の中に形成されることもあります。膿瘍ができた場合、抗生剤だけでは治療が難しいことが多く、膿を体外に排出する処置が必要になります。

  • ドレナージ: 超音波やCTガイド下で、皮膚の上から細い針やカテーテルを挿入し、膿瘍に到達させて膿を吸引・排出する方法です。カテーテルを留置して、持続的に膿を排出することもあります。体に負担の少ない低侵襲な治療法です。
  • 経腟的切開・ドレナージ: ダグラス窩に膿瘍がある場合、膣の壁を通して切開し、膿を排出する方法です。

ドレナージによって膿瘍を小さくしたり、完全に除去したりすることで、抗生剤の効果が高まり、炎症を鎮めることができます。

手術が必要になる場合

骨盤腹膜炎で手術が必要になるケースは多くはありませんが、以下のような状況では外科的な治療が必要になります。

  • 膿瘍が非常に大きい、またはドレナージが困難な場所にある場合
  • 膿瘍が破裂して腹腔内に膿が広がった場合(汎発性腹膜炎に進行)
  • 抗生剤治療やドレナージを行っても炎症や膿瘍が改善しない場合
  • 卵管や卵巣の壊死、周囲臓器(腸管など)との強い癒着や損傷がある場合
  • 診断が確定できない場合や、他の緊急手術が必要な病気(虫垂炎破裂、卵巣茎捻転など)との鑑別が難しい場合

手術の方法としては、お腹を小さく切開してカメラや器具を入れて行う腹腔鏡手術や、お腹を大きく切開して行う開腹手術があります。手術では、膿瘍の除去、膿の洗浄、炎症を起こした組織( severely damaged 卵管や卵巣など)の切除などが行われることがあります。

治療期間と注意点(どのくらいの期間で治る?)

骨盤腹膜炎の治療期間は、炎症の程度や治療への反応によって異なりますが、抗生剤による薬物療法は通常10日間から14日間程度行われます。症状が改善しても、医師の指示通り治療期間を完了することが非常に重要です。米国CDCの治療ガイドラインも、推奨される抗生剤の投与期間を定めています。(出典:米国CDC)

症状自体は、抗生剤治療を開始して数日から1週間程度で和らぐことが多いですが、体内の炎症が完全に治まるまでにはもう少し時間がかかります。特に重症の場合は、入院期間を含めて数週間かかることもあります。

治療期間中の注意点としては、以下の点が挙げられます。

  • 安静: 特に症状が強い間は、無理をせず安静にすることが回復を助けます。
  • 指示通りの服薬: 抗生剤は決められた時間、決められた量を、期間が終わるまで必ず服用・投与を続けること。
  • 性交渉の制限: 治療期間中や、医師から許可が出るまでは性交渉を控えることが推奨されます。性交渉によって炎症が悪化したり、パートナーに感染させてしまったりする可能性があるためです。
  • パートナーの治療: 性感染症が原因の場合、パートナーも同時に検査・治療を受ける必要があります。治療しないと、治っても再びパートナーから感染してしまう「ピンポン感染」を繰り返し、再発のリスクが高まります。
  • 定期的な受診: 治療効果を確認し、炎症が治まっているか、後遺症の兆候がないかなどをチェックするために、医師の指示通りに再診を受けることが重要です。

骨盤腹膜炎は、適切な治療を早期に開始すれば多くの場合治癒しますが、治療が遅れると後遺症のリスクが高まります。

骨盤腹膜炎を放置した場合のリスク・予後

骨盤腹膜炎は、早期に適切な治療を受ければ多くの場合治癒しますが、診断や治療が遅れたり、不十分な治療で終わったりすると、以下のような重篤な合併症や後遺症を残すリスクが高まります。

死亡率について

現代の医療では、骨盤腹膜炎が直接的な原因で死亡に至るケースは非常に稀になりました。しかし、治療が著しく遅れたり、重症化して敗血症(細菌が全身に広がり、多臓器不全を起こす危険な状態)や広範囲な腹膜炎(汎発性腹膜炎)に進行した場合は、生命に関わる重篤な状態となる可能性があります。したがって、「放置しても大丈夫」という病気では決してありません。

敗血症への進行

骨盤内の炎症が強い場合、原因菌が血管内に入り込み、血液に乗って全身に運ばれてしまうことがあります。これが敗血症です。敗血症になると、全身の臓器に障害が起こり、意識障害、血圧低下、呼吸困難、腎不全など、生命を脅かす状態に陥ることがあります。敗血症は緊急性の高い病態であり、集中治療室での管理が必要となる場合もあります。

不妊症のリスク

骨盤腹膜炎を放置した場合の最も深刻な後遺症の一つが不妊症です。

  • 卵管の損傷: 炎症が卵管に及ぶと、卵管の内側が傷ついたり、卵管の壁が厚くなったり、卵管全体が閉塞してしまったりします。卵管は卵巣から排卵された卵子を取り込み、精子と出会って受精し、受精卵が子宮まで運ばれる通路です。卵管が損傷したり閉塞したりすると、これらの機能が障害され、妊娠しにくくなります。
  • 卵管周囲の癒着: 炎症によって骨盤内の組織が周囲とくっついてしまう「癒着」が起こることがあります。特に卵管や卵巣が周囲の臓器(子宮、腸、腹壁など)と癒着すると、卵管の動きが悪くなり、卵子をうまく取り込めなくなったり、卵巣からの排卵が妨げられたりして、不妊の原因となります。

骨盤腹膜炎を一度罹患すると、約10〜15%の女性が不妊症になると言われています。繰り返して罹患すると、不妊症になるリスクはさらに高まり、2回で約30%、3回で約50%に達するという報告もあります。特にクラミジア感染による骨盤内炎症性疾患は、自覚症状が軽いにも関わらず卵管の損傷を引き起こしやすいことが知られており、「サイレントPID」と呼ばれ注意が必要です。

慢性的な骨盤痛

骨盤腹膜炎の治療後も、約20%の女性が慢性的な下腹部痛(骨盤痛)に悩まされるようになると言われています。これは、炎症の後遺症として残った神経の過敏性や、骨盤内の癒着などが原因と考えられています。慢性的な骨盤痛は、日常生活や仕事、精神的な健康にも大きな影響を与える可能性があります。

卵管の癒着や閉塞

前述の不妊症の原因の大部分を占めるのが、卵管の癒着や閉塞です。炎症によって卵管の繊毛(卵子や受精卵を運ぶ役割をする)が破壊されたり、卵管の内腔が狭窄・閉塞したりします。また、卵管の外側が周囲の組織と癒着することで、卵管が本来持つ動きが失われます。これにより、自然妊娠が非常に難しくなります。体外受精などの高度生殖医療が必要となるケースも多く見られます。

膿瘍形成(ダグラス膿瘍など)

治療が遅れると、骨盤内に膿の塊(膿瘍)が形成されることがあります。特に直腸と子宮の間のスペースであるダグラス窩にできる「ダグラス膿瘍」が代表的です。膿瘍は抗生剤だけでは治りにくく、切開やドレナージといった外科的な処置が必要になります。膿瘍が破裂すると腹腔全体に感染が広がり、重篤な状態(汎発性腹膜炎)になる危険性があります。

再発のリスク

骨盤腹膜炎は、一度罹患すると再発のリスクが高まることが知られています。特に、原因となった性感染症が治療されなかった場合(パートナーの未治療など)や、最初の治療が不十分だった場合、免疫力が低下している場合などに再発しやすくなります。再発を繰り返すほど、卵管の損傷や癒着が進行し、不妊症のリスクが増加します。

放置した場合の主なリスク・後遺症 内容
死亡 稀だが、敗血症や汎発性腹膜炎に進行した場合、生命に関わる重篤な状態となる可能性がある。
敗血症 細菌が血流に乗り全身に広がる。多臓器不全を引き起こし、生命を脅かす状態。
不妊症 卵管の損傷・閉塞、骨盤内の癒着により、卵子・受精卵の輸送が妨げられ、自然妊娠が困難になる。繰り返すほどリスクが高い。
慢性的な骨盤痛 炎症の後遺症として、持続的な下腹部痛が残る。生活の質を低下させる可能性がある。
卵管の癒着・閉塞 不妊症の主な原因。子宮外妊娠のリスクも高める。
膿瘍形成(ダグラス膿瘍など) 骨盤内に膿の塊ができる。切開やドレナージが必要。破裂すると腹膜炎が広がる危険がある。
異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスク増加 卵管の損傷や癒着により、受精卵が卵管内で着床してしまうリスクが高まる。異所性妊娠は破裂すると大量出血を伴う緊急性の高い病態。
再発 治療が不十分だった場合や原因(特に性感染症)が排除されていない場合に起こりやすい。再発を繰り返すほど後遺症のリスクが増加する。

これらのリスクからもわかるように、骨盤腹膜炎は「ただの腹痛」と軽く考えず、疑わしい症状があればすぐに医療機関を受診し、適切な治療をしっかりと受けることが、将来の健康、特に妊娠を希望する女性にとって非常に重要です。

骨盤腹膜炎の予防と対策

骨盤腹膜炎は細菌感染によって引き起こされる病気であり、特に性感染症が大きな原因となります。したがって、予防の第一は性感染症の予防です。また、早期に発見し、適切な治療を受けることが、重症化や後遺症を防ぐ上で最も重要です。丸岡産婦人科クリニックも、骨盤腹膜炎の危険因子として性感染症を挙げています。(出典:丸岡産婦人科クリニック)

性感染症の予防

原因菌として最も多いクラミジアや淋菌は性感染症です。これらの感染を防ぐことが、骨盤腹膜炎のリスクを減らすことに繋がります。

  • コンドームの正しい使用: 性交渉の際に最初から最後までコンドームを正しく使用することは、性感染症の予防に最も効果的な方法の一つです。
  • 不特定多数との性交渉を避ける: パートナーの数が多ければ多いほど、性感染症に感染するリスクは高まります。
  • 性感染症の定期的な検査: 特に新しいパートナーができた際や、複数のパートナーがいる場合、あるいは過去に性感染症にかかったことがある場合は、定期的にクラミジアや淋菌などの性感染症検査を受けることが推奨されます。感染に早期に気づき、治療することで、骨盤内炎症性疾患への進行を防ぐことができます。米国CDCの報告でも、骨盤内炎症性疾患の原因菌としてクラミジアや淋菌が挙げられています。(出典:米国CDC)
  • パートナーの検査・治療: 自身が性感染症と診断された場合は、必ずパートナーも検査・治療を受けるようにしましょう。パートナーが未治療の場合、治っても再びパートナーから感染してしまうリスクが高まります。

早期発見・早期受診の重要性

骨盤腹膜炎は、進行するほど重症化し、後遺症のリスクが高まります。そのため、症状に早く気づき、速やかに医療機関を受診することが何よりも重要です。

  • 体のサインに注意する: 下腹部痛、発熱、おりものの変化、不正出血など、いつもと違う体の異常を感じたら、「様子を見よう」と思わずに、早めに婦人科を受診しましょう。特に性交渉の経験がある方や、最近婦人科処置を受けた方は、リスクがあることを念頭に置きましょう。(出典:丸岡産婦人科クリニックの危険因子の記載より)
  • 軽微な症状でも受診する: 特にクラミジア感染による場合は、症状が軽微であったり、無症状であったりすることがあります。「このくらいの痛みなら大丈夫」「熱はないから心配ない」などと自己判断せず、気になる症状があれば専門医に相談しましょう。
  • 過去の病歴や処置を伝える: 医療機関を受診する際は、過去の性感染症の既往、人工妊娠中絶、IUD装着、分娩などの婦人科処置の有無を正確に伝えましょう。これらの情報は診断の助けになります。(出典:丸岡産婦人科クリニックの危険因子の記載より)

治療後の再発予防

一度骨盤腹膜炎にかかった方は、再発のリスクが高いため、治療が終了した後も注意が必要です。

  • 医師の指示通り治療を完了する: 症状が改善しても、抗生剤は決められた期間最後まで飲み切ることが最も重要です。米国CDCの報告でも抗生剤療法が中心治療とされています。(出典:米国CDC)
  • パートナーも同時に治療する: 性感染症が原因の場合は必須です。
  • 治療後の定期的なチェック: 医師から指示があれば、治療後に再診を受けて、炎症が完全に治まっているか、原因菌が排除されているかなどを確認しましょう。
  • 性感染症予防を続ける: 再び性感染症にかからないよう、コンドームの使用など予防策を継続しましょう。
  • 体の変化に注意する: 治療後に再び下腹部痛や発熱などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

骨盤腹膜炎の予防と対策は、性感染症の予防と早期受診・早期治療にかかっています。自分の体の変化に敏感になり、気になることがあればためらわずに医療機関を受診することが、将来の健康を守ることに繋がります。

骨盤腹膜炎が疑われる場合の受診先

下腹部痛や発熱、おりものの異常など、骨盤腹膜炎が疑われる症状がある場合は、速やかに婦人科を受診してください。丸岡産婦人科クリニックによると、急性期には突然の激しい下腹部痛や高熱が特徴です。(出典:丸岡産婦人科クリニック)このような症状がある場合は、ためらわずに専門医に相談しましょう。

  • 婦人科医の専門性: 婦人科医は女性生殖器とその関連疾患に関する専門知識と経験を持っています。骨盤内炎症性疾患の診断に必要な内診や超音波検査、細菌検査などを適切に行い、正確な診断と治療方針を決定することができます。
  • 緊急性の判断: 強い腹痛で動けない、高熱が出ている、吐き気や嘔吐がひどいなど、症状が重い場合は、緊急性が高い可能性があります。この場合は、夜間や休日であっても救急病院の婦人科や、婦人科対応可能な救急外来を受診することを検討してください。
  • かかりつけ医への相談: 普段からかかりつけの産婦人科があれば、まずはそこに連絡して症状を伝え、受診の指示を仰ぐのが良いでしょう。

婦人科を受診する際は、症状がいつから始まったか、どのような症状か、性交渉の状況、月経周期、既往歴などを具体的に伝えられるように準備しておくとスムーズです。また、性感染症の可能性について聞かれることもありますので、正直に話すことが正確な診断に繋がります。恥ずかしがらずに、体の状態を医師に伝えましょう。

まとめ|早期診断と適切な治療で後遺症を防ぎましょう

骨盤腹膜炎は、女性の骨盤内に細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患であり、多くの場合、子宮内膜炎や卵管炎から進行します。済生会によると、腟から細菌が上行性に広がり、子宮内膜炎、卵管炎、そして最終的に骨盤腹膜炎へと炎症が波及します。(出典:済生会)主な原因はクラミジアや淋菌といった性感染症ですが、性行為の経験がない方でも、婦人科処置などをきっかけに発症することがあります。(出典:丸岡産婦人科クリニック、米国CDC)

下腹部痛、発熱、おりものの異常、不正出血などが主な症状ですが、症状の程度は様々で、軽微な場合や無症状の場合もあります。急性期には激しい下腹部痛や高熱が特徴的な症状として現れることがあります。(出典:丸岡産婦人科クリニック)しかし、症状が軽いからといって放置すると、炎症が進行し、重篤な合併症や不妊症、慢性的な骨盤痛などの後遺症を残すリスクが大幅に高まります。特に不妊症は、骨盤腹膜炎を繰り返すほどそのリスクが高まることがわかっています。

骨盤腹膜炎の診断は、問診、内診、血液検査、超音波検査、細菌検査などを総合的に行って行われます。治療の中心は抗生剤による薬物療法であり、原因菌に対応できる薬剤が使用されます。(出典:米国CDC)症状や炎症の程度によっては入院が必要となることもあります。また、膿瘍が形成された場合には、ドレナージや手術といった処置が必要になることもあります。

骨盤腹膜炎を予防するためには、性感染症の予防(コンドームの使用、定期的な検査など)が非常に重要です。そして何よりも、下腹部痛や発熱、おりものの変化など、いつもと違う体の異常に気づいたら、「これくらいなら大丈夫だろう」と自己判断せずに、できるだけ早く婦人科を受診することが、重症化を防ぎ、将来の後遺症(特に不妊症)のリスクを最小限に抑えるための最も重要な対策です。

骨盤腹膜炎は決して珍しい病気ではなく、誰にでも起こりうる可能性があります。自分の体のサインを見逃さず、適切なタイミングで医療機関を受診し、医師の指示通りに治療を完了することで、健康な体を維持し、安心して未来を考えることができるようになります。少しでも不安を感じたら、迷わず専門医に相談しましょう。


免責事項:
この記事は、骨盤腹膜炎に関する一般的な情報提供を目的として作成されており、病気の診断や治療を推奨するものではありません。個別の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。提供された情報に基づいて読者が下した判断や行動によって発生したいかなる結果に関しても、当方は一切の責任を負いません。

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