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心療内科

うつ病で傷病手当金をもらうには?条件・期間・申請方法を徹底解説!


うつ病は誰にでも起こりうる病気であり、診断された場合は心身を休めるために休職を余儀なくされることがあります。
しかし、休職中の収入の不安は、療養の妨げになることも少なくありません。
そうした経済的な不安を和らげ、安心して治療に専念できるようサポートしてくれるのが「傷病手当金」という制度です。

傷病手当金は、健康保険に加入している方が、業務外の病気やケガで仕事ができなくなった場合に受け取れる給付金です。
特にうつ病のような精神疾患の場合、外見からは分かりにくいため「本当に支給されるのか」「手続きはどうすればいいのか」といった不安を抱える方も少なくありません。

この記事では、うつ病で傷病手当金を受け取るための条件や、申請方法、支給される金額や期間、そして申請する上で知っておくべき注意点まで、詳しく解説します。
傷病手当金制度を正しく理解し、安心して療養生活を送るための一助となれば幸いです。

傷病手当金とは?制度の概要

ひどく疲れて落ち込んでいる女性。 - うつ病 ストックフォトと画像

傷病手当金は、健康保険法に基づく公的な医療保険制度の一つです。
健康保険の被保険者が、病気やケガによって働くことができなくなり、会社を休んだ期間について、被保険者本人とその家族の生活を保障するために支給されます。

この制度の目的は、被保険者が病気やケガで収入を絶たれた際に、一定期間の生活費を保障し、安心して治療に専念できる環境を提供することにあります。
対象となる病気やケガは業務外のものである必要があり、うつ病もこの「業務外の病気」に含まれます。

傷病手当金は、加入している健康保険の種類(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)によって運営元は異なりますが、基本的な支給要件や計算方法、支給期間などは共通しています。
ただし、申請書の様式や提出方法などは、それぞれの健康保険によって異なる場合があるため、申請する際にはご自身の加入する健康保険の情報を確認することが重要です。
被扶養者(ご家族など)は傷病手当金の対象とはなりません。
対象となるのは、あくまで健康保険の被保険者本人です。

うつ病で傷病手当金をもらうための条件

受付の女性 - 市役所 ストックフォトと画像

うつ病と診断され、休職した場合に傷病手当金を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
これらの条件は、病気の種類に関わらず傷病手当金に共通する基本的な要件ですが、うつ病の場合は特に「仕事に就けない状態であること」の証明が重要になります。

主な条件は以下の通りです。

業務外の病気やケガであること(仕事が原因の場合について)

傷病手当金は、業務外の病気やケガが原因で仕事に就けなくなった場合に支給されます。
うつ病の場合、その原因が業務上のものであるか、業務外のものであるかが区別されます。

  • 業務外の場合:
    仕事とは無関係な原因(家庭環境の変化、プライベートでのストレスなど)や、原因が特定できない場合など、業務との因果関係がないと判断されるうつ病は、傷病手当金の対象となります。
  • 仕事が原因の場合(業務上のうつ病):
    長時間労働やハラスメント、過大なノルマなど、業務が原因で発症したと認められるうつ病は、「労災保険」の対象となる可能性があります。
    労災保険の「休業(補償)給付」が支給される場合、傷病手当金は支給されません。
    労災保険からの給付額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、差額が支給されることもありますが、原則として労災が優先されます。
    ご自身のうつ病が業務上のものかどうかが不明な場合は、まずは医師や会社の労務担当者、労働基準監督署などに相談してみましょう。

仕事に就けない状態であること(医師の診断書)

この条件は、うつ病で傷病手当金を受給する上で最も重要な要素の一つです。
単に「休職している」だけではなく、「療養のため仕事に就くことができない状態(労務不能)」であると医師に判断され、その証明を得る必要があります。

傷病手当金の申請書には、主治医が病状や「労務不能と認めた期間」などを記載する欄があります。
うつ病の場合、外見からは病状が分かりにくいため、医師に自身の具体的な症状(例:強い倦怠感、集中力の低下、意欲の低下、睡眠障害、食欲不振、強い不安感、希死念慮など)が、どのように仕事に支障をきたしているのか(例:パソコン作業ができない、会議に参加できない、通勤が困難など)を正確に伝え、医師に診断書や申請書の意見書欄に適切に記載してもらうことが非常に重要です。

医師が「労務可能」と判断した場合、傷病手当金は支給されません。
医師とのコミュニケーションをしっかりと取り、ご自身の状態を正確に伝えることが、適切な証明を得るために不可欠です。

連続する3日を含む4日以上仕事に就けなかったこと(待期期間)

傷病手当金が支給されるためには、「待期期間」を満たす必要があります。
これは、病気やケガで仕事に就けなくなった日から連続して3日間休んだ後、さらに4日目以降も仕事に就けなかった場合に、4日目から支給が開始されるという仕組みです。

協会けんぽの説明によると、「傷病手当金は、被保険者が病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。」とされています(参考https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31710/1950-271/)。

  • 待期期間とは?
    仕事に就けなくなった日から数えて、連続した3日間です。
    この3日間は、有給休暇、土日祝日などの公休日、欠勤のいずれであっても構いません。
    重要なのは「連続していること」です。
    例えば、月曜日に仕事ができなくなり、月・火・水と連続して休めば、この3日間が待期期間となります。
  • 待期期間のカウント:
    仕事に就けなくなった日を1日目としてカウントします。

待期期間の3日間については、傷病手当金は支給されません。
あくまで、この待期期間を満たした後の休業期間が支給対象となります。

休業期間中に給与の支払いがないこと

傷病手当金は、病気やケガで仕事に就けないことによる収入の減少を補填する制度です。
したがって、休業期間中に会社から給与が支払われている場合は、傷病手当金は支給されません。

ただし、支払われた給与の額が、これから説明する傷病手当金の支給額よりも少ない場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。
これは、会社が独自の病気休暇制度などで給与の一部を保障しているような場合に該当します。

給与の支払いがあるかどうか、またその額が傷病手当金の額と比較してどうなるかは、傷病手当金申請書に事業主が証明する欄があり、そこで確認されます。

健康保険の被保険者であること

傷病手当金を受給するためには、申請時点で健康保険の被保険者である必要があります。
会社の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に加入している正社員や契約社員などがこれに該当します。

退職後に傷病手当金を受給することも可能ですが、そのためには「任意継続被保険者」となるか、退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受給している(または受給できる状態にある)といった条件を満たす必要があります(これを「資格喪失後の継続給付」といいます)。
うつ病で休職中に退職を検討している場合は、傷病手当金の受給資格に影響があるため、事前に会社の担当者や健康保険組合に確認するようにしましょう。

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うつ病の傷病手当金はいつからいつまで?支給期間

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傷病手当金は、いつから支給が始まり、最長でいつまで支給されるのでしょうか。
うつ病による休職期間中の経済的な計画を立てる上で、支給期間の理解は非常に重要です。

支給開始日

傷病手当金の支給は、「待期期間を満了した日の翌日」から開始されます。

前述の待期期間の例で考えると、月曜日から連続3日間(月・火・水)休んで待期期間が完成した場合、支給開始日は水曜日の翌日、つまり木曜日からとなります。

申請は、実際に休んだ期間について行います。
例えば、1ヶ月単位で申請する場合は、その月の待期期間満了日の翌日から月末までの休業期間が申請対象となります。

支給される最長期間(通算化について)

傷病手当金が支給される期間には上限があります。
同一の病気やケガ、またはこれらに関連する病気やケガについて、支給開始日から「通算して1年6ヶ月」が最長支給期間です。

厚生労働省によると、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)」により健康保険法等が改正され、令和4年1月1日から、傷病手当金の支給期間が通算化されました(参考https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html)。

  • 通算化とは?
    支給期間は支給開始日から「実際に傷病手当金が支給された期間」を合計して1年6ヶ月が上限となりました。
    例えば、うつ病で休職し、傷病手当金を6ヶ月間受給した後に一時的に職場復帰し、再度うつ病が悪化して休職した場合、以前の病気と関連があると判断されれば、休職期間中に傷病手当金を受給していなかった期間は1年6ヶ月の期間計算に含まれません。
    再休職後の傷病手当金は、前回の支給期間(6ヶ月)に加えて、通算で1年6ヶ月になるまで(つまり追加で1年間)支給される可能性があります。

この通算化により、 休業(休んで復帰してまた休む、といった断続的な休業)でも、より長く傷病手当金の恩恵を受けられるようになりました。
うつ病の治療過程では、状態が変動し、一時的に回復して仕事に戻れても、再休職が必要になるケースも少なくありません。
このような場合に、通算化された傷病手当金は大きな支えとなります。

ただし、「同一の病気やケガ、またはこれらに関連する病気やケガ」であると判断される必要があります。
うつ病の場合、休職理由となったうつ病が再発した、あるいはうつ病が原因で他の精神疾患を併発した、といったケースは関連があると判断されることが多いですが、最終的な判断は健康保険組合等が行います。

また、1年6ヶ月の期間は、あくまで傷病手当金が「支給される可能性のある最長期間」です。
その期間内に病気が回復し仕事に復帰できた場合は、その時点で支給は終了します。

うつ病の傷病手当金はいくらもらえる?計算方法

カウンターでタブレット端末を使って説明するビジネスマン。 - 市役所 ストックフォトと画像

傷病手当金としていくらもらえるのかは、休職中の生活設計を立てる上で最も気になる点の一つでしょう。
傷病手当金の支給額は、被保険者の過去の給与に基づいて計算されます。

支給額の計算式

傷病手当金の1日あたりの支給額は、原則として以下の計算式で算出されます。

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3

  • 標準報酬月額とは?
    健康保険では、毎月の給与を一定の範囲ごとに区分した「標準報酬月額」という金額を用いて、保険料や傷病手当金などの各種給付額を計算します。
    標準報酬月額は、実際の給与額(基本給に残業手当、通勤手当など含めた総支給額)を基に決められます。
  • 計算式の意味:
    「支給開始日以前の継続した12ヶ月間」の平均月収(標準報酬月額の平均)を基に、1日あたりの金額を算出し、その金額の約3分の2(正確には2/3)が傷病手当金として支給されます。
    これは、おおよそ休業前の給与の3分の2程度を保障するという考え方に基づいています。
  • 被保険者期間が12ヶ月に満たない場合:
    支給開始日以前の被保険者期間が12ヶ月に満たない場合は、以下のいずれか低い額を使用して計算します。
    1. 支給開始日以前の継続した被保険者期間における標準報酬月額の平均
    2. 加入している健康保険の「平均標準報酬月額」(協会けんぽの場合は全被保険者の平均、組合健保の場合はその組合の全被保険者の平均)

具体的な計算例

ここでは、分かりやすいように標準報酬月額が一定であると仮定した簡単な例を示します。

【例】
標準報酬月額が一定であると仮定
支給開始日以前の継続した12ヶ月間、標準報酬月額が30万円だった場合

計算式に当てはめると:
(300,000円 × 12ヶ月) ÷ 12ヶ月 ÷ 30日 × 2/3
= 300,000円 ÷ 30日 × 2/3
= 10,000円 × 2/3
= 約 6,667円

この場合、1日あたりの傷病手当金は約6,667円となります。
1ヶ月(30日)休んだとすると、約20万円(6,667円 × 30日)が支給されることになります。

実際の標準報酬月額は、給与の変動などによって毎月異なります。
正確な金額を知るためには、ご自身の過去の標準報酬月額を確認する必要があります。
これは、毎年会社から渡される「健康保険料額決定通知書」や、健康保険組合等が発行する書類などで確認できます。

また、傷病手当金には税金(所得税)はかかりません。
ただし、住民税は前年の所得に対して課税されるため、休職中であっても納付義務が発生しますので注意が必要です。

傷病手当金の具体的な計算や、自身の標準報酬月額について不明な点があれば、会社の経理担当者や加入している健康保険組合・協会けんぽに問い合わせるのが確実です。

うつ病の傷病手当金の申請方法と流れ

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傷病手当金を受給するためには、所定の申請手続きを行う必要があります。
うつ病の場合、病状が不安定な中で手続きを進めるのは負担が大きいかもしれませんが、手順を理解しておけばスムーズに進めることができます。
一般的な申請方法と流れは以下の通りです。

申請書の準備(どこでもらうか)

傷病手当金の申請書は、ご自身が加入している健康保険の種類によって異なります。

  • 協会けんぽの場合:
    協会けんぽのウェブサイトからダウンロードできます。
    全国健康保険協会(協会けんぽ)の各支部に問い合わせることも可能です。
  • 健康保険組合の場合:
    ご自身が加入している健康保険組合の事務所やウェブサイトから入手します。
    多くの場合、会社の健康保険担当部署を通じて配布されることもあります。

通常、申請書はA4サイズの用紙で、被保険者本人が記載する欄、医師が記載する欄、事業主(会社)が記載する欄に分かれています。

医師の意見書の記載(抑うつ状態の書き方含む)

申請書の中で最も重要なのが、医師の意見書(証明)欄です。
ここで主治医に「労務不能と認めた期間」や「病状」などを記載してもらいます。

  • 医師に依頼するタイミング:
    休職期間中、定期的に診察を受ける際に、申請書を持参して医師に記載をお願いしましょう。
    初回申請時だけでなく、継続して受給する場合も、一定期間ごとに医師の証明が必要になります。
  • 記載してもらう内容:
    医師は、診察に基づいて以下の内容を記載します。
    病名(うつ病、抑うつ状態など)
    発病日、初診日
    労務不能と認めた期間(いつからいつまで仕事に就けなかったか)
    病状の程度や経過
    治療内容
    今後の見通しなど
  • うつ病(抑うつ状態)の書き方に関するポイント:
    うつ病の場合、医師が「労務不能」と判断した根拠となる具体的な症状を記載してもらうことが重要です。
    例えば、
    「強い倦怠感のため、終日自宅で臥床している状態」
    「思考力、集中力が著しく低下しており、業務遂行が不可能」
    「不眠、食欲不振が継続し、体力が著しく低下している」
    「強い不安感や希死念慮があり、一人で過ごすことが困難」
    など、うつ病の症状がどのように仕事(または日常生活)に具体的な支障をきたしているかを、医師に正確に伝えることが、説得力のある意見書につながります。
    医師に病状を詳しく伝え、必要に応じて「傷病手当金の申請に必要なので、労務不能である根拠となる具体的な症状を記載していただけますか」と相談してみましょう。

事業主の証明の記載

傷病手当金の申請書には、事業主(会社)が証明する欄もあります。
ここでは、主に以下の内容が記載されます。

  • 被保険者の休業期間
  • その期間中に会社から支払われた給与の有無、およびその額
  • 雇用形態、所属部署など

会社には、休業期間や給与支払い状況に関する正確な情報を記載してもらう必要があります。
会社の担当部署(人事部や総務部など)に申請書を提出し、記載をお願いしましょう。

申請書類の提出先

申請書類がすべて揃ったら、提出します。
提出先は、ご自身が加入している健康保険の種類によって異なります。

  • 協会けんぽの場合:
    会社の所在地を管轄する協会けんぽの支部に提出します。
    郵送または窓口での提出が可能です。
  • 健康保険組合の場合:
    加入している健康保険組合の事務所に提出します。
    会社の健康保険担当部署がまとめて提出する場合もありますので、会社の指示に従ってください。

通常、申請は休業した期間ごとに、1ヶ月分などをまとめて行います。
ただし、健康保険組合によっては、より短い期間での申請が可能な場合もありますので、確認しましょう。

傷病手当金の審査期間と支給までの日数

申請書を提出した後、健康保険組合等で内容の審査が行われます。
審査にかかる期間は、提出書類の不備の有無や、健康保険組合等の事務処理状況によって異なります。

  • 審査期間の目安:
    一般的には、申請書を提出してから支給決定まで約2週間~1ヶ月程度かかることが多いようです。
    ただし、初めての申請であったり、内容に確認が必要な点があったりする場合は、さらに時間がかかることもあります。
  • 支給までの日数:
    審査が完了し、支給が決定されると、申請書に記載した金融機関の口座に傷病手当金が振り込まれます。
    支給決定から振り込みまでには、通常数日から1週間程度かかります。

初回申請時や、医師の証明内容に不明な点がある場合などは、健康保険組合等から問い合わせがあることもあります。
問い合わせがあった場合は、迅速に対応することで、審査をスムーズに進めることができます。

申請から支給までに一定の時間がかかることを考慮し、休業に入ることが決まったら、早めに申請書の準備を始めることをお勧めします。

うつ病で傷病手当金がもらえないケースとその理由

患者の脳検査の結果について話す医師 - クリニック ストックフォトと画像

傷病手当金は、うつ病で休職した場合の心強い味方ですが、残念ながら条件を満たさず、支給されないケースも存在します。
どのような場合に支給されないのか、その理由を理解しておくことは、不要なトラブルを避けるためにも重要です。

条件を満たしていない場合

前述した傷病手当金の支給要件を満たしていない場合は、当然ながら支給されません。
具体的な例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 待期期間が満了していない:
    連続した3日間の休業(待期期間)を満たしていない場合、その後の休業期間についても傷病手当金は支給されません。
  • 仕事に就けない状態(労務不能)ではないと判断された:
    医師が「労務可能」と判断した場合や、提出された医師の意見書の内容から、健康保険組合等が「労務不能な状態ではない」と判断した場合、傷病手当金は支給されません。
  • 休業期間中に給与が満額支払われている:
    会社から支払われた給与の額が、傷病手当金の計算額以上である場合、傷病手当金は支給されません。
  • 業務外の病気やケガではない:
    うつ病の原因が業務上のものと判断され、労災保険の対象となる場合、傷病手当金は原則支給されません(労災保険からの給付が優先されるため)。
  • 健康保険の被保険者ではない:
    健康保険に加入していない国民健康保険の方や、会社の健康保険の被扶養者は傷病手当金の対象外です。
    また、退職後の継続給付の要件を満たしていない場合も支給されません。

労災保険との関連(仕事が原因の場合)

うつ病の原因が業務上のものであると判断された場合は、労災保険の対象となります。
労災保険から「休業(補償)給付」が支給されることになり、この場合、健康保険からの傷病手当金は支給されません。

労災保険の休業(補償)給付は、原則として休業4日目から支給され、その額は給与の約8割(給付金と特別支給金の合計)です。
これは傷病手当金(給与の約3分の2)よりも手厚い給付となる場合が多いです。

もし、ご自身のうつ病が仕事によるストレスなどが原因かもしれないと感じている場合は、安易に傷病手当金として申請するのではなく、まずは会社や労働基準監督署に相談し、労災保険の対象となる可能性がないか確認することが重要です。
誤って傷病手当金を受給してしまった後に労災が認められた場合、傷病手当金を返還する必要が出てくることがあります。

申請内容に不備や虚偽があった場合(傷病手当 嘘について)

申請書類の記載内容に不備があった場合は、健康保険組合等から確認の連絡が入ったり、書類の再提出を求められたりすることで、審査が遅れる原因となります。

また、事実と異なる内容を記載する「虚偽の申請」を行った場合は、不正受給となります。
例えば、実際には仕事ができる状態であるにも関わらず「労務不能」として申請したり、他の制度から給付を受けていることを隠して申請したりする行為は、不正受給にあたります。

不正受給が発覚した場合、支給された傷病手当金の全額返還を求められるだけでなく、不正に受給した額の2倍の金額(合計3倍)を追徴金として支払わなければならない場合があります。
また、悪質なケースでは詐欺罪として立件される可能性もあります。

傷病手当金は公的な制度であり、正直に申請することが大原則です。
分からない点や不安な点があれば、必ず健康保険組合や会社の担当者に確認するようにしましょう。

傷病手当金以外にうつ病で利用できる制度

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うつ病で休職した場合、傷病手当金以外にも利用できる公的な支援制度があります。
これらの制度を組み合わせて利用することで、経済的な負担をさらに軽減し、安心して治療に専念することができます。

自立支援医療制度

自立支援医療制度は、心身の障害や特定の疾患を持つ方が、医療費の自己負担額を軽減するための制度です。
うつ病を含む精神疾患の治療についてもこの制度の対象となり、通院による医療費(診察、薬代、デイケアなど)の自己負担額が原則1割に軽減されます。

大阪市の情報では、「自立支援医療(精神通院医療)制度は一定以上の症状を有する精神疾患の治療のため通院医療が必要な方に対して、医療費の支給認定を行い、医療費の自己負担額を軽減するための公費負担医療制度です。」と説明されています(参考https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000005863.html)。

  • 対象となる治療:
    精神疾患に関する通院医療費。
    入院医療費は対象外です。
  • 申請方法:
    居住地の市区町村の担当窓口(障害福祉課など)に申請します。
    申請には、医師の診断書や健康保険証などが必要です。
  • 有効期間:
    原則1年間で、継続を希望する場合は更新手続きが必要です。

自立支援医療制度は、傷病手当金とは異なり、所得に応じて自己負担額の上限額が設定されています。
これにより、医療費が高額になった場合でも家計への影響を抑えることができます。
うつ病で通院治療を受けている場合は、ぜひ利用を検討しましょう。

障害年金

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に支障が出ている方に対し、国から支給される年金です。
うつ病も、その状態が一定の障害等級に該当すると認められれば、障害年金の対象となる可能性があります。

  • 対象者:
    国民年金または厚生年金の被保険者(または被保険者であった方)で、一定の保険料納付要件を満たし、病気やケガによって障害等級(1級~3級)に該当する状態にある方。
  • 障害等級の目安(精神疾患の場合):
    精神疾患による障害の程度は、日常生活能力の判定などによって総合的に評価されます。
障害等級 状態の目安
1級 身の回りのことも含めて、ほとんどのことが一人でできない状態。
2級 日常生活に著しい制限があり、働くことが困難な状態。
3級 働くことに著しい制限がある状態。(厚生年金加入者のみ対象)

うつ病で休職中や、復職しても働く時間に制限がある、短時間勤務しかできないといった場合でも、障害年金を受給できる可能性があります。

  • 申請方法:
    お住まいの市区町村の年金窓口または、年金事務所に申請します。
    医師の診断書や病歴・就労状況等申立書などの書類が必要です。

障害年金は、傷病手当金の支給期間(最長1年6ヶ月)を超えても、障害状態が継続する限り受給できる可能性がある制度です。
ただし、申請手続きが複雑なため、社会保険労務士などの専門家に相談することも検討すると良いでしょう。

その他の補助金等(国からの補助金について)

上記以外にも、うつ病による休職やそれに伴う経済的な困難に対して、利用できる可能性のある制度がいくつかあります。
国からの「うつ病に関する直接的な補助金」という制度は一般的ではありませんが、以下の社会保障制度や福祉制度が、結果として経済的な支援となります。

  • 高額療養費制度:
    医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、ひと月(月の初めから終わりまで)で自己負担限度額を超えた場合に、その超えた額が払い戻される制度です。
    厚生労働省の資料(PDF)には、「高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口において医療費の自己負担を支払っていただいた後、月…」として、制度の目的が記されています(参考https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001492935.pdf)。
    入院などで医療費が高額になった場合に役立ちます。
  • 生活福祉資金貸付制度:
    低所得者世帯、高齢者世帯、障害者世帯などを対象に、生活を立て直すために必要な資金を借り付けできる制度です。
    うつ病による休職で一時的に生活が困窮した場合に利用できる可能性があります。
    市区町村の社会福祉協議会が窓口となります。
  • 失業給付(基本手当):
    会社を退職し、再就職の意思と能力があるにもかかわらず仕事に就けない場合に支給される雇用保険の給付金です。
    うつ病が回復し、求職活動ができる状態になった場合に受給できます。
    病気やケガで30日以上仕事に就けなかった期間がある場合は、通常1年の受給期間を最長4年まで延長できる制度もあります。

これらの制度は、ご自身の状況や自治体によって利用条件などが異なります。
利用を検討する際は、各制度の担当窓口(年金事務所、市区町村役場、ハローワークなど)に相談し、詳細な情報を確認することが重要です。

これらの制度を賢く利用することで、うつ病の治療に専念し、社会復帰に向けたステップを踏み出しやすくなります。

うつ病と傷病手当金について不安なときは専門家へ相談

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うつ病による休職は、心身の回復に専念するために必要な期間ですが、収入が途絶えることによる経済的な不安はつきものです。
傷病手当金は、このような状況にある方の生活を支えるための重要な公的制度です。

傷病手当金を受給するためには、健康保険の被保険者であること、業務外の病気であること、医師に労務不能と証明されること、連続する3日間の待期期間を満たすこと、休業期間中に給与が支払われない(または傷病手当金より少ない)こと、といった条件を満たす必要があります。
特にうつ病の場合は、医師に自身の症状を正確に伝え、「労務不能」であることの証明を適切に記載してもらうことがスムーズな申請のために重要です。

支給される金額は、過去1年間の平均給与の約3分の2で、支給期間は同一の病気について通算して1年6ヶ月が上限です。
法改正により通算化されたことで、断続的な休職でも制度を利用しやすくなりました。

申請は、健康保険組合等から申請書を入手し、被保険者本人、医師、事業主がそれぞれ必要事項を記載した後、健康保険組合等に提出するという流れで進めます。
申請から支給までには一定の時間がかかるため、早めに準備を始めることをお勧めします。

もし、申請手続きについて不安がある場合や、ご自身のケースで支給条件を満たすかどうかが不明な場合は、一人で抱え込まずに専門家や関係機関に相談しましょう。

  • 会社の健康保険担当部署:
    申請書の入手や、事業主証明の依頼など、手続きの最初の段階で相談できます。
  • 加入している健康保険組合・協会けんぽ:
    制度の詳細や、申請書の記載内容に関する問い合わせに答えてくれます。
  • 社会保険労務士:
    傷病手当金だけでなく、障害年金など他の社会保障制度も含めた専門的なアドバイスや、申請代行を依頼することも可能です(有料)。
  • 地域の相談窓口:
    お住まいの地域の精神保健福祉センターや、障害者就業・生活支援センターなども、利用できる制度や相談窓口の情報を提供してくれる場合があります。

傷病手当金は、うつ病の治療と社会復帰を支える大切な制度です。
制度を正しく理解し、必要に応じて活用することで、経済的な心配を軽減し、安心して療養に専念できる環境を整えましょう。

免責事項
本記事で提供する情報は、一般的な傷病手当金制度に関する解説であり、個別のケースに関する判断や申請手続きの詳細については、必ずご自身が加入している健康保険組合または協会けんぽ、および会社の担当部署にご確認ください。
法改正などにより制度内容が変更される可能性もあります。
本記事の内容に基づいて発生したいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。

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女性ライフクリニック 銀座

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